もくじ
第1回糸井重里が考える清水ミチコさんの原点 2019-02-05-Tue
第2回清水ミチコさんがパッとしたときのお話 2019-02-05-Tue
第3回矢野顕子さんと清水ミチコさん 2019-02-05-Tue
第4回矢沢さんにあって糸井さんにないもの 2019-02-05-Tue
第5回清水さんが糸井さんに聞きたかったこと 2019-02-05-Tue

たなべあきこです。
編集者なんですが、いろんな方面に手を出しているタイプです。
面白いと思ったらやりたい。
猫が好きで、キジ白を一匹飼っています。
溺愛中で、何回かパソコンの上に乗るというテンプレート行動で記事を失いかけましたが、膝に乗せることはやめられません

糸井さんと清水ミチコさんの</br>雑談ときどき真面目な話。

糸井さんと清水ミチコさんの
雑談ときどき真面目な話。

担当・たなべあきこ

第5回 清水さんが糸井さんに聞きたかったこと

清水
そういえば、ここ(ほぼ日)、もう70人の規模になったって?
糸井
70何人。
清水
バイト入れると100人になるってこと?
糸井
そうだね。社員旅行に今度行くんだけど。
清水
100人で?
糸井
100人以上。
清水
どうやるの?
幹事大変ですね。
糸井
そういうのはなんとかなるの、うちは。
だって旅のしおりとか
もう1冊の単行本みたいになってるらしいよ。
清水
(笑)
糸井
本当に(笑)。
清水
バス貸し切りってことよね。
糸井
うん。仕事をする労力と同じものを
遊びにかけるから。
逆にいうと仕事の練習にもなるんで。
清水
そういうものですかね。
糸井
うんうん。だって、あなただってさ
テレビを見てて寂聴さんが何か言って面白いなぁと
思ってるのは、仕事か遊びかわかんないでしょう?
清水
そうだね(笑)。
糸井
いけるなぁと(笑)。
清水
おいしいなぁと(笑)。
糸井
おいしいなって食べてるわけだから(笑)。
多分同じようなことだと思う。
清水
そういえば、昔筋トレしてたけど、どうなったの?
糸井
いや、俺はやってないよ。
清水
もうやめた?
糸井
会員としてはまだいるよ。
いつ行ってもいいんだよ。
サボってるんだよ、ずっと(笑)。
清水
あ、そう(笑)。
私はやってるけど、単なる体力維持。
糸井
持ちをよくするため。
清水
持ちをよくするため。
あと、意外とストレス発散になるってことがよくわかった。
糸井
それは効果があるんですか、やっぱり。
清水
うん、そう思った。だってやっぱり帰り道の人は
みんな、スッキリしたーって顔してます、やっぱり。
糸井
ああ。
清水
糸井さん、なんでやめたのかなと思って。
糸井
やっぱり、社長業になったからだよ。
清水
へぇー。
糸井
「ある時間ここに拘束されてればここは自由です」
とはなってないから。
やっぱり……。
清水
ずっと忙しいってこと?
糸井
ずっと気は休まらないよね。やっぱり嫌なものだよ。

