3ヶ月に渡り連載してきた特集『色物さん。』、
最後はナイツのおふたりの登場です!
いま、寄席にはナイツを目当てにやってくる
若い人がたくさんいます。
漫才協会を引っ張る立場でもあるおふたりは
寄席に、新たな風を吹かせています。
色物さんとしての役割や寄席という場について、
日頃から、おふたりが考えていることを
たっぷりうかがいました。
担当は、「ほぼ日」の奥野です。さあ、どうぞ。

>ナイツさんのプロフィール

ナイツ

2001年ボケの塙と、ツッコミの土屋にて活動開始。
内海桂子の弟子として活動。
漫才協会、落語芸術協会、三遊亭小遊三一門として寄席でも活躍中!

漫才新人大賞受賞(03)
お笑いホープ大賞・NHK新人演芸大賞 演芸部門大賞(08)
「M-1グランプリ」決勝進出(08~10)
「THE MANZAI 2011」準優勝
平成25年度文化庁芸術祭 大衆芸能部門 優秀賞受賞(2013年度)
平成28年度(第67回)芸術選奨 大衆芸能部門 文部科学大臣新人賞受賞(2016年度)
第33回浅草芸能大賞 奨励賞 受賞(2016年度)

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第2回 芸人を鍛えてくれる場所。

──
逆に言うと、寄席に出たてのころには、
ナイツさんも
時間調整とかやってたんですか。
やってましたよ。前座さんに
「時間詰めてください」って、急に。
いまは「絶対に縮めないでください」
って言われることのほうが多いけど。
──
おお。
15分のネタを
急に「11分で!」って言われたときの、
あのドキドキ感、
どこを削ろうかなあって
むしろ楽しんでやってたんですけど、
あるときに(三遊亭)遊雀師匠が
「ナイツさんを見に来てるお客さんが
いっぱいいるから、20分やってよ」と。
──
つまり「延ばしてくれ」と。逆に。
寄席に出る日って、
朝から「今日はこれをやろう」って
考えながら来てるんです。
ネタって削るのはまだいいんだけど、
いきなり「長くしてくれ」って、
それ、むちゃくちゃ難しいんですよ。
土屋
塙さんの体内時計で
ネタの時間を調整してるんですけど、
出番の直前に、
15分のところ12分でって言われて、
どうすんのかなと思いつつやるんです。
で、舞台上で、ああ、そこ引いたんだ、
とかっていうのが、
密かな楽しみではあったんですけどね。
急に「短くして!」っていうお願いは、
最近は、減りましたね。
ただ、困るのは、前座さんによっては、
「短くして」ってお願いを、
ふたりにちゃんと言ってくれる場合と、
どっちかにしか言わない場合があって。
土屋
ああ、あるある(笑)。
俺だけが言われていたときもあったし、
俺が知らないときもあったし。
えっ、いきなり終わっちゃったけど、
ここでオチなのか!? ‥‥とかって。
だから、前座さんには
「短くなったときはふたりに言ってね」
ってお願いしてます(笑)。
──
寄席では、そういうお願いって、
けっこう日常的にくるものなんですか。
いちおう持ち時間は決まってますけど、
どうしても前後しますからね。
いまちょっと遅れてるんで、
誰かつないどいて‥‥とかはけっこう。
土屋
出る順番を入れ替えたり、
とつぜん時間が変わったりすることは、
まあ、よくある話なので、
そういう意味では
芸人を鍛えてくれる場所だと思います。
寄席って。
──
塙さんのご著書を拝読したんですけど、
あの本って、漫才という芸に対する
塙さんの精緻な分析と、
なるほどな~と思わせられるコメント、
何より「漫才、大好き!」って感じで
あふれ返ってるじゃないですか。
いやいや(笑)。
──
すごくおもしろかったんですけど、
そのなかで
比較的ちいさなエピソードかも
しれないんですが、
漫才師の足元の話が書いてあって。
ええ。
──
めっちゃ興味深かったです。
靴と靴下の話ね。そこですか(笑)。
──
東京の寄席だと、
メインの落語家さんに合わせる形で、
ナイツさんたち漫才師さんも、
靴を履かず、
靴下で舞台に立ってらっしゃいますが、
これが関西になると、
靴を履いて出ていく漫才師に合わせて、
落語家さんも雪駄履きなんだって。
そうなんですよ。
土屋
われわれ漫才の舞台に、
落語家さんが漫談で出たりとかね。
雪駄を履いて、
何なら立ってやる人もいるくらい。
──
へええ。落語を、ですか?
自分は関東の生まれ育ちなんですが、
ぜんぜん知らなかったです。
東と西とでだいぶちがうんだなあと。
吉本さんのなんばグランド花月とか、
そんな感じですよ。
──
東京の寄席では「靴下」というのも、
でも、よく考えると、
