一昨年、三國さんとMiknitsチームは、
イギリス、フランス、スウェーデンなど
ヨーロッパへ買い付けの旅に出ました。
三國さんはその風景を、
しばらく「夢」にみるほどだったそう。
渋谷PARCOで開催される
「編みものけものみち 三國万里子展」では、
これらを販売するマーケットを開くことに。
ヴィンテージに宿る夢に
手繰り寄せられるように買い付けたアイテムが
数百点ならびます!
三國さんと、一緒に買い付けをしたシブヤと森、
以前イギリス旅を共にした山川も一緒に、
買い付けたものやヨーロッパヴィンテージの
魅力について語り合いました。

>三國万里子さんプロフィール

三國万里子(みくに まりこ)

1971年、新潟生まれ。
3歳の時、祖母から教わったのが編みものとの出会い。
早稲田大学第一文学部仏文専修に通う頃には、
洋書を紐解き、ニットに関する技術と
デザインの研究を深め、創作に没頭。
大学卒業後、古着屋につとめヴィンテージアイテムにも魅了される。
いくつかの職業を経た後に、ニットデザイナーを本職とし、
2009年、『編みものこもの』(文化出版局)を出版。
以降、書籍や雑誌等で作品発表を続ける。
2011年のコンテンツ「三國万里子の編みものの世界」でほぼ日に初登場。
以来、編みものキットやプロダクトのデザインを手がけ活動の幅をさらに広げる。
2012年より「気仙沼ニッティング」のデザイナーを務める。
ニットを軸に活躍されていますが、かねてより心を寄せていた
ヴィンテージアイテムへの見識を活かして、2017年以降は
ヨーロッパでの買い付けや、展示販売もおこなう。
今冬には福岡の美術館「三菱地所アルティアム」にて大規模個展を開催。

〈著作物〉

『編みものこもの』(2009年)
『編みものワードローブ』(2010年)
『きょうの編みもの』(2011年)
『冬の日の編みもの』(2012年)
『編みものともだち』(2013年)
『アラン、ロンドン、フェアアイル 編みもの修学旅行』(2014年)
『ミクニッツ  大物編 ザ・ベスト・オブ Miknits 2012-2018』
『ミクニッツ  小物編 ザ・ベスト・オブ Miknits 2012-2018』(2020年)
(以上すべて文化出版局)

『うれしいセーター』(2016年)
『スール』(2017年)
『I PLAY KNIT』
(以上すべてほぼ日)

 

〈関連コンテンツ&ウェブサイト〉
『三國万里子の編みものの世界。』(2011年)
『三國さんがミトンを編む一日。』(2011年)
『目薬ポーチで編みもの入門。』(2012年)
『いいものを編む会社 ─気仙沼ニッティング物語』(2012年)
『三國万里子さんのお店「Miknits」』(2013年~)
『気仙沼ニッティング』(2012年~)
『うれしいセーター』(2016年)
三國万里子さんがロンドンとエジンバラでみつけたもの。(2017年)
MY FAVORITE OLD THINGS』
『編んで、着て、ときどきうろちょろするわたし』
『アッコちゃんとイトイ』
mizudori通信 

 

〈これまでの三國万里子さんのお店「Miknits」〉
Miknits2013
Miknits2014
Miknits2015
Miknits2016
Miknits2017
Miknits2018
Miknits2019
Miknits2020

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01 しばらく夢にみてしまう場所。

シブヤ
イギリスとパリ、スウェーデンに
買い付けに行ったのは、
2019年の夏の終わりでしたね。
一日でいくつものお店を回りました。
三國
約2週間、物をたくさん見ましたね。
それぞれが「自分もほしい」と
思うようなものを選んで、
買えたように思います。
山川
ご時世もあって、
なかなかお披露目できなかったものがやっと、
みなさんにお見せできますね。
それにしてもたくさん……!

