糸井さんと清水ミチコさんの雑談ときどき真面目な話。
担当・たなべあきこ
第5回 清水さんが糸井さんに聞きたかったこと
- 清水
-
そういえば、ここ(ほぼ日)、もう70人の規模になったって?
- 糸井
-
70何人。
- 清水
-
バイト入れると100人になるってこと?
- 糸井
-
そうだね。社員旅行に今度行くんだけど。
- 清水
-
100人で?
- 糸井
-
100人以上。
- 清水
-
どうやるの?
幹事大変ですね。
- 糸井
-
そういうのはなんとかなるの、うちは。
だって旅のしおりとか
もう1冊の単行本みたいになってるらしいよ。
- 清水
-
(笑)
- 糸井
-
本当に(笑)。
- 清水
-
バス貸し切りってことよね。
- 糸井
-
うん。仕事をする労力と同じものを
遊びにかけるから。
逆にいうと仕事の練習にもなるんで。
- 清水
-
そういうものですかね。
- 糸井
-
うんうん。だって、あなただってさ
テレビを見てて寂聴さんが何か言って面白いなぁと
思ってるのは、仕事か遊びかわかんないでしょう?
- 清水
-
そうだね(笑)。
- 糸井
-
いけるなぁと(笑)。
- 清水
-
おいしいなぁと(笑)。
- 糸井
-
おいしいなって食べてるわけだから(笑)。
多分同じようなことだと思う。
- 清水
-
そういえば、昔筋トレしてたけど、どうなったの?
- 糸井
-
いや、俺はやってないよ。
- 清水
-
もうやめた?
- 糸井
-
会員としてはまだいるよ。
いつ行ってもいいんだよ。
サボってるんだよ、ずっと(笑)。
- 清水
-
あ、そう(笑)。
私はやってるけど、単なる体力維持。
- 糸井
-
持ちをよくするため。
- 清水
-
持ちをよくするため。
あと、意外とストレス発散になるってことがよくわかった。
- 糸井
-
それは効果があるんですか、やっぱり。
- 清水
-
うん、そう思った。だってやっぱり帰り道の人は
みんな、スッキリしたーって顔してます、やっぱり。
- 糸井
-
ああ。
- 清水
-
糸井さん、なんでやめたのかなと思って。
- 糸井
-
やっぱり、社長業になったからだよ。
- 清水
-
へぇー。
- 糸井
-
「ある時間ここに拘束されてればここは自由です」
とはなってないから。
やっぱり……。
- 清水
-
ずっと忙しいってこと?
- 糸井
-
ずっと気は休まらないよね。やっぱり嫌なものだよ。
- 清水
-
えぇー。私、今日、最終的に聞きたいと思ってたのは
糸井さん、死にたくないだろうなってことなの。
- 糸井
-
ん? 死にたくない?
- 清水
-
死にたくない。
- 糸井
-
ああ、死にたくないよ、そりゃ。
- 清水
-
当たり前か(笑)。
- 糸井
-
死んだらしょうがないとも思うし。
- 清水
-
うんうん。
でも、私のイメージの中では
少年が、貧乏生活もしてきた子が、孤独とかも知りながら
いつの間にか70人超える大会社になってたわけじゃん?
- 糸井
-
大会社じゃない(笑)。
- 清水
-
でも、すごいサクセスストーリーでもあるじゃん?
- 糸井
-
ああ、ああ。
- 清水
-
そういう人が一番怖いのって
やっぱり健康じゃなくなること、死ぬことかなって思ったの。
- 糸井
-
いや、それは別に怖いとかじゃなくて
さっきの永ちゃんのちっちゃいサイズだよ。
つまり責任があるんだよ。
それだけのことだよ。
だから、忙しいんだよ。
- 清水
-
「もうやめたい!」ってならない?
- 糸井
-
やめたいって言っちゃいけないじゃん。
- 清水
-
ああ、そうね。
- 糸井
-
(笑)
- 清水
-
そうだねえ。
- 糸井
-
そんなことを思ってるだけでも
ちょっとストレスだよね、きっと。
- 清水
-
そうね。
- 糸井
-
清水さんも、あなたの扶養家族はいるよね。
清水ミチコ事業という体系があるから、やっぱり。
だから、「私は倒れちゃいけない」っていうぐらいのことは
きっと思ってるでしょう?
