柳澤

よく質問されるのが
家にゴキブリを出さないためには
どうしたらいいですかということです。

──

知りたいです。

柳澤

ぼくは害虫の専門家ではないので
駆除のアドバイスは
基本的に行わないようにしているんですね。

でも聞かれることが多いので
ちょっとしたアドバイスをするときは
まず、どの種類かを特定する質問をします。
それによって対応が変わってくるんです。

地域によって家に出てくるゴキブリって違うんですよ。
関東とか大阪とかはおそらくクロゴキブリが大多数です。
東北とか北のほうはヤマトゴキブリの場合もあります。
南のほうの沖縄とか奄美諸島はワモンゴキブリという
ちょっと大きい種類が出てくるんです。

あとはどこに住んでいるか。
たとえば１階が飲食店、
２階に住んでいる場合、年中暖かい環境なので、
チャバネゴキブリが出るかもしれない。

家に出てきているゴキブリがどの種類かを識別できると
駆除するときの参考になります。
たいていの人がゴキブリの種類までは
わからないですって答えますけどね（笑）。

──

家に出たゴキブリは、じっくり見ないですからね（笑）。

柳澤

この辺（ほぼ日の學校のスタジオがある東京の神田）だと
クロゴキブリが一番多いと思います。

チャバネゴキブリは飲食店街にたくさんいます。
ぼくは居酒屋に入ると、
「ここはいるな」というのがわかるときがあります。

──

え！ ゴキブリセンサーがあるんですか。

柳澤

ゴキブリって独特の匂いがあって、かすかに匂うんですよ。
トイレに行くときなど
裏を通る店があるじゃないですか。
ああいうところで一瞬感じるときあって。
トタンの後ろを剥がしてみたいなと思うことがあります。
怒られるんでやらないですけど（笑）。

駆除会社の人は多分もっと詳しいと思います。
クロゴキブリは冬にはほとんど見ないです。
彼らは、冬は卵とか幼虫の姿でいて、
冬越しは外でしているんですよ。

チャバネゴキリは暖かい場所にずっといて
年中繁殖しているんですね。
繁殖のスピードが非常に速いので
年中対応しないといけない。

あとは出てくる頻度も重要です。
年に1回見る程度なら
野外からたまたま入ってきているのかもしれない。
そういった場合は駆除の薬剤を撒いても、
あまり意味がない。
場合によって違うんですよね。

──

ゴキブリのことをあまり考えたくない人は
駆除会社にお任せしたほうがいいかもしれません。

あとゴキブリといえば、退治しようと思っても
サッといなくなってしまう逃げ足の速さ！
身体能力が高いんでしょうか。

柳澤

種類にもよりますが
一般的なクロゴキブリは高いです。

何でも食べられるところもすごいところですし、
圧力に強い特徴もあります。
叩いても死なないことがあると思うんですけど、
彼らって隙間に入っていくために
体が平べったくできていて
なおかつ縦方向に柔軟性があるんです。
だから、数mmの隙間でも入っていくことができる。

上からの圧力に強いので、叩いても死なない。
強く叩かないと死なない。
身体能力的なすごさはあるかなと。

──

忍者みたいですね。

柳澤

叩くならひと思いにやったほうがいいです。
新聞紙だと２、３枚丸めても柔らかいので、
もっと強く巻いて硬くする。
スリッパの裏とか
硬めのもののほうがいいですね。

──

汚いといったイメージもあるんですけど、
実際はどうですか？

柳澤

菌とかは特に適切に処理すれば問題ないです。
彼らは特殊な菌を持っているわけではなくて、
彼らがいる暗くてジメジメした場所に
さまざまな菌がいるので、体に菌がついてしまうんですね。
だからゴキブリがお皿の上とかに登られちゃうと
衛生的によくないわけです。

──

そうなんですか‥‥。
特殊な菌を持っているようなイメージがありました。

柳澤

ジメジメした場所が好きなので、
そういったところは遭遇しやすい場所です。
排水溝とか。
あとトイレの管も上がってこられちゃうらしいです。
そんなに頻度高いわけではないと思うんですけど。

──

え、怖い！ 水の中も生きられるんですか？

柳澤

ある程度の時間は大丈夫です。
水にずっと浸かっていたら死んじゃいますけど。

あと叩き潰すときには、
ぼくらの振り上げる際の起こる空気の動きを
体で感知できるんですね。

お尻の近くにある尾肢（びし）というところに
その毛が動くと空気の揺れがわかる。

──

そんなことできるんですか。 超能力みたいですね。

柳澤

日本のクロゴキブリを今度見つけたら、
ぜひ捕まえていただいてお尻のあたりを見てください。
お尻を見ると角みたいな２つあって、
その裏側に毛が生えていて、
そこで空気の流れを感じできるらしいです。
叩き潰そうとして手を振り上げた動きや
人間が慌てている動きを
感知して「何かが動いている！まずい」ということで
逃げるんです。

だからゴキブリは慎重に落ち着いて対処するのが
成功率は高いと思います。

──

人間がゴキブリに遭遇して慌てているのも
バレちゃっているんですね。

柳澤

そうです。叩き潰そうとすると手を振り上げますよね。
振り上げるスピードがある程度速くないと
潰れないですよね。
でも手を振り上げた隙に
逃げられちゃうことがあるんです。

ぼくがよくやるのは
こういうコップを逆さまにして、
ゴキブリがいたらゆっくりポンとかぶせてあげる。
そうすると彼らは意外に気づかないので、
捕まえることができます。

コップでゴキブリを捕まえる様子を再現する柳澤さん。

──

捕まえた後が問題です。

柳澤

その後は、どうにかしていただいて（笑）。
紙などを下から入れて、外に逃がすとか。

この方法でぼくは９割、捕まえられます。
使わないコップがいいですけど。

──

あとは食べ物を食べなくても長く生きていける
と聞いたのですが本当ですか？

柳澤

エサがなくても長く生きることができる
ゴキブリもいるけど、全部が強いわけではないです。
ただ１か月くらいエサあげなくても
平気で生きてるゴキブリはいます。
人間から見るとすごいなって思いますよね。