
シャンソンって、フランスのふるい歌ですよね?
なーんて思い込んでいたら、もったいない。
それは、日本の歌謡曲の中にも流れ込んでいて、
いまもたまらない魅力を放っています。
たとえば、中森明菜さんの「難破船」の中で。
なかにし礼さんのつくった多くの歌の中で。
シャンソンのDNAみたいな何かが、
ぼくらの大好きな歌の中で、生きているんです。
そのあたりの尽きせぬテーマについて、
「神野美伽さんが歌う はじめてのシャンソン」
をやろうと言い出した画家の笹尾光彦さんと
糸井重里を囲んで、おしゃべりしました。
担当は「はじめてのシャンソン」係の奥野です。
- ──
- 今回のシャンソンの会は、
笹尾さんが「場をつくってくれた」ことが、
やっぱり大きなことでした。 - なぜなら、シャンソンの会をやろうなんて、
自分の中からは、
たぶん一生、出てはこなかったと思うので。
- 糸井
- うん。
- ──
- ご自身は「場」を用意して、
そこで、ぼくらにチャンスを与えてくれる。
大人っぽいというか、
かっこいい仕事だなあって思うんです。 - 糸井さんも、
そういうことをずっとやってきてますよね。
- 糸井
- きみらも、やったらいいじゃないか。
- ──
- はい(笑)、ですよね。やりたいです。
- でも、おいそれとはできないっていうのか、
その「場」自体が
楽しくなかったらダメじゃないですか。
そういう意味では、
今回の「シャンソン」は、おもしろいです。
取材すればするほど、知れば知るほど。
- 糸井
- ぼくはともかく、笹尾さんは
画家になる前は
クリエイティブディレクターだったわけで、
そういう仕事をしてきた人だから。 - こういうつくりものも、
言ってみれば、お手のものなんでしょうし。
- ──
- 今回に限らず、プロジェクトの開始時点で、
こういうものをつくってきてくれます。 - それを見てぼくらは
「こんなふうにできたらいいなあ!」って、
その気にさせられてしまう(笑)。
- 笹尾
- やっぱり、ぼくのあたまの中にあるものを
かたちにしたいんですね。
とくに、チームに何かを伝えるときには、
こういうものがあると助かるんですよ。
- ──
- 今回も、コンサート当日に会場に来る
お客さんのようすまでイメージしてくれて、
スカーフでもくつしたでも、
どこか赤いものを身につけてきてくれたら
素敵だよね‥‥とか。
- 糸井
- ああ、だからつくってるんだ。
- ──
- はい、そうなんです。
- 今回の会のオリジナルグッズとして、
笹尾さんの絵を用いたスカーフとくつしたを、
つくっています。
- 笹尾
- こうして神野さんと「ほぼ日」のみんなに
シャンソンの会をやったらって言って、
迷惑ばっかりかけていて、
実際、大変なことをしてると思うんだけど、
ここ数年、
「ほぼ日」といろんな仕事をやってみて、
その経験から、
とにかく、「ほぼ日」なら、
新しい時代のシャンソンの会をつくれると、
本気で思ったから提案したんです。
- 糸井
- できることできないことは当然ありますが、
そうやって
一緒に遊びたいって思ってもらえることは、
うれしいことだよね。
- ──
- はい。
- 笹尾
- いやいや、逆ですよ。
- だって、40歳以上も離れている人たちに、
こっちが遊んでもらってる感じ。
- 糸井
- ぼくもそうです(笑)。
- ──
- 先日、糸井さんに
今回のことについてメールをしたときに、
こういうお返事が来たんです。 - 場をつくる‥‥ということについて
「渦巻きの始点をつくる。
薪をくべる。
温度を下げないようにあっためる。
ときどき笑わせる」って。
- 笹尾
- いいなあ。
- ──
- はい、すごくいいなあと思いました。
- 糸井
- ともすれば、
チャンチャンバラバラみたいな派手なことを
やり続けるのがクリエイティブだと
思い込んでしまうんだけど、
でも、じつは、
火を絶やさないようにたんたんと薪をくべて、
場の温度を下げないようにすることも、
ものすごくクリエイティブな仕事なんだよね。 - この鍋で、すごい料理をつくろう‥‥なんて
腕まくりして言わなくたって、
火の燃えている場所から誰かに手招きしたら、
焼き芋を持ってくる人がいるかもしれない。
- ──
- なるほど、そこに火さえ燃えていれば。
- 糸井
- いい意味で「他人をあてにする」っていうか、
「時間をあてにする」っていうか。 - 火の番だけはしておこうよって、
それだけで、
じつは、案外いろんなことができるんですよ。
- ──
- 糸井さんとしては、そういう仕事については、
いつくらいからやってる感じなんですか。
- 糸井
- ずっと人んちに出かけていく仕事だったから、
「ほぼ日」をはじめてからじゃない?
- ──
- でも、たとえば「萬流コピー塾」とか。
- 糸井
- うん、それはそれでやってたけど、
あれもやっぱり「人んち」でやってたんだよ。
編集長が変われば、企画も終わるし。 - 『ビックリハウス』の「ヘンタイよいこ新聞」
にしたって、
ずっとは続けていけないよねっていうことで、
最後はイベントをやっておしまいにした。
いわば「生命の短さ」が、
ぼくのやることの特徴だったんだけど、
やっぱり「永遠の生命」がほしくなるわけで。
- ──
- ああ‥‥。
- 糸井
- だから「ほぼ日」をやってはじめて、
場をつくって、火を絶やさないようしながら、
「仲間」とか「時間」をあてにする、
そっちのおもしろさが
わかるようになったんじゃないかなあ。 - 種類のちがうことだけど、
長くやったほうが、やっぱり、おもしろいよ。
とんでもないとこまでいくから。
- ──
- そうですか。
- 糸井
- だから、いまは、ぼくが途中で口を出して
ぼくのサイズになっちゃうのが嫌で、
見守っておこうって仕事が、いっぱいある。 - 今回のシャンソンの会だって、
半歩、外側から見てたほうがいいんだよね。
たぶん。火の番はしておくんで。
- ──
- ありがとうございます。
- 糸井
- そうやって、あたためられた場所で
偶然に出会うものは、ぜんぶ「いい」から。
- ──
- はい。
- 糸井
- 今日の話で言えば、
やっぱり「自由」ということじゃないかな。 - これまでの「シャンソン」から自由になる。
もっと言えば、
みんなは笹尾さんからも自由になっていい。
それぞれ自分自身からも自由になっていい。
いろんな場面で
「ここ、こうしちゃおうか!」なんてことが、
偶然のような起これば起こるほど、
この会は、きっと、おもしろくなると思うよ。
- ──
- はい。
- 笹尾
- 神野さんの歌を聴いて、会場を出るとき、
みんなが、
自由な気持ちになっていたら最高だよね。 - そんな会になったら、いいなあ。
(つづきます)
2025-10-22-WED
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神野美伽さんが歌う
はじめてのシャンソン演歌歌手の神野美伽さんが、はじめて
「シャンソンだけのコンサート」を開きます。
期日は11月15日(土)、会場は赤坂の草月ホール。
大切にしたいのは「自由」ということ。
自由に「歌」を楽しむ会にできたらと思ってます。
この下で歌唱予定曲を発表していますが、
おそらく聴き覚えのある曲が多いはず。
帰り道に「オー・シャンゼリゼ」を歌いたくなる、
そんなコンサートにしたいと思ってます。
どうぞ、お気軽に遊びに来てくださいね。