清水ミチコさん

清水
えぇー。私、今日、最終的に聞きたいと思ってたのは
糸井さん、死にたくないだろうなってことなの。
糸井
ん? 死にたくない?
清水
死にたくない。
糸井
ああ、死にたくないよ、そりゃ。
清水
当たり前か(笑)。
糸井
死んだらしょうがないとも思うし。
清水
うんうん。
でも、私のイメージの中では
少年が、貧乏生活もしてきた子が、孤独とかも知りながら
いつの間にか70人超える大会社になってたわけじゃん?
糸井
大会社じゃない(笑)。
清水
でも、すごいサクセスストーリーでもあるじゃん?
糸井
ああ、ああ。
清水
そういう人が一番怖いのって
やっぱり健康じゃなくなること、死ぬことかなって思ったの。
糸井
いや、それは別に怖いとかじゃなくて
さっきの永ちゃんのちっちゃいサイズだよ。
つまり責任があるんだよ。
それだけのことだよ。
だから、忙しいんだよ。
清水
「もうやめたい!」ってならない?
糸井
やめたいって言っちゃいけないじゃん。
清水
ああ、そうね。
糸井
(笑)
清水
そうだねえ。
糸井
そんなことを思ってるだけでも
ちょっとストレスだよね、きっと。
清水
そうね。
糸井
清水さんも、あなたの扶養家族はいるよね。
清水ミチコ事業という体系があるから、やっぱり。
だから、「私は倒れちゃいけない」っていうぐらいのことは
きっと思ってるでしょう?
清水
本番で倒れちゃいけないとは思うけど、
でも、私はやっぱり糸井さんとは
スタンスが全然違います。
糸井
そうか、うん。
でも、その色、形、大きさは違うけども、
そこは大人はみんな責任があるわけで、
子どもだったときには、それはないふりをして
生きてるわけじゃない。
清水
そうだね。
糸井
で、大人になっちゃってからはあるから
そこはもうしょうがないよね。
でも、まんざらでもないみたいなとこ
あるじゃないですか、
やっぱり。「皆さん、お元気ですか」って聞いたら
「元気でーす!」って返ってくるところが
あるじゃないですか。
清水
そうか、うん。
糸井
ただ、もう引退の準備をしながら
一生懸命やってるような状況ですよ。
やれるうちはやろうって。
清水
あ、本当?
糸井
うん。しがみつく人になったらやっぱり悪いからさ。
清水
次の世代に?
糸井
うん。得意で社長やってるわけじゃないから、俺。
もっと社長業が得意な人がやったほうがいいのかもしれないし
わかんない、それは。
本当の金儲けの種をもっとぼくにやらせなら、
早く社長をやめさせてたほうが儲かると思うんだよ。
清水
なるほど。使ったほうが。
糸井
うん。
ちょっとほったらかしにしといて
「いいのができたんだよ」っていう内の
5個に1個ぐらいが当たったりするほうが
なんか、いいような気はしてるのよ。
清水
そうかもね。
糸井
うん。そこはだから、何とも言えなくて。
こういう変な社長だからできてることもあるし
逆に言うと、あえてぼくがブレーキをかけてる部分もあるし。
だから、そこは何とも言えないんだけど
年取ったらよしたほうがいいなと思って。
清水
あ、そう?
糸井
ずっとしゃがんでたあとで立ち上がったときに
ひざが痛いもん。
清水
