ほぼ日の20年以上蓄積された読み物のなかから、
いろんな人にいろんな切り口で
「音楽のプレイリスト」をつくるみたいに、
おすすめのコンテンツを選んでしまう企画です。
去年の年末にはじめてやってみたところ、
たいへん好評だったので、今年もいろんな人に
お願いしてつくってもらいましたよー。
12人の方がつくった「ほぼ日のプレイリスト」、
年末年始にのんびりおたのしみくださいー。

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10.播口光さんのプレイリスト

愛すべき怪コンテンツたち

 >播口光さんプロフィール

いままでは送り手として無我夢中でやってきたので、
なかなか客観的に見ることができなかったけれど、
こういう機会をいただいてゆっくり振り返ってみると、
いやもう、実にさまざまなタイプのコンテンツが
「ほぼ日」にはありますね。
そんななかでも、ぼくがとくに惹かれるのは、
なんだかよくわからない、でもそれがゆえに、
なんともいえない「おかしみ」があるもの。
今回はそんな“怪コンテンツ”をあつめてみました。
そういう自分の嗜好が反映されているという意味で
ぼく自身が関わっていたものもわりと多く、
手前みそなところはすみません。
長くいた人間らしく、初期のコンテンツもふくめて
クロニクル(年代記)的に紹介していきましょうか。


ヨダ先生はヨーダだったのか?
ジョージ・ルーカスに
直接きいてみたぞ物語!

できれば、このコンテンツをご覧になるときは、
さいしょに出てくる「完結編」をとばして、
その下の前編から読んでいただきたい。
内容をちょっと補足しておくと、
「『スター・ウォーズ』に出てくるヨーダは、
 日本の脚本家、依田義賢さんをモデルにしている」
という読者からの情報をもとに、
ジョージ・ルーカスが出席する記者会見に糸井さんが潜入、
本人にそのことを質問するという実録レポートです。
もとの情報、ルーカス本人に確認しようという発想、
さらにそれをコンテンツにしてしまえという英断。
すべてが“怪アイデア”といえるでしょう。
そして、ぼくが大好きなのは、さいごのおわりかた。
このころぼくはまだ、ただの読者でしたが、
完結編が掲載されたとき、思わず吹き出してしまいました。
「ほぼ日」の初期はこういう原稿を、
糸井さんご本人がけっこう書いていたなぁ。


ヒロ杉山 100Mコミック

このコンテンツの趣旨は、
「マンガを100mの長さぶん描く」なんですが、
それだけでもう、なにか尋常じゃないものを感じます。
「メートル数は、原画で採寸していますので、
 表示される画像の大きさとは異なります。」
なんて律儀に但し書きされてるのもヘンだし、
連載が途切れていたのを、わざわざ「帰ってきた」と言って
再開しているあたりもコワい。
もしも単行本化されたら、「5→10mの巻」とか、
そんなことになるのでしょうか。
あるいは、メートル単位で量り売りしたりして。
ぼくが「ほぼ日」に入ったころ(2000年春)には
すでにはじまっていたけれど、まだ38m77cm。
この先も道は長そうです。
そうそう、コンセプトのすごさに目を奪われがちですが、
内容自体もかなり“怪”度が高いです。


どせいさん語翻訳講座

連載当時(2003年)も、2020年の復活篇も
たいへん人気があったメジャーなコンテンツだし、
これのどこが“怪”なんだと言われそうですが、
よく考えてみてください。
非常に独特なことば使いをするゲームのキャラクターが
例文をどのように表現するかを予想して、
たくさんの人が翻訳文をせっせと送り、
それがまったくといっていいほど当たらない。
けれど、みんな、おおよろこびしている‥‥。
客観的に見たら、こんなにおかしな状況はありません。
こういうナンセンスな舞台回しをさせたら
編集した永田さんの右に出るものはなく、
投稿を紹介していく文章のなかに、突如、
「押さないでください! 押さないでください!
 半裸でサンバを踊らないでください!
 半裸でサンバを踊らないでください!」
連載第6回 より)
なんていうフレーズが出てきたりして、おどろきます。
すごいですよね。


