インターネットのあらゆる場所で
ヒットを連発するオモコロが、
新しい事業「オモコロ出版」を始めます。
Webメディアのオモコロがなぜ、
いま紙の本をつくるのでしょうか。
そもそもオモコロはどんな環境で、
おもしろコンテンツを
生みまくっているのでしょうか。
気になる、気になりすぎるということで、
オモコロを運営する
株式会社バーグハンバーグバーグ社長の長島さんに
お聞きしました!
長島さん、オモコロ出版ってどんな事業なんですか?

この授業の動画は、
「ほぼ日の學校」で全編ご覧いただけます。

>長島 健祐さんプロフィール

長島 健祐(ながしま・けんすけ)

新潟県新潟市出身。
ニコニコ動画の広告の立ち上げに参画。
その後、グリー株式会社、株式会社nanapi
(現Supership株式会社)でIP戦略、
アライアンス、メディア運営など
様々な分野で経験を積み、
2016年にバーグハンバーグバーグに参加。
2019年、代表取締役に就任。
社長となった今でも数多くの
デジタルプロモーションに
第一線で携わり続けている。
X
Instagram
note
YouTube

前へ目次ページへ次へ

【第5回】Webの会社が本をつくること

──
オモコロ出版で出される本の、
価格設定はどんなふうにされるんですか。
長島
価格設定は、
ノリに近いかもしれないです。
──
ノリ。
長島
当然ながら、そこでウケたいとは
思ってないので。
──
ははははは。そうですよね。
長島
ちゃんと真面目に価格設定するつもりです。
AIにも「496ページでこんな材料費や
人件費がかかって、
印税はこれくらいの場合、
価格はどのくらいが妥当でしょうか」
と訊いたんです。
そうしたら価格設定を何パターンか
出してくれたんですけれども、
どれも腑に落ちるし、
どれも腑に落ちないというか。
なので、最終的には収支のバランスと、
読者の方の顔を想像して、
「これぐらいの価格だったら
安心して買っていただけるかな」というラインを
感覚的に判断することになりそうです。

──
本1冊ずつでそれぞれ黒字を目指すのか、
あるいは収支はトントンでも
オモコロのブランド力を上げていくのか、
という想定はありますか? 
長島
ぼくらは一般的な出版社さんより
リソースが限られているので、
とにかく1冊1冊
しっかりしたものをつくり、
黒字を出したいと思っています。
そのなかでしっかりしたベストセラーが
生まれればうれしいですね。
──
「たくさん数を打って、点数勝負」
という方向には行かない予定なんですね。
長島
愛のないものにならないように、
作家さん、ライターさんの
大切なコンテンツを
しっかりプロモーションできるような
数しか出さないつもりです。
──
本を出したあと「告知する、届ける」
というところも、オモコロさんは
自社でできちゃいますもんね。
長島
はい、そこがひとつの強みでもあります。
オモコロ出版も、書店さんや取次さんが
振り向いてくれなかったら、
自分たちのECサイトだけで販売しようと
思っていました。
取次さんに新規口座を開いてもらうのは
難しいと聞いてはいましたが、
「こんなに出版業界って
参入障壁が高かったんだ」ということは、
入ってみてマジでわかりました。
でも、おかげさまで、
業界でも異例といわれるほどのスピードで
取次さんが新規口座を
開設してくださったので、
ちゃんと期待に応えなければと思っています。
──
これから、
どんなふうにプロモーションをかけていく
予定ですか。
長島
正攻法的に、オモコロでの告知を
やっていこうと思っています。
いままで、ほかの出版社さんから出した
書籍も、オモコロで告知したら、
けっこう盛り上げることができたんです。
というのも、オモコロは
文字を読むのが好きな人が見てくれている
メディアなので、
オモコロライターが好きな本を紹介すると、
それが話題書になったりするんです。
──
たしかにその印象は強いです。
オモコロさんで紹介された本がamazonで
品切れになっていたり。
もともと、本というメディアと
相性がいい読者の方が
多くいらっしゃるんですね。
長島
おっしゃる通りです。
書籍を紹介する記事を出したり、
出版社さん経由でコンテンツを
書籍化したりするまでは
あまり実感がなかったんですけど、
やっていくうちに
「オモコロを読んでくださっている方は
おもしろい本を探している」という
実感が湧いてきました。
──
しかも、オモコロのコンテンツを
オモコロ自身で出版されるとなると、
なんだか応援したくなります。
長島
ぼくはなんとしてもオモコロ出版を
成功させたいので、ほんとにね、
みなさん応援する気持ちで
買っていただけたらうれしいです。
──
本をつくるまでの過程が、
オモコロを通じて読者に
見えちゃってるのも、一緒になって
応援したくなる要因かもしれませんね。
長島
それこそ、みくのしんという、
もともと本が読めなくて、
文字もあんまり読まない人が
成長していく過程が見えるからこそ、
みなさん本を買ってくださって、
応援してくださるというところが
あるかもしれないです。
──
ある人が読書人になるまでが
全部コンテンツになってるわけですもんね。
たしかに、そこはWebの強みですし、
オモコロさんの得意とするところですね。
本づくりをすると、
余計にWeb側のよさや限界が
見えてきたりもするのでしょうか。
長島
やっぱり、Webのよさはすごくあります。
まず、フットワークの軽さ。
ものすごくしょうもないことを、
書籍じゃ出せないけども、
Web記事だったら軽く出せるとか。
それがまた拡散されて
話題になっていくところは、
Webの強さだと思います。
──
一方で、Web上のものは
なにかあったら消えてしまったり
見られなくなったりすることがあるので、
物質としてアーカイブしておけるのは
本のよさですね。
オモコロには長く見られる記事が多い
というお話もありましたが、
オモコロ出版で出される本は、
出したときに買ってくれるみなさんと、
アーカイブされたその本を10年後に
手に取るかもしれないみなさん、
どこまでをお客さんとして
想定していらっしゃいますか? 
長島
まずは、いま買ってくださるお客さんを
第一に大事にしたいなと思います。
というのも、オモコロ出版が
いつまで続くかわからないので(笑)。
なので、先のことはあんまり考えずに、
いま買って読んで楽しんでいただけるか
どうかは、とくに意識します。
出した本が、全部ドすべったら、
当たり前にオモコロ出版自体が
なくなり得ますし。
私なんかもいろんなビジネスを
経験してきましたが、3カ年計画を立てて、
3年後その通りになったことって
一度もなかったんです。
だから、未来を想像してもしかたない
という気持ちもあって。

