鈴木

震災当時は、遊び場もなければ
習いごともできない状況でした。
そんな子どもたちを心配して
地元のボランティア団体の方々が、
「場所を選ばず、
子どもたちが楽しめる方法はなんだろう」と考えて、
立ち上げてくれたのがSCK GIRLSです。

「S＝産地、C＝直送、K＝気仙沼」がコンセプトで、
震災直後の地元を歌とおどりで元気づけようと
2011年11月にデビューしました。
11月3日がデビュー日で、
結成13年目を迎えるんです！

──

なんと、もうすぐですね。
おめでとうございます！

鈴木

ありがとうございます！

──

加入されたのはいつ頃ですか？

鈴木

2011年11月です。
デビューして、
1週間くらい経ったタイミングでした。

「ボランティアしない？」と誘われたときは、
「私もやっとお手伝いできるときがきた」
とうれしくて。
配給や瓦礫の撤去の手伝いだと勝手に想像して、
くわしいことは聞かずに
ジャージに軍手で指定の場所に行ったんです。
そうしたら、SCK GIRLSの
オーディションだったという。

──

軍手も持って、気合い充分だったのに。

鈴木

そうなんです。
戸惑いましたけど、運営の方が
「とりあえずAKB48の『ヘビーローテーション』
なら簡単だから踊ってみて」
と言われて、歌って踊ったんです。

そしたら「音痴だな」って言われて。

──

突然やらされたのに、
けなされるなんて（笑）。

鈴木

ひどいですよね（笑）。
でも、私、たぶん負けず嫌いなんです。

──

じゃあ、悔しい気持ちに火がついて。

鈴木

火がつきました。
「なんだと～！」って。

あと、私はすこし遅れて参加したので、
もうすでにデビュー曲ができあがっていました。
子どもたちが大人に見守られながら、
必死に振り付けを考えていて、
私もそこに混ぜてもらったんですね。

ひさしぶりに同世代の子と
ああでもない、こうでもないと
意見を交わせるのがとても楽しくて、
「こういうのひさしぶりだな」って思いました。

──

しばらく学校がなかったから。

鈴木

そうなんです。
学校がない間は、
家族としか過ごしていなかったので。

──

基本的に子ども主導で、
ステージをつくるんですか？

鈴木

そうですね。
大人は見守り隊というか、
「行ってこーい！」って背中を押してくれる存在で、
基本的に私たちに考えさせてくれました。
MCも自分たちでやらなきゃいけなくて、
そこで自主性を強制的に養われましたね。

──

それは、大変でしたね。

鈴木

でも、それがやりがいにつながったというか、
できることが増えるのは楽しいなって思ったんです。
それで、その場で「入ります」って返事をしました。

──

アイドルになるつもりなかったのに、
潔いですね。

鈴木

直感です。
そしたら、1週間もたたないうちに
ステージに立たされることになって。

──

ええ！

鈴木

もう、ボロボロでした。
思い出したくないです（笑）。

初めてレッスン場に行って、加入を決めて、
そうしたら「今週末ライブだからよろしく」
って言われてしまって。

──

それは、大慌てですね。

鈴木

連れてきてくれた先輩に頼んで、
毎日必死になって練習しました。

▲SCK GIRLS初期のステージ

──

そこから12年もステージに立つことになるとは、
想像もできなかったですね。

鈴木

ほんとですね。
ただ、ひたすら楽しくて、
気づいたら12年という感じです。

──

心がポッカリしていた
麻莉夏さんにとって、
心を埋めてくれる時間だったんですかね。

鈴木

ああ、そうですね。
今思い返せばそうだったかもしれません。

震災前は、森の中をかけまわって
秘密基地をつくったり、
オニヤンマを捕まえたり、
気仙沼の自然を謳歌していたんです。

でも、外で自由に遊べなくなって、
部活もできないから、
「暇だけどどうしたらいいのかわからない」
時間が長く続いていました。
だから、ひさしぶりに体を動かして、
はじめてのことに挑戦するのが楽しかったんです。

──

SCK GIRLSに入るまでの約半年、
「どうしたらいいのかわからない」
という感覚で過ごしていたんですね。

鈴木

「どうしたらいいのかわからない」
「なにもできない」
という感覚は大きかったと思います。

しばらくしてやっと学校がはじまって、
部活もあったんですけど、
自衛隊の方々が校庭を使っているので
これまで通り、
思いきり部活や体育の授業ができる
環境ではなかったんです。