なるほどね(笑)。
糸井
そういう人がさ、ずっとやってちゃダメだと思うんだよね。
清水
ふーん。
糸井
清水さんは、この先どうするみたいなこと考えるの?
清水
この先どうするは考えないけど
占いの人のとこ行ったときがある(笑)。
糸井
自分で考えたくないんだ(笑)。
清水
人に頼った(笑)。
そしたら将来、車椅子に乗って芸をやってるらしく。
すごみが怖い、誰も逆らえない(笑)。
糸井
ああ。
でも、それを拍手で迎える人がいる限りは
それはOKですよね。
清水
そうかもね、出るかもね。
糸井
だから、関係なんだと思うよ。
自分としては嫌だって言っても、
そんなに喜んでくれるんだったら
車椅子に両側に龍をつけてね。
清水
すごみが(笑)。
糸井
雷様みたく、雷鳴と共に登場。
清水
笑えないです(笑)。
糸井
(笑)。「さあ、笑え!」ドワワワァー!
清水
ここだ(笑)。
ドラが鳴るっていう、すごい。
糸井
そう、そういうのもありだし。
あ、じゃ、考えたくないのはあるんだね。
清水
うん、そうですね。
でも、私、不幸になるような気がしない。
糸井
ああ。それがすべてだと思うね。
その「運悪くないし」みたいなね。
清水
うん、そうね。
糸井
ボーフラでもそうなんだよね。
清水
ん?
糸井
ボーフラでも多分そうなんだよね。
清水
ボーグルって何?
糸井
ボーフラってあの…….。
清水
あ、ボーフラ(笑)。失礼だな、この会社(笑)。
糸井
いや、あんなやつらでも
「運悪くないし」と思ってると思う。
清水
やめてよ(笑)。
糸井
いや、思ったのよ。俺、孫ができたじゃん。
で、見てるともうね、うらやましいの。
清水
あ、楽観性が?
糸井
そう。
清水
子どもって、とくにそうなんですよね。
糸井
あなたは母親やってたから知ってると思うけど
1人では生きていけないのに
一切心配しないで、フャーッとか言ってる(笑)。
清水
(笑)。そうね。
それでいて、自分でさも大きくなりましたって
顔するからね、みんな。
糸井
うん。だから、楽観性がないと
やっぱり生き物ってダメでさ。
清水
そうね。
糸井
だから、ものすごく考える子どもがいたりして
「ぼくがこの小学校に入ったとするじゃない?」とか。
清水
心配性(笑)。
糸井
「将来、今のところ勤めたいのは」とか言ったら
不幸になるぞって思わない?(笑)
清水
うん。今どきの子、えらい頭いいからね。
ちょっと心配なとこあるよね。
糸井
それよりは、なんとかなるような顔して
ニッコニコして
「おまえ、結局、俺の話聞いてないだろ」っていったら
「ごめん」みたいなほうが(笑)。
清水
(笑)。そうね、南さんみたいなね。
糸井
そう。それのほうがやっぱり生きるよね。
清水
うん。うまくいく人は大体そういう人多いからね。
糸井
大体そうですよ。
ぼくなんか、ちょっと余計に考え過ぎるほうでさ。
2人いるんですよ、ものすごく考える私と、何も考えない私が。
いつもリレーをやってるんです。
ものすごい考える私っていうのが
「本当大変なんですよ」って言いながら
さあ、本番だっていうと
考えない私のとこにバトンを渡すんです(笑)。
清水
へぇー。

