
ペールエール、IPA、ホワイトエールなどなど
クラフトビールの種類はたくさんありますが、
現在進行形で新しい種類がどんどん生まれているそうです。
種類が多くなる理由や味の違い、誕生した経緯など
ヤッホーブルーイングで製造部門責任者を務める
森田正文さんに教えてもらいました。
森田さんの元同僚、ほぼ日大友も教える側で同席します。
クラフトビールは今、「どのへん」にいるのでしょうか?
ほぼ日の安木が担当です。
- ──
- ここからは、ビアスタイル別に
飲み比べをしていきたいと思います。
まずは「ペールエール」ですが、
どんなビールなのでしょうか?
- 森田
- もともとペールエールというビアスタイルは、
イギリスで生まれたものです。
それをアメリカのクラフトブルワーが、
アメリカのホップで表現したものが
「アメリカンペールエール」という
ビアスタイルとして確立されました。
- 森田
- 特徴としてはホップの柑橘系の匂いがしっかりあって、
アルコール度数は5%から5. 5%くらい。
苦みも中くらいで、飲みやすい。
いまお出ししている弊社の「よなよなエール」も、
アメリカンペールエールです。
このアメリカンペールエールの登場で、
アメリカ産のホップが注目されて、
世界中に一気にクラフトビールのムーブメントが
広がったと言われるぐらい、
クラフトビールを語る上では欠かせない
ビールスタイルの一つですね。
- 大友
- そのアメリカンペールエールの生みの親といわれているのが
アメリカの「シエラネバダブルーイング」
っていうブルワリーです。
日本でも買えるので、見かけたらぜひ飲んでみてください。
原点を感じますよ。
- 森田
- シエラネバダブルーイングはもう、尊敬ですね。
イングリッシュペールエールを小規模で作り続けていたら、
このクラフトビールのムーブメントは
起きなかったはずですからね。
もう、イノベーションといえますよね。
あ、クラフトビールって、イノベーションなのかもね!
‥‥いや、ちょっと違うか?
- 一同
- (笑)。
- 森田
- そんなペールエールですけど、味はどうですか?
- 芹澤
- グレープフルーツみたいな香りがして、好みです。
- 新井
- よなよなエール、改めて飲むとおいしい。
- 森田
- ありがとうございます!
- ***********
- ──
- 次はIPA(アイピーエー)ですね。
- 芹澤
- IPAか。
わたし、IPAはちょっと強くて苦手なんですよね。
- 森田
- それは、アルコール度数が強く感じるんですか?
- 芹澤
- はい。度数もですし、苦みも強くて。
香りは好きなんですけど‥‥。
- 森田
- なるほど。
新井さんはどうです?
- 新井
- ぼくは好きです。
苦ければ苦いほど、おいしいって思いませんか?
- 大友
- 大人ですね!
- 新井
- ぼくはコーヒーが好きなので、
その感覚に近いのかもしれません。
IPAの苦みは、ホップなんですか?
- 大友
- はい、ホップ由来です。
- 新井
- アルコール度数と苦みって、関係していないんですか?
- 森田
- 基本的には関係ないですね。
ビールの苦みはアルコールではなくて
ホップを入れた量と、煮込んだ時間によるものなので。
アルコールは高くなればなるほど、
甘くてとろっとした味になってくるので、
バランスをとる意味で、苦みを入れることはあります。
そういう意味では相関しているかもしれないです。
- ──
- へえー、知りませんでした。
- 大友
- IPAは「インディアペールエール」の略で、
頭文字をとってIPAと呼ばれています。
もともとはペールエールなんですけど、
イギリスで生まれたペールエールを
当時植民地だったインドへ船で運ぼうとした時に
そのまま持っていくと腐っちゃうんで、
防腐効果のあるホップをいっぱい入れたのが
始まりと言われています。
だからすごくホップの香りや苦味が強いのが特徴です。
クラフトビールの中でいま一番つくられているのがIPAで、
アメリカのクラフトビール市場では
全体の約40%といわれています。
- 森田
- IPAを作ってないところの方が珍しいくらい、
ほとんど全ての醸造所が作っていますね。
- ──
- 「なんとかIPA」というのもよく見かけますが、
IPAがどんどん派生しているということでしょうか?
- 森田
- はい。
ブルワーたちが、IPAをイノベーションしているんです。
IPA自体、最初にアメリカで生まれた時は
もっと甘くて、もっとアルコールが強くて、
もっと苦いビールだったんです。
けど、それでは飲みにくいので、
「ホップの香りだけを立たせたらどうなるか」とか
「アルコール度数を下げたらどうなるか」といった
模索の道が始まりました。
その結果、IPAがいろんな方向に進化していきました。
たとえば「セッションIPA」という
アルコール度数を下げたIPAがあったり、
「ブリュットIPA」という糖分をゼロにしたIPAがあったりとか。
このあとHazyIPAっていうのがでてくると思いますが、
それもIPAの派生系のひとつです。
いろんなブルワーが様々にチューニングした結果、
いろんなIPAが生まれましたが、どのIPAにしても
「アメリカンホップを楽しむ」っていう
軸だけは、ずらしていないんです。
- 芹澤
- その軸があるものが、IPAってことですか?
- 森田
- そうです。
それだけがIPAをIPAとして
つなぎとめている唯一の個性な気がしますね。
(つづきます)
2025-08-11-MON
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森田さんいわく、「進化の最先端」である
HAZY IPA(ヘイジー アイピーエー)が
ヤッホーブルーイングでも発売されています。
(HAZY IPAがどんなビールかは第4回で!)
「ビールは苦い」をくつがえす
トロピカルフルーツ感なのですが、
ジュースのような甘さはないのがポイントです。
飲んだ後、口の中がフレッシュな香りで満たされて
吐く息までいい匂いになる気がします。
おいしいのでおすすめです。(安木)ヤッホーブルーイング「有頂天エイリアンズ」
