
ペールエール、IPA、ホワイトエールなどなど
クラフトビールの種類はたくさんありますが、
現在進行形で新しい種類がどんどん生まれているそうです。
種類が多くなる理由や味の違い、誕生した経緯など
ヤッホーブルーイングで製造部門責任者を務める
森田正文さんに教えてもらいました。
森田さんの元同僚、ほぼ日大友も教える側で同席します。
クラフトビールは今、「どのへん」にいるのでしょうか?
ほぼ日の安木が担当です。
- 大友
- 次はホワイトエールなんですけど、
小麦をつかうのがほぼマストのビアスタイルなので、
それで白いと言われています。
「別に白くないじゃん」って言う人も、けっこういますが。
- 森田
- そっか、普通の人は黄色に見えるのね。
ぼくはもうホワイトエールは
白く見える目になっちゃってるわ。
- 大友
- 黄色に見えるといえば、見えますね。
でも、ビールの中では白い方ということで。
嗅いでいただくと、フルーティーな香りがしますよね。
国によっていろんなホワイトエールがありますが、
ベルギーのベルジャンホワイトって言われるものが
いちばん主流のホワイトエールです。
それには必ずオレンジピールと、コリアンダーが入っています。
苦みもほとんどないので、飲みやすいビールと言われています。
- 芹澤
- 苦みがすっと消えて、飲みやすいと感じました。
あとは酵母っぽいというか、
酒粕を食べた後の風味がする。
- 森田
- うんうん。
けっこう鋭いですね。
新井さんはどうですか?
- 新井
- わたしは実は、ホワイトエールは
あんまり好きじゃないんです。
クセがないようで、じつはクセがあると思います。
好き嫌いが分かれるビールじゃないかな。
- 森田
- モリタ的統計調査によるとですね、
ベルギービールの酵母の中には
絆創膏みたいな匂いを出す酵母があるんですよ。
それを一定割合の日本人は鋭敏に感じ取って、
苦手だと感じる人がいるなと思っています。
- 大友
- 人によって、強く感じる香りや味わいがあるんですよね。
本当に好みは人それぞれですね。
つぎの「セゾン」はどうでしょうか。
こちらもベルギーで生まれたビールで、
農作業の合間に喉を潤すために作られたと言われています。
- 森田
- こちらも酵母が特徴的ですね。
その地域でもともと採れた酵母を使って、
スパイシーでドライに仕上げるのがセゾンです。
どうですか?
- 芹澤
- (一口飲んで)あれ、ホワイトエールと味が似てる。
- 新井
- うん、ホワイトエールと味わいが
似ているビールだと思います。
もともとセゾンは好きなので、
なんでホワイトエールは苦手なのか、ふしぎです。
- 森田
- 発祥はどちらも同じベルギーなので
似てる部分はありますね。
こちらにも小麦が入っていることが多いです。
- 芹澤
- わたしはセゾンのほうが絆創膏っぽく感じます。
- 大友
- また個人差が。
ほんとうにおもしろいですね。

ベルギービールはクラフトビール?
アメリカで「クラフトビール」という
言葉と概念が生まれたのは、この50、60年の話。
歴史的に言えば、ベルギーのほうがビールの歴史は古い。
だから昔からビールがあった国に行くと、
「クラフトビールって何なん?」って
思うこともあるんです。
たとえばドイツは、
小規模な醸造所が地域にいっぱい点在していて、
元から小規模醸造をやっていた。
彼らにとって自分たちのビールはドイツビールであって、
クラフトビールであるとは言わないんですよね 。
ベルギービールに話を戻すと、
ベルギービールの世界は、日本酒の世界に似てるんです。
たとえば日本酒は伝統的な酒蔵もある中で、
革新的な「クラフトサケ」を作っている酒蔵もある。
ベルギービールの中にも伝統的な製法にとらわれずに、
新しいベルギービール作りをしている、
「クラフトベルジャンブルワリー」というのもいる。
これまたおもしろいんだけど、
ベルギーの伝統的大手ビールに憧れて、
アメリカのクラフトブルワーがクラフトビールだと主張して
ベルギーの伝統的ビールを作っていたりもする。
だから「物事を革新しようとする姿勢」は、
クラフトビールかどうかを感じる上では
大事なんだと思います。
それで言うと「一番絞り」も、生まれたての頃は
クラフトビールといえるのかもしれないよね。
2025-08-13-WED
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森田さんいわく、「進化の最先端」である
HAZY IPA(ヘイジー アイピーエー)が
ヤッホーブルーイングでも発売されています。
(HAZY IPAがどんなビールかは第4回で!)
「ビールは苦い」をくつがえす
トロピカルフルーツ感なのですが、
ジュースのような甘さはないのがポイントです。
飲んだ後、口の中がフレッシュな香りで満たされて
吐く息までいい匂いになる気がします。
おいしいのでおすすめです。(安木)ヤッホーブルーイング「有頂天エイリアンズ」
