ペールエール、IPA、ホワイトエールなどなど
クラフトビールの種類はたくさんありますが、
現在進行形で新しい種類がどんどん生まれているそうです。

種類が多くなる理由や味の違い、誕生した経緯など
ヤッホーブルーイングで製造部門責任者を務める
森田正文さんに教えてもらいました。
森田さんの元同僚、ほぼ日大友も教える側で同席します。

クラフトビールは今、「どのへん」にいるのでしょうか?
ほぼ日の安木が担当です。

前へ目次ページへ次へ

第6回  個性が光る!フルーツビールとスタウト

大友
次は「フルーツビール」です。
今日用意したのは、
フランボワーズ果汁が入っているビールです。

芹澤
すごい色!
味もいままでと、ぜんぜん違う。
新井
これはもはや、ジュースですね。
大友
フルーツビールは基本的に
フルーツを使っているビールのことなので、
どんなビアスタイルのビールに加えても
フルーツビールといいます。
IPAを試飲したとき、
グレープフルーツのような香りを感じたかと思いますが、
実際にIPAにグレープフルーツをいれたものもあるんです。
そんなふうに、元々のビールの個性を活かした
フルーツビールもあって、おもしろいですよ。
今回は「ランビック」というビアスタイルのビールに
果汁を入れていますね。
森田
ランビックは野生に漂っている
乳酸菌と野生酵母をつかって発酵させているので、
酸っぱいのが特徴です。
酵母にはビール醸造のために培養されたものもあれば、
野生で採れる酵母を使うこともあるんです。
大友
「ランビック」って言われたら、
酸っぱいビールと覚えておくといいですね。
新井
ランビックって、
フルーツビールのことだと思っていました。
大友
実は、違うんですよ。
フルーツが入っていないランビックもあるんですけど、
それも酸っぱいです。
時々、めちゃくちゃ好きな人がいます。
森田
またちょっと混乱する話ですけど、
ホワイトエールにもオレンジピールやコリアンダーを
入れるんですけど、昔からそうやって作ってたから
ホワイトエールはフルーツビールとは
言わないんですよね。
芹澤
それにしても、本当に飲みやすい。
ほぼジュースだ。
大友
飲みやすいですよね。
私もビールを飲み始めた時、フルーツビールが好きでした。

大友
最後は黒ビールです。
今回は「スタウト」というビアスタイルを紹介します。
香りを嗅いでいただくと、
コーヒーのような香ばしい香りがするのが特徴です。
でも、飲んでみると苦みが強いわけではなくて
酸味を感じますよね。
黒ビールにもいくつか種類がありますが、
「ポーター」とよばれる黒ビールのほうが、
苦みが強いと言われています。

芹澤
黒ビールは、なぜ黒いんですか?
森田
この黒は、麦芽による黒さですね。
麦芽は一回乾燥させて
発芽を止めて使用するんですけど、
乾燥させるときの焦がし具合で色がつきます。
かなり深煎りした麦芽を入れると、黒くなるんです。
大友
けっこう黒く見えますけど、
黒い麦芽はどのくらい使われているんですか?
森田
実はそんなにつかっていないんですよね。
これもたぶん全体の麦芽の量の
10%から20%くらいだと思います。
のこりは普通の麦芽をつかっていることが多いです。
ぜんぶ真っ黒の麦芽をつかっているわけではないです。
芹澤
へえ、それでもこんなに黒くなるんだ。
味もコーヒーみたい。
大友
黒ビールが好きな人の中には
コーヒーを飲むときみたいに、
ケーキやアイス、チョコなどと一緒に
飲んでいる人も多いです。
新井さんは、コーヒーがお好きですけど
スタウトはどうですか?
新井
これは‥‥そんなに好きじゃない‥‥。
大友
あ、だめでしたか(笑)。
森田
ローストした麦芽のスモーキーな感じや、
焦げたにおいをあまり好まない人もいます。
──
ビールが黒くなったのも、イノベーションの結果ですか?
森田
それは、逆ですね。
ビールがだんだん黒くなって
黒ビールになったのではなくて、
元々ビールは黒いものだったんですよ。
最初は、麦芽を乾燥させるときに
どうしても黒く焦げてしまっていたんです。
その後、麦芽をあまり焦がさずに乾燥させる技術ができて、
はじめて色の薄いビールが作れるようになった。
そうやってできたのが最初に試飲した
「ペールエール」なんですけど、
「ペール」って英語で「淡色の」って意味ですよね。