- 清水
-
本番で倒れちゃいけないとは思うけど、
でも、私はやっぱり糸井さんとは
スタンスが全然違います。
- 糸井
-
そうか、うん。
でも、その色、形、大きさは違うけども、
そこは大人はみんな責任があるわけで、
子どもだったときには、それはないふりをして
生きてるわけじゃない。
- 清水
-
そうだね。
- 糸井
-
で、大人になっちゃってからはあるから
そこはもうしょうがないよね。
でも、まんざらでもないみたいなとこ
あるじゃないですか、
やっぱり。「皆さん、お元気ですか」って聞いたら
「元気でーす!」って返ってくるところが
あるじゃないですか。
- 清水
-
そうか、うん。
- 糸井
-
ただ、もう引退の準備をしながら
一生懸命やってるような状況ですよ。
やれるうちはやろうって。
- 清水
-
あ、本当?
- 糸井
-
うん。しがみつく人になったらやっぱり悪いからさ。
- 清水
-
次の世代に?
- 糸井
-
うん。得意で社長やってるわけじゃないから、俺。
もっと社長業が得意な人がやったほうがいいのかもしれないし
わかんない、それは。
本当の金儲けの種をもっとぼくにやらせなら、
早く社長をやめさせてたほうが儲かると思うんだよ。
- 清水
-
なるほど。使ったほうが。
- 糸井
-
うん。
ちょっとほったらかしにしといて
「いいのができたんだよ」っていう内の
5個に1個ぐらいが当たったりするほうが
なんか、いいような気はしてるのよ。
- 清水
-
そうかもね。
- 糸井
-
うん。そこはだから、何とも言えなくて。
こういう変な社長だからできてることもあるし
逆に言うと、あえてぼくがブレーキをかけてる部分もあるし。
だから、そこは何とも言えないんだけど
年取ったらよしたほうがいいなと思って。
- 清水
-
あ、そう?
- 糸井
-
ずっとしゃがんでたあとで立ち上がったときに
ひざが痛いもん。
- 清水
-
なるほどね(笑)。
- 糸井
-
そういう人がさ、ずっとやってちゃダメだと思うんだよね。
- 清水
-
ふーん。
- 糸井
-
清水さんは、この先どうするみたいなこと考えるの?
- 清水
-
この先どうするは考えないけど
占いの人のとこ行ったときがある(笑)。
- 糸井
-
自分で考えたくないんだ(笑)。
- 清水
-
人に頼った(笑)。
そしたら将来、車椅子に乗って芸をやってるらしく。
すごみが怖い、誰も逆らえない(笑)。
- 糸井
-
ああ。
でも、それを拍手で迎える人がいる限りは
それはOKですよね。
- 清水
-
そうかもね、出るかもね。
- 糸井
-
だから、関係なんだと思うよ。
自分としては嫌だって言っても、
そんなに喜んでくれるんだったら
車椅子に両側に龍をつけてね。
- 清水
-
すごみが(笑)。
- 糸井
-
雷様みたく、雷鳴と共に登場。
- 清水
-
笑えないです(笑)。
- 糸井
-
(笑)。「さあ、笑え!」ドワワワァー!
- 清水
-
ここだ(笑)。
ドラが鳴るっていう、すごい。
- 糸井
-
そう、そういうのもありだし。
あ、じゃ、考えたくないのはあるんだね。
- 清水
-
うん、そうですね。
でも、私、不幸になるような気がしない。
- 糸井
-
ああ。それがすべてだと思うね。
その「運悪くないし」みたいなね。
- 清水
-
うん、そうね。
- 糸井
-
ボーフラでもそうなんだよね。
- 清水
-
ん?
- 糸井
-
ボーフラでも多分そうなんだよね。
- 清水
-
ボーグルって何?
- 糸井
-
ボーフラってあの…….。
- 清水
-
あ、ボーフラ(笑)。失礼だな、この会社(笑)。
- 糸井
-
いや、あんなやつらでも
「運悪くないし」と思ってると思う。
- 清水
-
やめてよ(笑)。
- 糸井
-
いや、思ったのよ。俺、孫ができたじゃん。
で、見てるともうね、うらやましいの。
- 清水
-
あ、楽観性が?
