気がつけば季節はもうクリスマス間近、
昨夜はバルコニーからこの秋初めて暖炉の匂いがしました。
これからいよいよ冬本番というところですが、
その前に少しこの夏の話をしようと思います。
昨年の秋から途中緩急ありながらも
ずっと続いたロックダウンが解除され、
観光が再開したのは今年の5月。
今回のイラストも、その時期のことを思って描いたものです。
それからは我が世の春とでも言うような、
開放的な日々が久々に訪れました。
約半年間の秋冬のロックダウン、そして春夏の開放
(この間は多少感染者数が増加しても規制しない)というのは、
言わずもがな主に観光を意識した経済的な理由からですが、
このサイクルというのは、わりとギリシャ人の季節感と
あっているんじゃないかと思っています。
ギリシャにも春夏秋冬という季節がありますが、
日本人とは確実に違うと思うのは「秋」に対する感覚です。
日本人の私にとって、もともと一番好きな季節だったのは秋で、
街行く人がジャケットを着だすのを見ると
「ああ今年もこの季節がやってきた」と嬉しく思ったものですが、
私の周りのギリシャ人で秋が好きという人は一人もいません。
まぁそれもそのはずで、とにかくギリシャは
「夏」が圧倒的に強すぎるのです。
全国民的に海水浴という習慣が身に染みついているお国柄ですし、
なんといっても夏には長期のバカンス、夏休みがある。
そして多くのギリシャ人にとって、
そんなのんびりと楽しみのつまった
夏を終わらせる季節が「秋」なのです。
ギリシャのコロナ対策は
この夏の強みを最大限に活かしたもので、
秋冬の厳しい生活に耐え忍ぶことができたのも
夏の喜びを確保してくれているからこそだと私は思っています。
蓄電池のように夏の間に思い切り充電し、
またその次の年の夏に向けてがんばる。
この充電の機会を奪われたら、ギリシャ人は精神的に参ってしまうでしょう。
ギリシャの全般的なコロナ対策が万全とは思えていませんが、
このように夏を解放し続けるという点は、評価しています。
次回の数回では、この夏の間に訪れた場所について書くつもりです。
楽しかったことを思い出しながら、
また今来つつある耐え忍ぶ季節をやり過ごそうと思っています。
升ノ内朝子
2021-12-04