モギがカボチャをくり抜く60分

あ、これも、ながっちゃん(永田さん)の編集だ。
これはひどいものですよ。
同僚のほぼ日乗組員・モギちゃんが、
カボチャをくり抜いてランタンをつくるようすを
中継するだけなのですが、絶対に60分でおわらない。
おわらないどころか、年を追うごとにエスカレートして、
長いときは5〜6時間、じっくりゆっくり、
ぜんぜん関係ないことをやりまくる。
それを観て、みんな、おおよろこびしている‥‥。
“怪、ここに極まれり”であります。
こういうタイプの中継コンテンツは、
リアルタイムで見るのがいちばんで、
あとから冷静に見るとやや魅力が伝わりづらいのですが、
掲載時は毎回、大盛り上がりでした。
ながっちゃんは、
まじめなコンテンツも多数ものしていますが、
彼がほんとうに好きなのはこういうのじゃないのかなと、
ひそかに思っています。


虫歯のない会社宣言!

ぼくもディレクションで参加したコンテンツです。
さいしょのイメージは「すごろく」仕立てで、
虫歯のある乗組員メンバーたちが歯医者さんに通って
治療のステップを1つずつすすんでいき、
だれがさいしょに完治して「あがり」になるか競う、
みたいなことを考えていました。
でもそれだけだと、なんかつまんない、ということで、
それぞれのメンバーを キャラクター化 することに。
さらに各回のオープニングをマンガでやることにしたら、
まじめで有意義だったはずのレポートが、
おかしな人たちがおかしなことをやっている、
超がつくほどの怪コンテンツとなってしまいました。
これはもう、一歩まちがえればただの阿呆‥‥。
でも、自分ではすごく好きなんです。
なんというのか、高い崖を一生懸命のぼっているうちに、
思いがけなくひろびろとした場所に出られた、
みたいな感じで、実力以上が出せた気がするのです。
さっき読み直してみて、笑っちゃった。


NJTP劇場

上の虫歯コンテンツは、あのキャラクターデザインと
タイトルマンガがあってこそという気がするのですが、
それを描いてくれたNJTPさんをフィーチャーした
連載です。
(時系列としては虫歯コンテンツより前になります)
ぼくが思うに、NJTPさんのマンガは、
基本的にちょっと説明が足りていない気がするのです。
でも、彼のやりたいことは
まさにその「説明が足りていない感じ」だったりするので、
これはもう、しかたないことなのかもしれません。
結果として、珠玉の“怪作”12篇がうまれました。
とにかく、絵柄も、ストーリーも、ムードも、
見たことがないオリジナリティにあふれています。
正直、なにがなんだかわからない回もあるのですが、
それもふくめて、なんだかおかしい。
個人的には、ひとまずの最終回になっている「ゆき」とか、
「さくら」「梅雨」「秋なす」あたりがおすすめです。
NJTPさん、いまも描いてるのかな。描いてたらいいな。


2013年 あんこの旅

ほぼ日乗組員ならよく知っている、
糸井さんが一人語りするときの魅力を、
あますところなく伝えてくれるコンテンツです。
無類のあんこ好きで、あんこに寄り添い、一体化して、
むしろあんこ界からの使徒として語る糸井さんと、
それに感化され、あんこへの尊敬の念を高めていく
観客とのコール&レスポンスは、
まるで「あんこ教」のミサのようでもあります。
ここでのポイントは、いくぶん演出はあるものの、
糸井さんはほんとに思っていることを、
大まじめに語っているということ。
こういうときの糸井さんって、ほんとにおもしろい。
あんこへの向き合いかたが真摯すぎて、
ある種「天然」な感じさえ、ただよってきます。
ただ、これを新年さいしょの出し物にするのは、
いささか変わっているような気もします。
おもしろいおもしろいと読みすすめながら、ふと、
「新春早々、なぜこんなに、
 あんこのことを考えないといけないのか?」
ということが、読む人の頭をよぎりそうです。
着物やら門松やらのしつらえや、
ていねいでチャーミングな編集もいいですよね。
おもに山下さんがやってるのかな?
舞台裏にいた人間にとっては、
そういう予想をするたのしみもあったりします。