──

ああ、そうですよね。

鈴木

あと、友だちと話していても、
考え込んでしまうことがありました。
どんな話題で相手を
傷つけてしまうかわからないので、
「家、大丈夫？」なんて気軽には聞けなくて。
転校生だったから余計に
気を遣ってしまったのかもしれないんですけど。

──

なるほど。

鈴木

でも、今思えば、
みんなの実情をもっと知りたかったです。

──

同級生と「実はあのころ‥‥」って、
話せるようになったタイミングはありましたか？

鈴木

それが、SCK GIRLSの子たちは、
なんでも自分のことを話すんですよ。
「家流されちゃって」とか、
「仮設住宅から通っているんだ」とか。

──

あっけらかんとした子が多かったんですか？

鈴木

子どもというより大人が、
包み隠さずになんでも話してくれる
人たちだったんです。
困っていること、大変なこと、自分の状況、
全部話してくれました。
だから、子どもたちも自然と
そういう会話ができたんだと思います。

逆に、私は大きな被害にあっていないから、
困った話は肩身が狭くて、
話せることがなかったんです。
でも、みんなが自分のことを話すから、
私も話しやすくて、
すごく気持ちが楽になりました。

そこからです、
あまり考えすぎずに話せるようになったのは。

──

気持ちの面も支えてくれる場所だったんですね。

鈴木

そうですね。
学校とは違う、もうひとつの居場所でした。

──

7年間で約500ステージとおっしゃってましたが、
加入当時は相当忙しかったですか？

鈴木

週に一度練習があって、
土日はステージに立つことがほとんどでした。

ありがたいことに、気仙沼は震災当初から
盛り上がりを絶やさないように、
いろいろなイベントが開催されていたんです。
外部の人を受け入れる体制もあったので、
たくさんの方が来てくれて
ステージをする機会も多くありました。

──

年齢的に麻莉夏さんは中学生で、
思春期真っ只中ですよね。

鈴木

そうでしたね。

──

周りの目がいちばん気になる時期なので、
アイドルだと同級生にバレたら恥ずかしい‥‥
みたいな気持ちはなかったですか？

鈴木

恥ずかしかったです！
隠していたわけではないですが、
堂々と言うこともありませんでした。
ただ、気仙沼の街の小ささを思い知りました（笑）。

──

すぐにバレそうですよね。

鈴木

部活にも入っていたんですが、
大事な試合とステージが被ることがあったんです。
そうすると、直接は言われないけれど、
「部活よりアイドル活動を優先するの？」と
なんとなく好意的に思われていない感じがありました。

でも、活動を続けていると、
ステージを見てもらえる機会が増えて、
少しずつ反応が変わってきました。
高校生になるころには「この子、アイドルだよ」って
紹介されることもあって。

──

活動を続けることで、
友だちに認められていったんですね。

鈴木

一度、ももクロさん（ももいろクローバーZ）
と夢の共演をさせてもらったんです。
クラス中が大騒ぎで、「どうだった？！」と
話したこともない同級生から声をかけられて。

──

そこで、一気にSCK GIRLSの株価が。

鈴木

あがりましたね（笑）。

中には、いたんです。
「アイドルなんてやっていけないよ」
と遠回しに言ってくる人も。
そこですぐに辞めていたら「やっぱり」って
思われていたかもしれないですが、
性格的に否定されると燃えるタイプなので。

──

負けず嫌いな麻莉夏さんが、ここでも。

鈴木

あと、私は成長速度が遅いので、
誰よりもたくさん練習をしないと
追いつけなかったんです。
そのぶん長く活動することになって、
必然的に認めてもらえたのかなと思います。

高校３年生の最後の文化祭で、
初めて、同級生の前でライブをしたんですよ。
SCK GIRLSでパフォーマンスする時間をもらって。

──

わあ、それはうれしいですね！

鈴木

うれしかったです。
同級生の子たちが中庭に集まって、
わーって盛り上がってくれて‥‥
６年間一生懸命がんばってきたと、
自信を持って言えることはこれだけだったので、
やっと見せられると思いました。
ただ、後輩のメンバーは嫌がってました（笑）。

──

あはは、隠してたんですかね。

鈴木

隠してたみたいです。
でも「私が言ったからやるよ！」って、
ステージに引っ張り出しました。

──

同級生の子たちが
盛り上がっている場面を想像するだけで、
胸がギューッとなりました。

鈴木

自己満かもしれないんですけど、
打ち込んできたものをみんなの前で披露できて、
すごく素敵な景色を見せてもらいました。
そうやって月日が経つにつれ、
同級生の私たちに対するグレーがかった視線が、
少しずつ変わってきたかなと思います。