昨年、一昨年とたいへん好評いただいたので、
ことしもやります、年末年始の恒例企画、
「私のほぼ日プレイリスト」。
ほぼ日刊イトイ新聞の膨大なアーカイブの中から、
「音楽のプレイリスト」をつくるみたいに、
おすすめコンテンツを選んでしまうこの企画、
今回の選者は、ほぼ日刊イトイ新聞の読みものを
編集している、10人の書き手の乗組員です。
ということで、3年目のテーマは「自薦」!!
24年のほぼ日ヒストリーの中から、自ら担当した、
とっておきのコンテンツをたっぷりご紹介します。
12/26(月)から1/5(木)まで11日間の毎日更新。
この年末年始に、どうぞおたのしみください。

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稲崎吾郎のプレイリスト 2022-12-27-TUE

「おもしろいけど、つらかった!」
おもつらかった担当コンテンツ5選

こんにちは。
読みものチームの稲崎です。

「ほぼ日刊イトイ新聞」の
読みものコンテンツを担当しています。
対談をまとめたり、文章を書いたり直したり、
じぶんでインタビューしたものを
じぶんで原稿にしたりしています。

よく、ほぼ日の仕事は
「おもつらい」といわれることがあります。

「おもしろい+つらい」で
「おもつらい」というわけですが、
それはほぼ日だけの話ではなく、
きっとどんな仕事にも
その両面が潜んでいるのだと思います。

これまで担当したものを振り返ると、
「おもしろさ」と「つらさ」はいつもセットでした。
たとえば、取材がとても上手くいったとします。
しかし、そういうおもしろい取材に限って、
そのおもしろさを文章で伝えるのがむつかしい! 
おぉーと感動したり、ゲラゲラ大笑いしたり、
現場ではたのしい時間を過ごすのですが、
あとで冷静になってみると、
「で、どうやって編集するの‥‥」と、
ひとり青ざめることはよくあります。

ただ、これはネガティブなことではなく、
むしろ担当としてはラッキーだと思っています。

なぜなら取材がおもしろくないと、
あとでどれだけ編集をがんばっても、
そこそこのおもしろさにしかならないのです。
だけど、おもしろい取材ができていれば、
どんなにつらくても、どんなに大変でも、
手間をかけて丁寧に編集すれば、
かならずおもしろいコンテンツになってくれます。

もつれにもつれた会話の糸を分解し、
ときに順序を入れ替え、ときに補足を加え、
あせらず、根気よく、全体を見わたしながら、
テトリスブロックを並べるように、
あるべき場所にきちんと言葉を収められたとき、
それは魅力あるコンテンツとして輝いてくれます。

経験を積めば積むほど、
あとに待ちかまえる「つらさ」が予測できます。
でも、その「つらさ」を恐れて
取材が小さくなってしまっては、
おもしろいコンテンツはつくれません。
「おもしろい」が手に入るならば、
喜んで「つらい」の海に飛び込んでいきたい。
そう思えるようになったのも、
いろんな「おもつらい」コンテンツを
担当できたおかげだと思っています。

前置きが長くなりました。
これまでほぼ日で担当したものから、
思い出の「おもつらかった」コンテンツを
5つご紹介いたします。

 

ノーベル賞を受賞された小林誠さんと、
ほぼ日サイエンスフェロー早野龍五さんの対談です。

第1回の早い段階で
「CP対称性の破れの起源の提唱」
という呪文のような言葉が出てきます。
最後まで読んでもらえると、
この呪文の意味がたぶんわかります。
ぼくはこのコンテンツをきっかけに
宇宙のイメージがかなり広がりました。

本文に「わからない人代表」がふたり出てきますが、
ぼくは乗組員Bを担当しています。
もうひとりは‥‥ご想像におまかせします。

 

オタク研究者シリーズからもうひとつ。
ほぼ日で担当した歴代コンテンツの中でも、
おそらくトップクラスの難易度だったかもしれません。
取材後にあの早野さんですら
「わからなかった」というくらいですから、
一般人のぼくに理解できるはずがありません。

「わかる」おもしろさではなく、
「わからない」おもしろさをどう伝えるか。
編集はとても大変でしたが、
コンテンツはとても好評だったので大満足です。

 

「嘘をつくこと」「人をだますこと」について、
クロースアップ・マジシャンの
前田知洋さんにインタビューしたものです。

たくさん質問を事前に考えていたのですが、
冒頭の前田さんの「嘘の3原則」がおもしろすぎて、
取材プランがすべてふっとびました。
「目の前のおもしろい話をもっと聞かなきゃ!」
そんなきもちが先行した取材だったように思います。

編集のことは考えずに目の前の会話をたのしむ。
そんな基本を教えてくれたコンテンツのひとつです。
前田さん、やさしくて素敵な方だったなぁ。

 

ふだんの取材時間は、
だいたい1時間半~2時間ほどなのですが、
このときは3時間半をゆうに超えました。
しかも、そんなにおしゃべりしたというのに、
本題に入る前にまさかの時間切れ! 
ほんとうに訊きたかった「椿井文書」の話は、
15分もしていなかったかも‥‥。

最初のテーマからは大きく外れましたが、
馬部さんのお話はとにかくおもしろかったです。
取材後は完全に青ざめていましたが、
いまではお気に入りのコンテンツのひとつです。

 

2022年9月に公開したコンテンツです。
一筋縄ではいかない面々たちによる
刺激的でスリリングな座談会。
このメンバーでおもしろくならないわけがない!

真剣にアイデアを出し合い、悩み、笑い、
意見がぶつかることにもためらいがありません。
テキストだと落ちついた感じですが、
現場にはピリッとした緊張感がただよっていました。
このときは取材の早い段階で、
「あ、これは『おもつらい』やつだ‥‥」と
確信していた気がします。
いまトーハクで開催中の
150年後の国宝展』の予習として読むと、
さらにたのしめると思います。

 

5つとも読んでくださいとはさすがにいえませんが、
もし気になったものがあれば、
ためしに第1回だけでものぞいてみてください。

以上、ほぼ日の稲崎でした。
2023年も、どうぞよろしくお願いします!

(つづきます)

2022-12-27-TUE

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