新井
なるほど。
森田
時代の中でだんだん進化していって、
色がどんどん薄くなり、苦みがなくなり、
でも香りが強くなった、っていうのが
今のクラフトビールの大きな流れですね。
でも、ぼくは黒ビールが大好きですけどね。
ガブガブ飲みますよ(笑)。
**********
──
今日はこちらで最後になりますが、
生徒の2人は今日やってみてどうでしたか?
芹澤
よなよなエール(ヤッホーブルーイング)が、
おいしいなって思いました。
森田
えー!
芹澤さんがまた、仕込みみたいなことを言っている(笑)。
芹澤さんは弊社の社員でしたっけ?
──
ほんとうに、仕込みではありません(笑)!
芹澤
一番印象的だったらのは、HazyIPAでした
初めて飲んだのでびっくりしました。
でも、やっぱりよなよなエールが好きでした。
──
ビアスタイルで選ぶとしたら、どれがいいですか?
芹澤
ホップの香りが好きだということがわかったので、
IPAなんだろうなって思うんですけど。
IPAのアルコール度数が低いやつを選ぶか、
ペールエールでホップに力入れてるやつ
を買えばいいのかなと思いました。

大友
最初に芹澤さんが好きだと話していた
COEDOの「毬花」はセッションIPAなので、
まさに苦みも度数も低めなIPAですよ。
芹澤
あ、そういうことだったのか!
森田
素晴らしいですね。
今日の授業をやった甲斐があります。
大友
100点満点の感想ですね。
新井さんはどうでした?
新井
色々教えていただきながら飲めて
すごい楽しかったなって思います。

大友
どれが一番好きでしたか?
最初はセゾンがお好きとおっしゃっていましたね。
新井
うーん。
いろいろ試飲しましたけど、
今日はIPAがおいしく感じたのが、発見です。
大友
うんうん。
いろんな種類のビールを飲み比べると、
新しい発見があって、たのしいですよね。
森田
私はこの業界に長いですが、ビアスタイルの違いや
クラフトビールとはそもそも何なんだということとか、
一般のみなさんにお伝えしきれてないことが
いっぱいあるんだなっていう気づきになりました。
──
クラフトビールの定義がこんなに難しいのが意外でした。
森田
いや〜複雑なんですよ、 本当に。
かんたんに説明なんてできない。
だからぼくは、分かりやすく言うのって、
いやなんですよ(笑)!

クラフトビールのおすすめの飲み方は?

ぼくは家で飲むときは
いろんなビアスタイルを常備して、
その日の晩ごはんや気分に合わせてセレクトしています。
居酒屋に飲みに行くときは、
クラフトビールは逆に、飲まないです。
大手さんのビールをジョッキで飲みますね。
あと、クラフトビールを飲まないのは、
生魚が食卓に出てるとき。
食後にナッツかなにかを引っ張ってきて、
別でやっちゃいますね。

ビールの温度も、全然気にしない派です。
弊社(ヤッホーブルーイング)としては、
13度が一番飲み頃ですって
おすすめはしてますけども、
ぶっちゃけ、めんどくさい(笑)。
ちゃんと冷やしておきたいし、
冷たいビールをごくごく飲みたい時もあるので。
ビールを常温で保管されている方も
多いと思うんですけど、ビールはなまものです。
けっこう、味が劣化するので、
冷蔵庫にできるだけ入れた方が
おいしさが長持ちしますよ。

クラフトビールのおすすめの飲み方で言えば、
仲間と一緒に飲むのが、楽しくないですか?
一人で飲むと、あまり種類も飲めないから
複数人でいろいろ頼んで、
味くらべするといいんですよ。
「今日のスーパードライは、どう!?」とは
あんまりやらないと思うので(笑)、
クラフトビールならシェア飲みがおすすめです。

(おわります)

2025-08-14-THU

前へ目次ページへ次へ
  • ヤッホーブルーイングさんが放つHAZY IPA 「有頂天エイリアンズ」が発売中です。

    有頂天エイリアンズ

    森田さんいわく、「進化の最先端」である
    HAZY IPA(ヘイジー アイピーエー)が
    ヤッホーブルーイングでも発売されています。
    (HAZY IPAがどんなビールかは第4回で!)
    「ビールは苦い」をくつがえす
    トロピカルフルーツ感なのですが、
    ジュースのような甘さはないのがポイントです。
    飲んだ後、口の中がフレッシュな香りで満たされて
    吐く息までいい匂いになる気がします。
    おいしいのでおすすめです。(安木)

    ヤッホーブルーイング「有頂天エイリアンズ」