HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
ひと粒の麦から。
        皆川明(ミナ ペルホネン)✕糸井重里

        オリジナルのテキスタイルをつかった、ていねいな服作りで
        たくさんの人に愛されるブランド「ミナ ペルホネン」が
        今年で20周年をむかえました。
        ほぼ日手帳とのコラボも、5年目となります。
        
        20周年を記念して
        東京・青山のスパイラルホールで開催された
        展覧会「1∞ミナカケル」展では
        デザイナーの皆川明さんと糸井重里との
        トークイベントが開かれました。
        
        ほぼ日手帳が始まった「きっかけ」や
        服をつくる仕事でずっと大切にしてきた考え方など
        じっくり、自由に語り合ったふたりのトークを
        全5回でお届けします。

	第1回
	「ほしいね」から始まったんです
皆川
本日のトークイベントには
糸井重里さんをお呼びしました。
会場
(拍手)
糸井
よろしくお願いします。
皆川
糸井さんとは、年に1回ぐらいですかね、
お食事をさせていただく機会があって。
その時に話してることは、
あとから何度も反芻するような
僕にとって大事なことが多いので、
それを、こういう場でいろんな人が聞けたら
おもしろそうだなと思って。
あと、僕が個人的に
質問してみたいこともありますので。
糸井
はい。
皆川
毎年、糸井さんやほぼ日のスタッフのかたと
ほぼ日手帳を一緒にやらせて
いただいているんですが、
ほぼ日手帳は、2002年にはじめて発売してから
もう15年目だそうですね。
糸井
そうですね。
皆川
で、このあいだ、
ほぼ日手帳にかかわる人が集まって
「今年の手帳はどうだった」って振り返る
ミーティングに呼んでいただいたんですよね。
そこに集まったのが
作る人と、デザインする人と、販売する人と‥‥
糸井
運ぶ人も。
皆川
物流の人もそうですね。
そういった、手帳にかかわるみなさんが集まって‥‥
途中で手品のショーがあったりして。
すごくたのしい時間でした。
糸井
ほぼ日手帳は
ほんとうにたくさんの人たちに
かかわっていただいているものなので、
「今年は誰とどんなことをして、
こんな盛り上がりがあったんですよ」って
みんなでたのしく振り返る機会にしているんです。
皆川
そのほぼ日手帳、最初は何万部でしたっけ。
糸井
1万2000部ぐらいだったと思います。
皆川
それがいま、50万部以上にもなって。
ふつう、数が増えたり、規模が大きくなると
だんだん合理化されて、無味乾燥になって、
仕事がつまんなくなってくるとか
あるかと思うんですね。
糸井
なりますよね。
皆川
でも、ほぼ日手帳は、
逆にどんどんたのしくなって
可能性が増えているっていうのを感じるんです。
そのミーティングでも、
今年の、このカバーは人気だったねとか。
糸井
(会場に向かって)
売上げとか発表するんです。
皆川
そのたのしい感じが、
僕には、すごく希望に感じられて。
単に「手帳を作りたい」という思いだけじゃなくて、
誰と、どうやって作ろうかとか
お客さんにどうやって届けていこうかとか、
そういうものすべてを含めて
ほぼ日手帳なんだなという気がしています。
あの、15年前に始めたときは、
何をどこまで想像していたんですか。
糸井
僕はもともと、先のこととか見てないんですよ。
「こうなりたいから、いまこう動く」っていうのが
あんまり得意じゃない。
フリーでやってる時代が長かったので
芸者さんみたいに、お座敷がかかれば
踊りにいくわけです。
皆川
ええ。
糸井
手帳を出したときも、
「いま、おもしろいことがしたい」
って、いつも思っていました。
ほぼ日手帳は「ほしいね」から始まったんです。
自分たちが「こういうのあったらいいな」っていう。
皆川
なるほど。
糸井
でも、やろうとして気がついたのは、
手帳って、続けないといけない商品だったんですよね。
来年も使おうと思ってたのに、
なくなってるっていうのは困るわけです。
皆川
手帳ですからね。
糸井
うちの若い人たちが、素人なのに
老舗の手帳売り場におうかがいして
「これ、置いてもらえませんか」っていう話を
したんですね。
そうしたら、「手帳をナメてはいかん」みたいな感じで
やわらかな説教をされたらしいんです。
「手帳っていうのは
最低でも何年かはやめられないものですよ」と
正しいアドバイスをしてくれたんです。
落ち込んだけど、その通りだな、と。
皆川
ああ。
糸井
だけど同時に、でもな、と。
出すことだけは決めようって思いました。
皆川
そのコメントをもらったことで
続けようっていう意思が
より強まったんでしょうか?
糸井
どうだろう。
続けるっていうルールが守れてはじめて
手帳を作る権利があるなと思ったので、
売れようが売れるまいが作ろうと、