糸井重里さん

糸井
おかげでなんとかなった。多分、わかりますよね。
なんか、清水さんのサクセスストーリーを
順番に語っていくような企画にはならなかったけれども(笑)。
清水
やり直して、これ(笑)。
糸井
だけどさ、俺、3年か4年前に
武道館で最初やったぐらいのときに
ああ、清水さんもボスになったんだと思ったよ。
清水
え、本当?
糸井
うん、立候補しないのにボスになった人って
一番いいなと思ったよ。
清水
ああ。
糸井
何ていうんだろう、利害関係なく集まってんじゃん。
清水
ああ、そうそう。よくわかりますね(笑)。
糸井
別に清水プロダクションに入ったわけでも
何でもないのに集まってて
そして「こうやったほうがいいかな」って意見が出たら、
「そうじゃない」って言う人が出てきてさ。
清水
うん、えらいもんでそうですね(笑)。
糸井
その場所に立つのって、なかなか大変。
清水
目指したらね、きっと大変だと思う。
糸井
目指したら大変なのに。
清水
うん、運もよかった。
糸井
で、人の世話をしてきた覚えもないじゃないですか。
清水
うん。あんまりだな(笑)。
糸井
改めてお聞きしますが(笑)。
何か「私は人の世話をしてきたんですよ」って
思ってますか。
清水
ああ、してない。でも、若い頃は思ったの。
私も永六輔さんみたいになって
新人のライブを見に行って「こうしたほうがいいよ」とか
背中を押してあげるようなおばさんになれたらいいなと思った。
けど、やっぱり自分は自分の明日で一杯一杯なのよね。
だから、人にこう背中を教えてあげるっていう人は
大したものなんだなと思った、この年になったら。
糸井
つまり、してないって。
清水
してなーい。これからもしなーい(笑)。
糸井
(笑)。
でも、「こんなんでもいいんだよね」は見せてるよね。
清水
うん、そうだね。こんなんでも大丈夫ですよって(笑)。
糸井
というのは見せてるね。
それから、あんまり、ツッパってないよね(笑)。
清水
確かに、うん。
糸井
例えば清水ミチコがゲストで
結局二言ぐらいしかしゃべんなくても
お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど
全然気にしてない(笑)。
清水
しょうがないじゃんって言って(笑)。
糸井
番が来なかった(笑)。
清水
もう終わった(笑)。
糸井
まあ、ピアノも弾くし(笑)。
清水
何かありゃ(笑)。
糸井
だから、全部アリですよねっていうのは
ちょっといいですよね。
清水
うーん。初めて客観的に自分を見たような気がした。
糸井
意識はしてないよね。
清水
うん、してない(笑)。
糸井
あ、別にいい話で終わらせるっていうテーマではないんだけど
清水さんが、いい気にならないモードを保っていられるのは
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。
清水
いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
糸井
ああ。役割としてさ、多少偉ぶってくれないと
困るんですよねって場面に呼ばれることはないですか。
清水
あ、審査員とかね?
うんうん。
糸井
それとか、新人が集まってる場所とか。
清水
ああ、そうですね、うん、あるある。
糸井
そのときは、役目として何かありますよね、当然ね。
清水
うん、そうですね。
やっぱりちょっと偉そうなほうが
その場合、収まりがいいんですよね、。
糸井
それを経験していくと、そういう人に
どんどんなっていっちゃうじゃないですか。
けっこう大勢の方々が(笑)。
清水
キャリアがあると
こんな面倒くさいことあるのねっていう思いに
なりますよね。糸井さんもそう、やっぱり?
糸井
うん。だって俺、大体どこ行っても
今、年上になってるしさ。
清水
ああ、そうかそうか。
糸井
まあ、おだてれば機嫌がいいだろうって
思われている場所に行くことはあるよね。
清水
あれ、ショックですよね。
糸井
あるよね。
で、それは自分は、そのいい気になっ……
多分なってないと思うんです。
なってないのは、なんないようにしようとしてるから
だと思ってるんです。
清水さんもなってないのはなんでかなっていうのは、
理由の一つとして
やっぱり、失われるものが大き過ぎるからだよね。
清水
ああ、そうかもね、うん。
糸井
そうなっちゃったらこれできない、
あれできないがあるよね。
清水
うん。しかも、モノマネしてる人間に(笑)、
「ちょっとつかみがね」とか言われたら
本当腹立つと思う。
糸井
大変な思いをしてきた人ほど、なりがちなイメージ。
清水
あ、そうかな。
糸井
うん。やっぱりそうしないと、守るものの大きさも
あるからやんなきゃいけないのかもしれないけど。
誰でもいい気にはなれるじゃない? 28、9だって。
清水
うんうんうん。
糸井
それを何回も機会があったろうに
逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
清水
ああ、そうね。
でも、気がつかずになってたかもしれないけどね。
糸井
ああ、なるほど。こういうとこなんだよ。
清水さんの面白さは。
 
でも、奪われるもののほうが多いよっていうのは
気づくね。
清水
うん。
糸井
大損ですよね。
清水
そうね、うん。あとやっぱりほら、
私たちは自分を客観的に見てナンボの商売だから。
糸井
ああ、そうかそうか。
「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
清水
そうそう。それもあると思う。
糸井
そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうのは
実はプロデュースの原点だね。
清水
あ、そうかね、うん。
糸井
モノマネがプロデュースの原点です。ほら、終わった。
清水
やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
糸井
いや、面白かった。
清水
面白かった。あっという間。
糸井
こういう会話は、
仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。

糸井重里さんと清水ミチコさん