
ペールエール、IPA、ホワイトエールなどなど
クラフトビールの種類はたくさんありますが、
現在進行形で新しい種類がどんどん生まれているそうです。
種類が多くなる理由や味の違い、誕生した経緯など
ヤッホーブルーイングで製造部門責任者を務める
森田正文さんに教えてもらいました。
森田さんの元同僚、ほぼ日大友も教える側で同席します。
クラフトビールは今、「どのへん」にいるのでしょうか?
ほぼ日の安木が担当です。
- ──
- ビールの種類について質問です。
市販には「なんとかラガー」 や
「 一番搾り」などがありますが、
それらのビールとクラフトビールは
なにが違うんでしょうか?
- 森田
- 原料やつくり方の点でいうと、ほぼ一緒です。
ビールの原料はどちらも
水、麦芽、酵母、ホップの4つが基本ですが、
その種類や量が違うんです。
あと、冒頭でもちらっとお話しましたが、
クラフトビールは「ローカル」なところを
すごく大切にしています。
だから、種類が増えているんですよね。
- 大友
- ビールの種類のことを
「ビアスタイル」というんですけど、
大体150種類くらいあります。
その一部を図にすると、こんな感じです。
まずビールは大きく「エール」 と、
「ラガー」 の2種類に分けられるんですよ。
- 大友
- 日本国内でいわゆる「ビール」っていう形で
大手メーカーさんが流通しているものは
「ラガー」の中の、「ピルスナー」が多いです。
クラフトビールの方は、「エール」が圧倒的に多いです。
ラガーとエールでは酵母の種類がちがって、
ラガーは「ラガー酵母」、
エールは「エール酵母」っていうのを使っています。
- ──
- ラガー酵母と、エール酵母はなにがちがうんですか?
- 森田
- うーーん。
5周ぐらい回ってかんたんに言いますけど、
発酵温度が違います。
味の違いをとても「ありてい」に言うなら、
エールの方が、 フルーティーな香りが強い。
ラガーの方が香りが比較的少なめで
スッキリしたビールが多い傾向があります。
でも、クラフトビールブルワーたちって
発酵温度なんかもいろいろ変えているので
一概には言えないんですけどね。
- ──
- では、「エール」がクラフトビールで
「ラガー」はクラフトビールではない、
と覚えておくと良さそうですね。
- 森田
- いや、それがそうでもない。
- 大友
- うんうん。
ラガーの仲間の「ピルスナー」であっても、
小さい醸造所で作っている場合は、
クラフトビールになります。
- 森田
- さらに例をあげると、
ラガービールの中にユズを入れて、
「ユズラガー」っていうのを
作っているブルワーもあるんですが、
これはクラフトビールですね。
エールかラガーでは、
クラフトかどうかは、分けられないね〜。
- 大友
- 分けられないですね〜。
- 一同
- へえ〜!
- 新井
- ビールの分類は、どうやって決まったんですか?
- 森田
- 以前「ビアハンター」と呼ばれる
イングランド出身の人がいたんですよ。
マイケル・ジャクソンっていうんですけど。
- 一同
- マイケル・ジャクソン!?
- 森田
- あ、同姓同名の他人です。
もう亡くなってしまいましたが、
そのマイケル・ジャクソンというおじさんが
世界中のビールを飲み回って、
ビアスタイルを分類していきました。
- 新井
- 伝説のマイケル・ジャクソンさんが
ビール業界にもいたんですね。
- 森田
- そう。
そのマイケルさんが作った基準に基づいて
アメリカの「ブルワーズアソシエーション」
という団体が、毎年ビアスタイルを統廃合したり、
定義を決めたりしているんですけど、
そこの定義に照らし合わせて
自分たちのビールの種類を決めている団体が
多いんじゃないかな。
でも、そんなの全く無視で、
どう見てもIPAなのに「ペールエールです」
って言ってるところも、無いわけではないですね。
- 芹澤
- ビアスタイルを公表するのに
審査などはないんですか?
- 森田
- 意外とないんですよねー。
日本の酒税法で定義しているのは
「ビールか、発泡酒か、その他のビールか」。
ビアスタイルについての定義はないんです。
- 大友
- だから、全く新しいビアスタイルを
作り出す人もいますよね。
- 森田
- いるいる。
「なんじゃこりゃ!」みたいなのね(笑)。
- ──
- 知りませんでした。
- 新井
- おもしろい。

醸造家の個性はどの工程に出るんですか?
うーん。
人それぞれかもしれないなぁ。
麦芽にすごく力をいれるつくり手もいますし、
ホップを重視するつくり手もいますし、
麦芽とホップは基本でいいから、
工程をきれいにつくりたいっていう
つくり手もいると思います。
藤原ヒロユキさんが書いたビールに関する本の中に、
「ビールを開栓するときは、ブルワーからの
お手紙をひらくようなもんだ」という
一文があるんです。
ビールを開栓したときには、
「どんなメッセージを感じ取ってほしくて
このビールを作ったんだろう」
って考えて飲むのもたのしみ方の
ひとつかもしれないですね。
どの工程を大切にしているかが、
なんとなく味から想像できますから。
ぼくの場合はまずひとつは、
きれいにビールが作りたいと思っています。
「きれい」というのは、
衛生面はもちろんですけど、
「味がクリーンであること」ですね。
あと、ぼくはホップが大好きなんで、
ホップの香りがきれいにのっているビールが
作りたいです。
うち(ヤッホーブルーイング)の
ビールを飲むときに、
「ホップの香りはどうだろう?」と注目してもらうと、
イメージがつくかもしれません。
(つづきます)
2025-08-10-SUN
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森田さんいわく、「進化の最先端」である
HAZY IPA(ヘイジー アイピーエー)が
ヤッホーブルーイングでも発売されています。
(HAZY IPAがどんなビールかは第4回で!)
「ビールは苦い」をくつがえす
トロピカルフルーツ感なのですが、
ジュースのような甘さはないのがポイントです。
飲んだ後、口の中がフレッシュな香りで満たされて
吐く息までいい匂いになる気がします。
おいしいのでおすすめです。(安木)ヤッホーブルーイング「有頂天エイリアンズ」
