
升ノ内朝子さんはギリシャ・アテネに暮らす
イラストレーターです。
ほぼ日の「やさしいタオル」のデザインも
手がけてくださっているんですよ。
そんな升ノ内さん、ギリシャのすてきなところを
みなさんに知ってもらいたいと、
現地で心を掴まれた風景やできごとを
イラストに描いてくれることになりました。
遠い国から届く絵ハガキをながめるように、
いろいろ想像して楽しんでくださいね。
不定期連載です。

ギリシャの島々の中でも、
最も有名な一つであろうサントリーニ島。
もう何年も訪れていないのですが、
この島のランドマークともなっている夕陽に染まるイアの街は、
いつか描きたいと思っていた風景でした。
そんなサントリーニ島は、
近年オーバーツーリズムが問題となっています。
なんでもクルーズ船からの観光客が増えて、
日中の混雑がすごいことになっているんだとか。
とくに混雑する夏の炎天下、
建物の間の細い小道を人々がひしめきあって
歩くのもままならない、という状況は
想像するだけでもうんざりしますし、
住民の生活もさぞ不便なことでしょう。
私は行くとするならハイシーズンを避けますが、
十数年前に一度、ハイシーズンにかかる
6月の初夏に訪れたことがあります。
その時でもそれなりに混んでいましたが、
イアの小さな広場で地元の子供たちが
サッカーをして遊ぶ余裕はありました。
そんなことを覚えているのは、ちょっとした事件があったから。
それは足元に転がってきたボールを
夫が子供たちに蹴り返そうとしたところ、
ボールは思わぬ方向へ飛び、
ベンチに座っていたおばあさんのそばの壁を強打、
それを見ていなかったおばあさんは子供たちを叱りつけ、
叱られた子供たちは「(やったのは)観光客!観光客!」と
叫びながら一斉に夫を指差したので、
思わずその場を逃げ出したのでした。
まるで映画「ぼくの伯父さん」に出てきそうな1幕ですが、
そんなほのぼのした光景も
今ではきっとありえないんだろうなぁ…と想像しています。
しかしこのままではいけないと、混雑緩和のため、
今年の夏からクルーズ船の観光客に対しての課税と人数制限が始まりました。
2024年には、一日あたり最大約15,000人だった
クルーズ船からの来島客は8,000人に制限され、
夏のピーク時には一人20ユーロ(時期によって金額は変動)の税金が
課されるようになったのです。
今後もサントリーニ島が特別な場所であり続けるために、
住民の生活と観光産業のバランスがとれた
いい関係を構築していってほしいと思います。
升ノ内朝子
2025-11-28