シブヤ
おそらく、数百点あるんじゃないかと思います。
山川
ひゃー、それはすごい。
一昨年はどのような場所に
買い付けに行ったんでしたっけ?
シブヤ
印象的だったのは、
イギリスのケンプトン・パーク内の競馬場で開催される
「Sunbury Antique Market」
(サンバリー・アンティーク・マーケット)です。
ヨーロッパ最大規模らしく、
たくさんのバイヤーさんが
こぞって集まるような場所でした。
訪れたのが朝の6時ごろ。
ロンドン中心部からだと1時間半くらいかかる
郊外で開催されるのですが、
早く行かないと良いものがなくなってしまうと聞いて、
始発電車を待たずにタクシーで向かいました。
三國
日の出前だったから
真っ暗いロンドンの街をタクシーで駆け抜けて、
空が次第にピンク色になっていくのを眺めながら
向かったことを覚えています。
シブヤ
開場前に着いたのに、もうそこには
たくさんのバイヤーさんたちが押し寄せているんです。
開場の6時半になると、一斉に買い物がスタート。
ダッシュでお目当ての店に向かう方もいて、
その光景がなんとも忘れられないです。
山川
良いものがそこに集まるんですね。
小物、ジュエリー、洋服、
食器や本などあらゆるものがありました。
三國
私が尊敬するバイヤーの
レズリー・ヴァーリンダーさんにも会いましたね。
シブヤ
会いましたね!
レズリーさんはヴィンテージの
フェアアイルの子どもセーターを、
買っていました。
山川
3人の買い付けの様子については
こちらでも読みましたが、
それぞれ違った良さのあるものを
買っていましたよね。
三國
個々のアンテナに引っかかったもの、
心にグッときたものを、
自由に買いました。
ストライクゾーンの広い順だと、
シブヤ、三國、森なんですよ。
特に、もりっこちゃんはなかなか物を買わない。
ほんとうに彼女の心に響いたものだけを、
少しずつ買っていました。
そうだったかもしれないですね(笑)。
でも、イギリスで見たものたちは、
昔の物としての魅力をすごく感じました。
なので、心はホカホカでした!
シブヤ
もりっこがいい物を見つけたときの表情が、
とってもよかったです。
私と三國さんは、ジュエリーのお店に
食いつきましたね。
三國
あそこはよかった。
マダムが店番をしていて、
ガラスのショーケースの中に
ヴィクトリア朝の
ジュエリーが置いてあるんです。
日本のアンティークショップでは
見かけないようなものだけど
値段も割と買いやすくて、
品もよくて、
いくつも購入した記憶があります。
シブヤ
お店の前を通るたびに
次々可愛いジュエリーを発見してしまって、
お会計を3回ぐらいしました(笑)。
三國
ヴィンテージフェアに行った後、
しばらくその夢をみました。
また行きたいと思って。
山川
わあー。
三國
それくらいおもしろいところでした。
山川
たくさんあるお洋服は、
どこで購入したんですか?
主にロンドンで開催されていた、
「Clerkenwell Vintage Fashion Fair
(クラーケンウェル・ヴィンテージファッション・フェア)」で
購入した印象があります。
シブヤ
クラーケンウェルは現地では有名な
ヴィンテージマーケットらしく、
『Vogue』などハイファッション誌でも
オススメされているような場所です。
ファッション好きの方には、
ぜひ行っていただきたいですね。
三國
今はヴィンテージといっても「90年代」くらいの
歴史が浅いこともあるんだけれど、
クラーケンウェルで私が手にとったものは
新しくても「70年代」など。
昔の、いい時代のものがたくさんありました。
シブヤ
ニットでも、春夏に重ね着できる
クロシェ編みのワンピースなど、
いいものを持って帰ってきましたよ!
山川
印象的だった場所はありますか?
シブヤ
私は、レズリーさんのお店
「Tin Tin Collectables」に感動しました。
『ハリー・ポッター』や『メリーポピンズ・リターンズ』に
衣装や小物を提供されているだけあって、
物語から抜け出してきたかのようなお店でした。
レズリーさん自身もファンタジックで、
クラシックなお洋服とメガネが似合う
素敵なおじさまなんです。

シブヤ
日本だと古着は若い人が持つイメージですけど、
イギリスは幅広い世代の方、階級の方が
着ている印象でした。
三國
ヴィンテージという言葉が意味するものが、
日本とヨーロッパでは違うんでしょうね。
とくにイギリスの方々は、
おしなべて古いものが好きだと思う。
シブヤ
生活に根づいている感じがしました。
山川
もりっこが選んだ、
ピンクのニットキャップも素敵。
それは、パリで買ったものです。
店主が独特な雰囲気の方で、
ヴィンテージではないのですが
作家さんの作品に惹かれて買いました。
シブヤ
ヴィンテージ品以外の雑貨なども
素敵なものが多くて、
たくさん買った印象があります。
山川
あと、あみぐるみもたくさんありますね。
売っちゃうのがもったいないくらい、かわいい!

三國
「The Treasure Trove」というお店のあみぐるみですね。
『編みもの修学旅行』の取材で初めて行った、
チャリティーショップです。
ここは他のチャリティーショップと違って、
手を使って、物を作って売ることで
その人の暮らしを助ける仕組みです。
基本的には、手作りの洋服や編みものが
豊かに揃っている珍しい場所です。
物が、一つ一つすてきですよね。
編み手さんの熱意を感じます。
三國
そう。楽しんで作っていらっしゃる雰囲気が、
物から出ているんですよね。
クオリティーがとても高くて、
デザインセンスもいい。
夢のようなお店だなって思います。
手編みのものにお店で巡りあうことって
なかなかないんだけれど、
ここは常時、たくさん置いてありました。
シブヤ
2017年の生活のたのしみ展で、
買い付けたものを販売した時にも
手編みの人形たちは
とても人気でした。
今回は事前にリクエストをして、
ハリネズミは色違いや
ひと回り小さいストラップタイプなど
グレードアップ。
フェアアイル柄のテディベアや、
スコットランドらしいバグパイパーなど、
充実のラインナップです。
三國
何の動物だろうって思うものが、
いいよね(笑)。
山川
コアラやクマや犬や、
何かわからないものや……
どれも味わい深いですね!

(つづきます。)

2021-02-04-THU

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  • 福岡の三菱地所アルティアムで開催されていた
    三國万里子さんの20年間の作家生活をたどる展覧会
    「編みものけものみち 三國万里子展」が、
    渋谷PARCO8階の『ほぼ日曜日』でも巡回開催します。
    会期は2021年2月7日(日)から2021年2月28日(日)まで。
    近年10年の三國さんの代表的なニット作品をはじめ、
    影響を受けた書籍、ヴィンテージアイテム、
    「巣穴」とよばれる仕事場をイメージしたスペースなど
    たっぷりと展示。まるで物語に迷い込んでいくように、
    三國さんが生み出した作品と幅広い関心を
    たのしんでいただけます。
    また、三國さんおすすめの古書店の出店や、
    なかしましほさんとコラボレーションしたクッキーなど
    お買い物も充実していますよ。
    展示に関する、
    ミロコマチコさんインタビュー
    アルティアムのディレクター山田さんとのインタビュー
    合わせてどうぞ。

    *ほぼ日曜日では、感染予防・感染症拡大防止のため、
    対策をおこなっています。こちらを確認のうえご来場ください。
    みなさまのご協力、よろしくお願いいたします。