ペールエール、IPA、ホワイトエールなどなど
クラフトビールの種類はたくさんありますが、
現在進行形で新しい種類がどんどん生まれているそうです。

種類が多くなる理由や味の違い、誕生した経緯など
ヤッホーブルーイングで製造部門責任者を務める
森田正文さんに教えてもらいました。
森田さんの元同僚、ほぼ日大友も教える側で同席します。

クラフトビールは今、「どのへん」にいるのでしょうか?
ほぼ日の安木が担当です。

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最先端のスタイル HAZY IPA

──
では、次はHazyIPA(ヘイジー アイピーエー)の
お話もうかがいたいのですが、
これはどんなビールなのでしょうか?
大友
Haze(ヘイズ)は英語で「濁っている」という意味ですが、
ご覧の通り、濁っているのが特徴です。
これもIPAが派生したビアスタイルですね。
アメリカの東海岸、
ニューイングランドという地域でうまれたので
「ニューイングランドIPA」と言われることも多いですね。
苦みがあまりなくて、とろっとした飲み心地のビールです。

──
Hazy IPAは、なぜ濁っているんですか?
森田
理由はいくつかあります。
ひとつは、穀類の濁りですね。
苦い口当たりをまろやかにするために
オーツ麦や小麦などの穀物を入れているんです。
もう一つは、酵母です。
酵母をろ過していないのが、濁りの理由です。
あとは、ホップをものすごくたくさん入れているので
「ホップヘイズ」と呼ばれる濁りもあります。
芹澤
(匂いをかいで)え! すごくいい香り。
(一口飲んでみて)ガツンとホップの苦みが
くるのかなって思ったのに、全然苦くない。
まろやかに消えていきます。
森田
ホップに熱をかけると苦味成分にかわるので、
このHazyIPAをつくるときは
ポップに熱をかけないようにしてるんですよ。
芹澤さんは通常のIPAを、
「香りは好きだけど、苦いし、度数も強くて飲みづらい」
っておっしゃったでしょ?
そういう課題感をもったブルワリーが生み出したのが、
HazyIPAなんですよ。
あんまり的確だから、
「芹澤さんは仕込みなのかな?」って思いました(笑)。
──
仕込みではありません(笑)!

大友
たしかにこうやって飲んでいくと、
アメリカのクラフトビールの歴史を
辿っている感じはありますね。
ペールエールに、
もっとホップの香りが欲しくなってIPAができて、
それがちょっと苦くて飲みづらいから、
少しライトにしたセッションIPAができて、
さらに苦みを抑えたHazyIPAが生まれたんですもんね。
森田
HazyIPAは、ここ何十年間の歴史が
ぎゅっとつまったビアスタイルだよね。
そういう意味で、最先端のビアスタイルだと思っています。
HazyIPAで一気にクラフトビールが
好きになる人も多いみたいです。
トロピカルフルーツみたいなフレッシュな香りも、
キャッチーだしね。
でも、ぼくはもうクラフトビール業界が長いからさ。
若干ジェラシーも感じちゃうんだよね。
HazyIPAは、おいしいし大好きだけど、
「おれは黙ってレギュラーIPAをガブガブ飲むんだ」
っていう反骨心もあったりして。
‥‥いま、個人的な見解を語りましたけど
だいじょうぶですか?
──
あはは。
はい、だいじょうぶです。
新井
自分はHazyIPAをお店ではじめて飲んだ時、
「こんなおいしい飲み物があるのか!」
って感動しました。
森田
ヤッホーブルーイングの
HazyIPA「有頂天エイリアンズ」は、
5月21日からセブン‐イレブンでも
買えるようになりましたよ。
あ、いつの間にか
宣伝番組みたいになっちゃって、すみません(笑)。

ヤッホーブルーイングさんの
ビールづくりを教えてください

これまた、うちは独特なんですわ。
クラフトビール屋さんで多いのは、
いわゆる醸造責任者がいて、
その人が自分でレシピを決めるやり方です。
でも、うちの場合は
「こんなコンセプトのビールを
このタイミングで、これぐらい出したいな」
というのを先に決めて、
それに対して挙手制でコンペをやっています。
うちの醸造のスタッフが
自分でいろいろ考えたり、テストをしたりして
自分の作ったビールを提案するんです。
それで選ばれたものが、
世の中に出ていくビールになりますね。
一応、ぼくは製造責任者という立場なんですけど、
去年の秋のコンペでは見事に負けました(笑)。
そんな感じでフラットに、
和気あいあいとビール作りをしていますね。

決める時は研究開発チームと、
ぼくを含めた4・5人のメンバーで投票制にしています。
市場を意識した見方もできる人を
投票するメンバーに選んでいますが、
自分が好きか嫌いかも、票を入れる基準に含まれます。
でもその「好き」の中は、
味的にも技術的にも「ヤッホーらしい」が
含まれているということなんですよね。
「ヤッホーらしさ」については、
みんなで言語化しないようにしてるんです。
言葉にしてしまうと、その枠から出られなくなりますから。
まあ、少なくてもぼく個人が明確に思っているのは
「ちゃんとレベルの高いビールだけど、
個性があって、飲んでておもしろい」ということ。
うちのビールのイメージは、そんな感じです。
‥‥でも飲んだ人に「ぜんぜん違うよ」って思われてたら、
ちょっとショック(笑)。

2025-08-12-TUE

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  • ヤッホーブルーイングさんが放つHAZY IPA 「有頂天エイリアンズ」が発売中です。

    有頂天エイリアンズ

    森田さんいわく、「進化の最先端」である
    HAZY IPA(ヘイジー アイピーエー)が
    ヤッホーブルーイングでも発売されています。
    (HAZY IPAがどんなビールかは第4回で!)
    「ビールは苦い」をくつがえす
    トロピカルフルーツ感なのですが、
    ジュースのような甘さはないのがポイントです。
    飲んだ後、口の中がフレッシュな香りで満たされて
    吐く息までいい匂いになる気がします。
    おいしいのでおすすめです。(安木)

    ヤッホーブルーイング「有頂天エイリアンズ」