ちょっとヘンでおもしろいですよね。
だって、着ているのはスーツなのに。
裸にネクタイとまでは言わないけど。
土屋
だから、寄席では靴下に気をつけないと。
ぼくらの靴下の先っぽが、
お客さんの目の前にくるじゃないですか。
だから、
親指に穴が空いちゃったりとかしてたら。
──
目と鼻の先に「穴」が(笑)。
夏場に、舞台用の靴下を忘れちゃって、
短いシマシマの靴下で出てったりね。
ユニクロで買ったこと、何度もあります。
ぼく、めちゃくちゃヘビーユーザーです。
ドン・キホーテとか。
──
東洋館の目の前にありますしね、ドンキ。
「あの人、また靴下買いに来た!」(笑)
そうそう(笑)。
以前、東洋館で、
ちゃんとした靴下を忘れてきたことに
出番ギリギリで気づいて、
買いに行く時間もなくて、
はたけんじ師匠から、借りたんですよ。
土屋
最悪だわ!
しんどかったです。
──
ははは、借りておきながら(笑)。
土屋
大先輩から「靴下を借りる」って。
ホント最悪だわ、それ。
人の靴下ってイヤじゃないですか。
自分が履いていた靴下のうえから
履いたんですけどね、もちろん。
それでもめちゃくちゃイヤでした。
──
履かれる方も‥‥。
いや、はたけんじ師匠は、
まったく気にするようすはなくて。
「ぜんぜんいいよ」って。
──
さすがは大先輩(笑)。
「どんどん履いて」って。
──
でも、やっぱり、おふたりは、
寄席でやる漫才‥‥というものに、
特別な思いがあったんですね。
おうかがいしていると、わかります。
ナイツ独演会っていう全国ツアーを
毎年やってるんですけど、
ちょっとお金が溜まってきたら、
寄席小屋のセットをつくって
全国をめぐりたいなと思ってますね。
──
おおー、それはすごい。
ナイツさんの寄席が、全国をまわる。
横浜にぎわい座とか
半蔵門の国立演芸場でやるときは、
そこに「寄席」ができあがるので、
いいんですけど。
土屋
そのままでね。
これが地方の市民会館とかになると、
本当に何もなくて‥‥
舞台が、もう殺風景すぎるんですよ。
だから、そういうところに、
寄席小屋セットをつくりたいんです。
土屋
金屏風とか立てちゃって。
──
今回の特集で
色物さんたちに取材しておりますと、
いまの寄席まわりにおける
ナイツさんの功績というか、
存在感の大きさを、
何かもう自然と実感するんですね。
単純に、みなさん名前を挙げますし。
ねづっちさんも、
東京太・ゆめ子師匠も、みなさんが。
ナイツのおかげですって。
いえいえ。
──
寄席に新しい可能性をひらいている、
みたいなことを、
みなさん、口々におっしゃるんです。
ナイツさんご本人たちとしては、
何かを変えたい‥‥とか、
そういう意識ってあるんでしょうか。
新しいお客さんに来てほしいだとか、
そういう思いはもちろんあります。
ただ、変わらない部分も必要なので。
寄席は、とくに。
土屋
漫才協会としては、
お客さんにたくさん来てほしいです。
そのためには
変わっていかなきゃいけないんだ、
そう思って、
みんな、がんばってやってますけど、
寄席文化そのものには、
ずーっと変わってほしくない部分も、
いっぱいあるじゃないですか。
──
たしかに。
土屋
そこは、わけて考えてるんですよね。
もちろん新しいことはしたいですし、
どんどん変わってもいきたい。
でも、ぼくらの影響だけで、
変化する部分なんかないでしょうし。
うん。あくまで「寄席の色物」として、
漫才師として、
どう新しいものをうみだしていくか、
ということじゃないかなあと思います。

(つづきます)

2023-01-03-TUE

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  • 毎年恒例、大人気のナイツさんの独演会ですが、
    昨年2022年10月から11月にかけて
    全国で開催された
    『ナイツ独演会 それだけでもウキウキします』
    の横浜公演が映像化されます!

    おなじみの時事漫才「ヤホー漫才」では
    「2022年」を調べてたもよう。

    なお、特典映像として、
    浅草東洋館で起きた事件を描いた、
    漫才協会オールキャストの幕間映像ドラマ
    「漫才協会 そうさ副会長」を収録しているとか。
    み、見たい‥‥!

    発売は2月22日、Amazonでは
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    ※インタビューの数日後、小林のり一さんがご逝去されました。
    心よりご冥福をお祈りいたします。

    撮影:中村圭介