わりと当たり前のこととして、決意しましたね。
1年目、2年目は、売れる売れないよりも
ただ使ってくれる人がいるっていうことを
喜ぶだけっていう状況でした。
皆川
そうだったんですね。
糸井
決意した理由はもうひとつあります。
ほぼ日手帳は1年目から、
手帳が180度パタンと開く
糸かがり製本にしていたんですが
手帳が完成した打ち上げ会場で、
糸かがりの業者の人が言ったんですよ。
「これは1年間使うと、
壊れるかもしれないですね」って。
皆川
うーん、そのタイミングで、ですか‥‥。
糸井
みんながごきげんになってる時にね。
たとえば辞書とか、たくさん使ってると、
パラパラ壊れてくじゃないですか。
たぶん彼は、そんなふうに愛着を持って
使い込んでもらえたら嬉しいね
っていう意味で、言ったんじゃないかと
思うんですよね。
でも僕らはびっくりして‥‥。
勉強家の辞書が壊れてるのは知ってるけど、
手帳がどんどんバラバラになっていったら
大変なことになる。
皆川
ええ、大変なことに。
糸井
そこから急きょ、また作ったんですよ。
つまり、壊れないのを作ってほしいって言って。
当時はすべて、
ほぼ日のウェブサイトでの販売でしたから、
買ってくれた人たち全員の住所に、
作り直した手帳を送りました。
皆川
すごいですね。
糸井
だから1年目は、じつは倍の数を作ってるんですよね。
最初にきつい目に遭っちゃったんです。
それで、逆に決意が固まったっていうところが
あるかもしれませんね。
皆川
それはもう、
お座敷に呼ばれたらって行くっていう
「個人」じゃなくて
完全に「メーカー」としての気持ち、精神ですよね。
糸井
そうですね。
個人のときっていうのは、仕事のお断りもしたし
引き受けた仕事で、降りるわって
言ったこともあります。
「ええいっ、やめてやる」って、
一心太助のように、マグロを投げつけて
帰ってくることもできたわけです。
皆川
(笑)
糸井
でも、いつからか「チームで生きる」っていうことを
本気で考えるようになったんです。
それは、手帳を出した年には
もうすでに思っていましたね。
何ででしょうね、人が変わったんですよ。
いや、変わるんですよね、役割が変わると。
皆川さんだって、もともとは
いまの皆川さんのような人だったとは思えないし。
皆川
違うと思います。
それまでの部分はいまでも自分のなかにあるけれど、
「ミナ ペルホネン」のなかに入った途端に、
「ミナ ペルホネン」の自分になるような
感じはあります。
糸井
僕が、先をどうのこうのっていうことを
思うようになったのは、
「あ、死ぬぞ」って思ってからですね。
ずっと生きるわけじゃないっていうのを、
やっぱり周囲を見てると思うわけで。
ずっと生きると思ってたら、
サドンデスに持ち込めるわけですよ、いろんな試合を。
9回の裏で負けてても、
10回に逆転して勝つんだ、みたいな。
皆川
ええ。
糸井
だけど、12回で試合が終わるっていうことがある。
それを意識するようになって、
チーム全体の力をつけるっていうことを考えましたね。
手帳を作った時は、
「死ぬぞ」までは思わなかったけど、
みんなはやり直しがきくかもしれないが
俺はきかないんだっていう、
そういう気持ちにはなってましたね。
皆川
僕も徐々にそう感じています。
糸井
え? まだ、だいぶ若いじゃないですか。
皆川
思い始めた頃には、そうなってる‥‥。
糸井
皆川さんは、心が老けてますよねぇ(笑)。
皆川
このあいだも言われましたね。
糸井
先を考えるほどの年じゃないのに、
考えてるんですよね。
皆川
でも、いまの話をお聞きして、
ああ、それでいいんだと思いました。

(続きます)
2015-09-02-WED

ミナ ペルホネン
2015–2016 Autumn / Winter Collection 「コク」

「ミナカケル」展の会場では、「ミナ ペルホネン」の
アトリエ、工場、ショップで生地や服が生まれ、
お客さんのもとに届くまでの映像が展示されました。
こちらからごらんいただけます。

※「ミナカケル」巡回展は
2015年10月10日〜12月6日に長崎県美術館にて開催されます。
詳細はこちらをごらんください。

minä perhonen

デザイナーの皆川明によるファッションブランド。
1995年に「minä」を設立(2003 年より「minä perhonen」)。
2000年、東京・白金台に直営店をオープンしてから、
京都、松本、2015 年には湘南にもオープンし、現在は9店舗を展開。
ブランド名はフィンランド語で
ミナ=私、ペルホネン=ちょうちょの意味。
「蝶の美しい羽 のような図案を、軽やかに作っていきたい」という
願いが込められている。
http://www.mina-perhonen.jp

「ミナ ペルホネン」皆川明さんと糸井重里の対談は、こちらにも。

魚河岸とミシン

ほぼ日手帳2016のミナ ペルホネンのカバーはこちら

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