──
本には「残す・留めるもの」、
インターネットは「流れていくもの」
という印象がありましたが、
本をつくるオモコロ出版も、
Webのコンテンツをつくるオモコロも
「おもしろいコンテンツをつくる」
ことは変わらないんですね。
長島
はい、そこは変わらないです。
──
リアルな話で、
オモコロ出版をやると決められてから、
どのくらい忙しくなられました? 
長島
やっぱり忙しくなったんですよ。
全然ナメてたわけじゃないんですけども、
取次さんや書店さんを回っていくなかで、
「長島さんだけでやってると
絶対もたないから、
人を入れた方がいいよ」と、
すごく言われました。
いまは3人くらいでやっていますが、
「オモコロ出版って何人いるの?」と
訊かれたときには、心配されないように、
ちょっと多めに言うようにして(笑)。
それぐらい、いまはやることが
多いんですけれども、
第一弾を出すことができれば道はできるので、
そこからはおそらくなんとかなると
思っています。
──
昔の出版社だと、
寝ずに働くようなイメージもありますが、
睡眠時間などは取れているんですか。
長島
それはめちゃくちゃ取れてます。
うちのメンバーは、
みんなちゃんと寝てると思います。
時代の変化なのか、
みんな年取っただけなのかは
わからないですが、
ライフスタイルを崩すような働き方は
うちでも、ほかのネットの会社さんでも
あまり聞かなくなりましたね。
ちゃんと睡眠時間をとる働き方のほうが
じつは合理的だと、業界全体が
気づいていったのかもしれないです。

(明日に続きます)

2026-09-12-SAT

前へ目次ページへ次へ
  • オモコロ出版第1弾が発売されます!

    オモコロ出版からの1冊目として、
    オモコロライターのかまどさん、
    みくのしんさんによる読書シリーズの第3弾
    『本が読めない34歳がはじめてごんぎつねを読む』が、
    2026年9月10日(木)に発売されます。

    特別編として、
    『変な絵』などの著者である雨穴さんと
    かまどさん・みくのしんさんによる
    対談も収録されています。
    帯には、雨穴さん、原宿さん、
    ダ・ヴィンチ・恐山さん、
    ARuFaさんの4名によるコメントを掲載。
    「オモコロ総出でお届けする渾身の一冊」です。