かわいいものに囲まれて生きていると
かわいい造形はどうやって生まれたのかが
見えにくくなるかもしれません。

かわいいものをつくるって、
当たり前ですが、簡単ではないはずなので
かわいい美術の「歴史」の部分を
自分なりに考えるようになりました。

私は「かわいい美術の歴史」を考えるときの
大きなポイントは、３つあると思うんです。

まず１つは、
かわいいものを飾って楽しむ生活習慣が
あったかどうかの問題です。
本物のかわいい物を愛でるだけではなく、
かわいいものを絵にして飾ってたのしむ習慣が
あったか、なかったかが、
かわいい美術の歴史を考えるうえで大切です。

そしてもう１つは、
｢かわいい｣と見た人に感じさせる手法が
あったかどうかということ。
かわいい動物がいたとしても、
そのかわいらしさを見た人に伝えるには、
描き方の問題があります。
ちゃんと「かわいらしさ」を
造形化しようとする人がいてはじめて、
かわいい美術ができるんです。

最後の１つは流行です。
かわいい動物が美術として流行するということは、
一つのかわいい造形のスタイルが
完成されていることを意味しています。
現代でいうなら、カピバラやパンダがそうですよね。
その時代時代の流行があり、
造形化され、たのしまれています。

かわいい動物がたくさんいる中で、
江戸時代に子犬の絵が
人々のたのしみとして流行したというのは、
かわいい美術の歴史上、
大きなことだと思っています。