さあ、冬季五輪です。今年はイタリア。
ミラノとコルティナダンペッツォ(長い!)で
2月6日から2月22日まで開催されます。
かつては膨大な量のメールを
狂気じみた長さで翌日に掲載していた
「観たぞオリンピック」シリーズですが、
東京オリンピックでその形式は終わり、
その後に開催されたオリンピックからは、
ぼくが1日に1本、原稿を書く
というスタイルでひっそり続けています。
あ、ぼくというのは、ほぼ日の永田です。
さて、今回のオリンピックでは、
さらにのんびりと、書けたら書きます、
というくらいの感じで行きたいと思います。
そしてリアルタイムの観戦実況的な発信は、
Xの「#mitazo」をご覧ください。
さあ、はじまったらはじまっちゃうよ?
開会式から閉会式まで、よろしくお願いします!

 

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#10

冬のオリンピックは称え合う

 
冬のオリンピックの好きなところのひとつは、
選手たちが、国を超えて、称え合うところだ。
夏の競技がやらないわけじゃないが、
冬のほうがその頻度が高い気がする。
冬季オリンピックの選手たちは、
競技を終えた直後にしばしばキツめにハグし合う。
握手し、ときに髪をくしゃくしゃし、
なんなら選手数名でハグの輪をつくったりする。
どういう高揚なんだろう、あれは。
なんとなくの仮説としては、
冬の競技にハグが多い理由のひとつは、
競技ごとにまとまって遠戦することが
多いからではないかとぼくは思っていた。
たとえば2025-2026年における
ジャンプ競技のワールドカップ開催地を調べてみると、
去年の11月にノルウェーのリレハンメルで開幕し、
スウェーデンのファールン、フィンランドのルカ、
ポーランドのザコパネと回って、
年末年始にドイツとオーストリアの4つの会場を転戦する
四大大会(スキージャンプ週間)があり、
その後もドイツのヴィリンゲン、
オーストリアのヒンツェンバッハと回って、
現在のオリンピックに臨んでいる。
ちなみに以上のことは資料を丸写ししただけであり、
へー、こんな町もあるんだな、と
軽く驚きながらタイピングした。
ザコパネ? ヒンツェンバッハ? 呪文?
ちなみに各国を代表するジャンパーたちは、
オリンピックのあともすぐに
オスロとかヴィケルスンドを転戦する。
あと、ラハティ? プラニツァ? 呪文?
そりゃあ仲よくなるだろうなあと思う。
過酷で過密に違いないが、
団体旅行的な側面もきっとあるはずで、
ヘイ、リョウユウ、このあとパブにでも行かないか?
みたいなことはしょっちゅうあるんじゃないか。
うーん、いいなあ、俺も転戦したいなあ。
そういう時間をともに過ごした仲間が
プレッシャーに打ち勝ってすばらしい記録を残したら、
素直におめでとう、すごかったな、と言える気がする。
たとえ自分が追い抜かれてメダル圏外になったとしても、
悔しさはいったんどこかにしっかり置いておいて、
きちんと祝福し、ハグすることができるんじゃないだろうか。
あと、冬季オリンピックの選手たちが
互いによく称え合う理由としては、
競技が対戦相手に打ち勝つ方式のものじゃなく、
ひとりひとりのアスリートが
自分の記録に向き合うものが
多いからというのもあるかもしれない。
がっつり対戦するのはアイスホッケーくらいで、
ほかの競技は基本、ひとりがトライアルし成績を競い合う。
クロスカントリーやスノーボードクロスのように
相手と順位を競い合うものもあるけど、
それらは同じコースを複数で同時につかうだけで、
やっぱり自分の記録と向き合っているような気がする。
実際、アイスホッケーは、
試合後にきちんと握手は交わすものの、
相手を称えるように強くハグしたりしないような気がする。
仮説に仮説を重ねるようで恐縮だが、
「相手を打ち負かす」というシステムの競技は、
試合後の祝福のハグが生まれづらいんじゃないだろうか。
ちなみにカーリングはちょっと特殊で、
対戦相手がいるのにハグがある競技だが、
あれは点差が開いたときに自分たちの負けを認める
「コンシード」というシステムが、
相手チームとの関係を紳士的にしているからじゃないか?
‥‥と、いうような、
「そんなん誰も問いかけてへんがな」
という疑問を解明するために、
深夜から明け方にかけてぼくは
ひとりの部屋でブツブツ言いながら考え続けていたのだが、
「はた!」と気づいたよ。
オイラ、「チーン!」とひらめいたよ。
頭上のくす玉がパカッと割れて紙吹雪が舞い、
なかから数羽の鳩がくるっくーと飛び出したよ。
冬の競技にキツめのハグが多いのは、
厚着だからじゃないだろうか?
だってスノボとかジャンプとかの選手って、
めっちゃごわごわ着込んでるじゃん。
相手を抱きしめたくても、
なんていうか、本体が、本体っていうか身体が
服の奥のほうにあるから、
その実感をたしかめるように
ギューッとハグするんじゃないだろうか。
逆に、逆にっていうのもへんだけど、
夏の競技がキツくハグしづらいのは、
おたがい汗でべとべとしてて
なんか申し訳ないなと思うからじゃないだろうか。
ああ、こりゃだめだ。
なんか書けば書くほど失礼だ。
アスリートどうしのリスペクトについて、
こちらもリスペクトを込めて書くつもりだったのに
厚着のなかに本体があるとか、
薄着でべとべとしてるとか、
国際オリンピック委員会(IOC)から
厳重注意されそうなテキストになってしまったことを、
この場を借りて深く深く謝罪いたします。
さあ、ミラノ・コルティナも折り返し地点。
まだまだ競技は続くけれど、
だんだん少なくなっていくともいえる。

(つづきます)

2026-02-15-SUN

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