もくじ
第1回10代のときの解像度 2019-02-05-Tue
第2回周りの人がおもしろがる 2019-02-05-Tue
第3回いい子でもなく悪い子でもなく 2019-02-05-Tue
第4回ボーフラの楽観性 2019-02-05-Tue
第5回客観的に見てナンボの商売 2019-02-05-Tue

アボカドの木と暮らす日を夢見るカメラマン。食うためのしごとは、執筆と編集。

清水ミチコのつくりかた

清水ミチコのつくりかた

担当・山下雄登

第3回 いい子でもなく悪い子でもなく

糸井
清水さんは大学出たんでしたっけ?
清水
うん。家政科なんだけど、うちの田舎って大学行く以上は、
教員免許を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
糸井
へっちゃらなんだ、そういうの。
清水
へっちゃらってことはないですけど、
料理は好きだし、おもしろかった。
糸井
つまり、ドロップアウトをしてないんですよね。
清水
うん、してないです。
親に心配かけるようなことはしてない。
糸井
なのにやってることは、ずーっと‥‥(笑)
清水
もうとにかくうちの両親は、
森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
糸井
(笑)

清水
「まあまあ、もう今年でやめますから」と言って、
30年もやって。
糸井
森山良子さんを見てるとき、清水ミチコを思い浮かべるように‥‥。
清水
なっちゃうじゃないか(笑)。
糸井
なってしまう(笑)。
清水
うちの家系の話をすると、
ひいおじいちゃんにエイザブロウって人がいて。
糸井
うん。
清水
「嘘つきエイザ」って呼ばれてたの。
糸井
(笑)
清水
名誉のためとかお金のために普通は嘘をついたりするけど、
そうじゃなくて。
とにかくほんとうに自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
糸井
性欲のように(笑)。
清水
そうそうそう(笑)。息をするように。
 
お坊さんのところに行って、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」
と真顔で言って。
すると飛んで行くでしょう?
それを見て、ひとりですっごい笑ってたんだって。
「飛んでった、飛んでった」つって(笑)。
糸井
単純な嘘だね(笑)。
清水
そう。それを何回も繰り返して
ひとりで笑ってたって人が私の祖先なの。
糸井
ちゃんと「私」はいい子だったんですか。
ひいおじいちゃんは嘘つきかもしれないけど。

清水
私は、いい子でもなく悪い子でもなく、
パッとしないような子だった。
けど、やっぱり糸井さんの
「ヘンタイよいこ新聞」を高校のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』を聞いたりとかして、
だんだんそういうお笑いの世界みたいなのが‥‥
糸井
パッとしていったわけ?
清水
自分の中ではね。
ほかの人はみんな恋愛してる中で、
自分だけが『ビックリハウス』に載ったとか、
ラジオで投稿読まれたとか、
しあわせの度合いがちょっとちがう感じだった。
糸井
だけど、ラジオで読まれたり、
『ビックリハウス』に載ったりするのって、
じつはけっこうむずかしいことで。
清水
そうかな。
糸井
うん。いまやれよと言われて、載る自信、俺ないよ。
清水
ほんとうですか。
糸井
うん。
清水
へぇー。
糸井
それができちゃったわけでしょう?
清水
そんなことばっかり考えてたからね、青春時代ずっと(笑)。
糸井
ハガキ職人ですよね、いわば。
清水
そうそう。
ハガキ職人ってけっこうしあわせっていうか、
夢ありましたよね。
糸井
そうだよね。
ぼくはね、そういうお笑いが絡むようなものはできなくて。
 
むかし明治チョコレートのポエムを読んで
チョコレートをくれるみたいな番組があったんだよ。
それで、誰かが当選したって聞いて、
俺もやってみようと思ってやったら、
当たったっていうのがあって。
もし『ビックリハウス』みたいなことだったら、
俺は無理だったと思う。お笑いじゃない人だったから。
二の線だった。
清水
自分で言った(笑)。
糸井
むかしは二だったんだ。

清水
また言った(笑)。
糸井
おかしいなあ、戻ろうかな(笑)。
清水
(笑)
糸井
いまもハガキ職人みたいなのは考えればできるの?
清水
いまは無理かもしれないですね。
そういう試されるときがないから。
もう思いついたらライブのためのネタにしてるっていうかね。
そういうふうになっちゃったから。

(つづきます)

第4回 ボーフラの楽観性