さあ、冬季五輪です。今年はイタリア。
ミラノとコルティナダンペッツォ(長い!)で
2月6日から2月22日まで開催されます。
かつては膨大な量のメールを
狂気じみた長さで翌日に掲載していた
「観たぞオリンピック」シリーズですが、
東京オリンピックでその形式は終わり、
その後に開催されたオリンピックからは、
ぼくが1日に1本、原稿を書く
というスタイルでひっそり続けています。
あ、ぼくというのは、ほぼ日の永田です。
さて、今回のオリンピックでは、
さらにのんびりと、書けたら書きます、
というくらいの感じで行きたいと思います。
そしてリアルタイムの観戦実況的な発信は、
Xの「#mitazo」をご覧ください。
さあ、はじまったらはじまっちゃうよ?
開会式から閉会式まで、よろしくお願いします!

 

永田のX(旧Twitter)アカウントはこちらです。
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#11

ぎりぎりのレジェンド

 
スピードスケート女子の髙木美帆選手が
1000mに続いて500mでも銅メダルを獲得した。
これで髙木選手がオリンピックで獲得した
メダルの数は通算で9個になりました、
とアナウンサーが言っていた。
へえ、9個か。
たしかに、何大会も連続で
オリンピックに出ているものなあ、とぼくは思った。
で、「あれ?」と思った。
ということは‥‥?
ひょっとしたら、日本でいちばん多く
メダルを獲得した人が髙木美帆さんなのかも?
一個一個積み重ねているプロセスを
まさにずっと観てきたから、
「日本一メダルをもってます!」という印象は
あんまりないんだけど、でも、そうかも?
調べてみると、通算9個のメダルは、
日本人の歴代で同率4位だった。
1位は小野喬さんで13個、
2位は加藤澤男さんで12個、
3位は中山彰規さんで10個。
そして、髙木美帆さんと同じ
9個のメダルを獲得している人がふたり、
塚原光男さんと剣持栄治さん。
たいへん失礼ながら、塚原光男さん以外、
ぼくは名前を覚えていなかった。
上に挙げたメダリストの方たちは、
髙木美帆さん以外全員、体操の選手である。
ほとんどが1960年代に活躍した方たちで、
さっそく横道に反れるけれども、
1968年に開催されたメキシコオリンピックでの
日本体操チームの成績がすさまじく、
団体と個人で合計12個ものメダルを獲得している。
つまり、そういった往年の体操選手を除けば、
やはり髙木美帆さんが
もっとも多くのメダルを獲得しているのだ。
「え、あの人は?」という、
ぼくに似たうろ覚え自慢の
オリンピックファンの方のために補足しておこう。
北島康介さんは通算7個。
そのうち4個が金メダルなのがすごい。
「ちょー気持ちいい」のアテネ大会で2個、
「なんもいえねぇ」の北京大会で同じく2個、
100mと200mの平泳ぎで金メダルを獲得している。
内村航平さんも同じく7個。
ロンドン、北京、リオという3大会で
それぞれ複数のメダルを獲得しているが、
意外なのはほとんどのメダルが
団体総合と個人総合でとったものだということ。
個人の種目別メダルはというと、
ロンドン大会のゆかの銅メダル1個しかない。
まさに「オールラウンダー」である。
また、通算メダル数では4個と多くない
(多くないわけないだろう)ものの、
ぜひ語らせていただきたいのは、
レスリング女子の伊調馨選手。
なんと彼女が獲得した4個はすべて金メダルである。
いやあ、これ、ほんとうにすごい。
2004年のアテネから2016年のリオまで、
じつに12年間にわたって
世界のトップを張り続けたわけで、
アスリートとして超別格といってよく、
ぼくは東京2020オリンピックの
最終聖火ランナーは彼女以外にないと思い、
周囲にそれをドヤ顔で伝えていたのであるが、
ものの見事に外れた。大坂なおみさんか、なるほど。
と、いうような、並み居る歴代のレジェンドたちを上回る、
9個のメダルを獲得したのが、髙木美帆さんなのである。
しかもまだパシュートと1500mが残ってるからね。
ここまでたしかな事実を並べてみても、
やはり髙木美帆さんには
いわゆる「レジェンド感」が薄い、とぼくは思う。
ぼくが現役時代を知っているアスリートのなかで、
もっともメダルを多く獲得した選手なのに。
その理由が、歴代メダリストの記録を調べていて
ぼくにはよくわかった。
獲得した9個のメダルのうち、
4個が銀メダルで、3個が銅メダルなのだ。
つまり、いつもぎりぎりでメダルを勝ち取っている。
自慢じゃないが、ぼくは髙木美帆さんが
これまでに獲得した9個のメダルのすべてを
リアルタイムで観ていると思う。
そして、正直、そのすべての機会において、
メダルの獲得を確信しながら観たことはない。
願わなかったことはない。祈らなかったことはない。
「行け、髙木美帆!」と、
いつも強く念じながら、応援しながら観ている。
髙木美帆選手は通算9個のメダルを獲得した、
間違いなく日本を代表するアスリートである。
しかし、つねにぎりぎりのところで戦い、
届くか届かないかのところでメダルを手にし、
決して満足することなく、
よろこぶというよりは気を引き締めるコメントを残して、
つぎの種目に向かっていく。
それが、髙木美帆だ。
ついでに言うと、
髙木美帆さんが上がる表彰台では、
いつも彼女ひとりだけが小柄で、
同じ競技にエントリーしている選手とは思えないほど
表彰台の上がでこぼこした感じになる。
それで9個ものメダルを獲得しているのだ。
ほんとうにすごいな、この人は。
たぶん、月日が経って現役時代が遠く離れれば、
髙木美帆さんはレジェンドとして扱われる。
そのころにはぼくも、
「髙木美帆のメダルをぜんぶ観たんだよ!」と
伝説を目撃した体験を
自慢できるようになっているだろうと思う。
さあ、1500m。
パシュートも期待しているけれども、
やっぱり、1500m。
10個目のメダルをやはり確信できず、
レジェンドじゃない髙木美帆にぼくは声援をおくる。

(つづきます)

2026-02-16-MON

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