おやすみアニメのアマールカで、
いい睡眠。

明らかに山下さん編集のコンテンツも挙げておきましょう。
『アマールカ』というアニメを放映し、
同時にハンモックに揺られてそれを見る
ゆーないとのようすも配信するという、
これ自体が立派な“怪コンテンツ”なのですが、
なかでも連載さいしょの回がおすすめです。
山下さんという人は、
「できることならずっとふざけていたい」というくらい、
ふざけるのが大好きなんだけど、
ここでは気がねなくふざけ散らしてたのしんでいて、
ああ山下さんよかったね、イキイキしてるねと感じます。
ゆーないとさんとの組み合わせも合ってますよね。
ちなみに、ぼくもわりと事務所で寝ていたほうですが、
あれほどじゃなかったはず。
よろ如く尾根こあおなす!


ほぼ日関西版
明るい家族相談室

さいごは、やはりこれでしょう。
“怪コンテンツのなかの怪コンテンツ”であり、
とにかくこんなもの、ほかでは絶対に読めないはず。
他人をおもしろがる達人、山田かおり・まき姉妹が、
読者のかたからの家族にまつわる相談に答えるのですが、
なんといったらいいのか‥‥いやとても説明できないな。
とにかくいちど読んでみて、
そのなんともいえないおかしさを味わってみてください。
ちなみになぜ「ほぼ日関西版」と銘打っているかというと、
山田姉妹がもつ雰囲気やノリも、語られるエピソードも、
相談をめぐるやりとりも、相談への回答も、
つくづく「関西ならではやなぁ」と感じるからです。
昨年(2020年)も、ちちあきこさんが紹介していて
読み返して笑ったと書いてありましたが、
ぼくもやっぱり読み返して笑いました。
なんども笑いました。
ちなみにお二人は、毎回収録のたびに
わざわざ大阪から新幹線で来てくれてたんですよ。
またいつか、再開してくれたらいいなぁ。

番外
ハリーとソフトの
オトナ語バナー追跡劇場
 など

単独のコンテンツとはいえないので、番外篇として。
『オトナ語の謎。』という本を「ほぼ日」が出版したとき、
キャンペーン用に「オトナ語ニュース。」という
コンテンツを立ち上げました。
そこで配ったバナーを貼ってくれた人のサイトを、
ハリー(ぼく)とソフト(永田さん)が
なぜか漫才のかけ合い形式で紹介するコーナーです。
先にぼくが書いたものを永田さんに送って、
永田さんがさらにいじり回して仕上げるという、
めずらしい方法でつくられています。
二人ともアホらしいことをやるのが大好きだったため、
途中からはサイト紹介は完全にそっちのけで、
ただただ、おかしなやりとりをつくり上げることに
夢中になってしまっています。
“怪”どころか“駄コンテンツ”もいいところですが、
いま見てもおもしろいので、紹介することにしました。
ちなみに、追跡劇場にも登場する
通天閣あかり師匠が実際に見た夢のお告げにより、
この二人のユニットは「ふくぬすみ」と命名されています。
なんかいい名前ですよね。

なんだかたくさん並べてしまいました。
長くいたせいか、紹介したいものがいっぱいあって、
なかなかえらびきれませんでした。すみません。
とてもたのしかったです。
こんなコンテンツたちを平気で載せられる「ほぼ日」は、
すてきで貴重な場だなぁとあらためて思います。
それではみなさん
さーよーうーなーらー。

2022-01-03-MON

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