さあ、冬季五輪です。今年はイタリア。
ミラノとコルティナダンペッツォ(長い!)で
2月6日から2月22日まで開催されます。
かつては膨大な量のメールを
狂気じみた長さで翌日に掲載していた
「観たぞオリンピック」シリーズですが、
東京オリンピックでその形式は終わり、
その後に開催されたオリンピックからは、
ぼくが1日に1本、原稿を書く
というスタイルでひっそり続けています。
あ、ぼくというのは、ほぼ日の永田です。
さて、今回のオリンピックでは、
さらにのんびりと、書けたら書きます、
というくらいの感じで行きたいと思います。
そしてリアルタイムの観戦実況的な発信は、
Xの「#mitazo」をご覧ください。
さあ、はじまったらはじまっちゃうよ?
開会式から閉会式まで、よろしくお願いします!

 

永田のX(旧Twitter)アカウントはこちらです。
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#09

全員が挑戦していた朝

 
諸君、わしゃヘトヘトじゃよ。
まったく、なんて朝だ。最高だ。
今回のオリンピックが行われている
イタリアのミラノ・コルティナ地方と
日本の時差は約8時間。
競技のコアタイムはというと、
日本時間の深夜3時くらいから朝にかけてで、
その数時間にさまざまな競技の決勝が行われる。
したがって日本がこれまでに獲得したメダルも、
その時間帯に生まれていることが多い。
実際、これまでぼくは、
その時間帯にいくつものメダルを目撃してきた。
しかし、このコラムが掲載される
ほぼ日の更新時間は午前11時であり、
早朝のメダルをテーマに原稿を書くことはできなくはないが、
やっぱりちょっと時間の余裕がなさすぎる。
そんなわけでぼくは朝方に観たメダルの話は、
その翌日に掲載される原稿で触れるようにしていた。
まあ、このページに
速報性が求められているわけでもないのだし。
しかし、今日はダメだ。
理性でおさえようとしても、
さっきまで観ていたメダルの話が
喉から飛び出してしまう。
いやあ、ほんとにすごい夜だった。すごい朝だった。
おめでとう、ありがとう。
具体的にいえば、それは、
スノーボード男子ハーフパイプの決勝と、
フィギュアスケート男子のフリーである。
きっとニュースの映像がくり返し流れているだろうから、
結果や経過をいちいち書かないけれど、
ハーフパイプでは戸塚優斗選手が金メダルを、
そして山田琉聖選手が銅メダルを獲得した。
フィギュア男子では鍵山優真選手が銀メダル、
そして佐藤駿選手が銅メダルを手にした。
自分が興奮気味に発信したXの投稿時間を調べてみると、
約2時間のあいだに日本代表選手が
合計4つのメダルを得たということになる。
いやあ、ほんと、へとへとだ。最高だ。
ハーフパイプもフィギュアも
メダルのかかる決勝はとてもハイレベルなもので、
日本人選手だけでなく参加選手全員がそれぞれにすばらしく、
観ていてほんとうにおもしろかった。
こうして書いていてもさまざまな場面がよみがえり、
なんというか、胸がいっぱいになる。
ぜんぶを冷静に振り返れないから、ひとつだけ書く。
朝方に観たふたつの競技の決勝で、
ぼくがひりひりしながら感じた共通のことがある。
それは、「挑戦」である。
ストレートで気恥ずかしいくらいだけど、
恥ずかしがっている場合ではないのだ、俺よ。
まちがいなく全選手が挑戦していた。
自分の限界に向かって飛びかかっていた。
リスクを負って、失敗の可能性を承知で、
全身全霊で挑戦していた。
捨鉢になっているわけではなくむしろ冷静に、
決意して、覚悟して、高い場所に挑んでいた。
そうしないと勝てないと全員がわかっていたからだ。
ああ、ほんとうに胸がいっぱいになる。
故障を抱えている人も、
感情を表に出さないような人も、
これまでの成績で圧倒している実力者も、
4年に一度のメダルに向かって、
全員が挑戦していた朝だった。
戸塚優斗や山田琉聖だけでなく、
平野流佳も、そして平野歩夢も、
絶対王者といわれたイリア・マリニンも、
逃げることなく、果敢に飛んだ。
そしてもちろん多くの挑戦者が失敗した。
ああ、明け方に、いくつの失敗を観ただろう。
そしてその失敗が、転倒が、回転不足が、
観る者のこころ震わせ続ける。
そういう2時間をぼくらは目撃した。
きれいごとを書くわけではないが、
ぼくはたとえ日本人選手がメダルを逃したとしても、
このすばらしい勝負にこころから感動し、
参加者全員に惜しみなく拍手をおくったと思う。
スポーツを観ることは、自分に影響する。
明け方に観たいくつものすばらしい挑戦は、
きっとそれを観たぼくらのライフを勇気づける。
ストレートに書くと気恥ずかしいけどぼくは思う。
リスクを負ってでも挑戦しなくては。
胸がいっぱいのまま書きはじめた文章を、
とくにどこかに着地させないまま終わります。
オリンピックを観るということは、
こういうかたまりをどすんと受け取ることなんだな。
こんなに長くオリンピックを観ているのに、
感動するたび、胸がいっぱいになるたび、
「ああ、オリンピックってこうだったな」と思う。
さて、今日はどんな挑戦を目撃するだろう。

(つづきます)

2026-02-14-SAT

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