- 糸井
-
そう。
- 清水
-
子どもって、とくにそうなんですよね。
- 糸井
-
あなたは母親やってたから知ってると思うけど
1人では生きていけないのに
一切心配しないで、フャーッとか言ってる(笑)。
- 清水
-
(笑)。そうね。
それでいて、自分でさも大きくなりましたって
顔するからね、みんな。
- 糸井
-
うん。だから、楽観性がないと
やっぱり生き物ってダメでさ。
- 清水
-
そうね。
- 糸井
-
だから、ものすごく考える子どもがいたりして
「ぼくがこの小学校に入ったとするじゃない?」とか。
- 清水
-
心配性(笑)。
- 糸井
-
「将来、今のところ勤めたいのは」とか言ったら
不幸になるぞって思わない?(笑)
- 清水
-
うん。今どきの子、えらい頭いいからね。
ちょっと心配なとこあるよね。
- 糸井
-
それよりは、なんとかなるような顔して
ニッコニコして
「おまえ、結局、俺の話聞いてないだろ」っていったら
「ごめん」みたいなほうが(笑)。
- 清水
-
(笑)。そうね、南さんみたいなね。
- 糸井
-
そう。それのほうがやっぱり生きるよね。
- 清水
-
うん。うまくいく人は大体そういう人多いからね。
- 糸井
-
大体そうですよ。
ぼくなんか、ちょっと余計に考え過ぎるほうでさ。
2人いるんですよ、ものすごく考える私と、何も考えない私が。
いつもリレーをやってるんです。
ものすごい考える私っていうのが
「本当大変なんですよ」って言いながら
さあ、本番だっていうと
考えない私のとこにバトンを渡すんです(笑)。
- 清水
-
へぇー。
- 糸井
-
おかげでなんとかなった。多分、わかりますよね。
なんか、清水さんのサクセスストーリーを
順番に語っていくような企画にはならなかったけれども(笑)。
- 清水
-
やり直して、これ(笑)。
- 糸井
-
だけどさ、俺、3年か4年前に
武道館で最初やったぐらいのときに
ああ、清水さんもボスになったんだと思ったよ。
- 清水
-
え、本当?
- 糸井
-
うん、立候補しないのにボスになった人って
一番いいなと思ったよ。
- 清水
-
ああ。
- 糸井
-
何ていうんだろう、利害関係なく集まってんじゃん。
- 清水
-
ああ、そうそう。よくわかりますね(笑)。
- 糸井
-
別に清水プロダクションに入ったわけでも
何でもないのに集まってて
そして「こうやったほうがいいかな」って意見が出たら、
「そうじゃない」って言う人が出てきてさ。
- 清水
-
うん、えらいもんでそうですね(笑)。
- 糸井
-
その場所に立つのって、なかなか大変。
- 清水
-
目指したらね、きっと大変だと思う。
- 糸井
-
目指したら大変なのに。
- 清水
-
うん、運もよかった。
- 糸井
-
で、人の世話をしてきた覚えもないじゃないですか。
- 清水
-
うん。あんまりだな(笑)。
- 糸井
-
改めてお聞きしますが(笑)。
何か「私は人の世話をしてきたんですよ」って
思ってますか。
- 清水
-
ああ、してない。でも、若い頃は思ったの。
私も永六輔さんみたいになって
新人のライブを見に行って「こうしたほうがいいよ」とか
背中を押してあげるようなおばさんになれたらいいなと思った。
けど、やっぱり自分は自分の明日で一杯一杯なのよね。
だから、人にこう背中を教えてあげるっていう人は
大したものなんだなと思った、この年になったら。
- 糸井
-
つまり、してないって。
- 清水
-
してなーい。これからもしなーい(笑)。
- 糸井
-
(笑)。
でも、「こんなんでもいいんだよね」は見せてるよね。
- 清水
-
うん、そうだね。こんなんでも大丈夫ですよって(笑)。
- 糸井
-
というのは見せてるね。
それから、あんまり、ツッパってないよね(笑)。
- 清水
-
確かに、うん。
- 糸井
-
例えば清水ミチコがゲストで
結局二言ぐらいしかしゃべんなくても
お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど
全然気にしてない(笑)。
- 清水
-
しょうがないじゃんって言って(笑)。
- 糸井
-
番が来なかった(笑)。
- 清水
-
もう終わった(笑)。
- 糸井
-
まあ、ピアノも弾くし(笑)。
- 清水
-
何かありゃ(笑)。
- 糸井
-
だから、全部アリですよねっていうのは
ちょっといいですよね。
- 清水
-
うーん。初めて客観的に自分を見たような気がした。
- 糸井
-
意識はしてないよね。
- 清水
-
うん、してない(笑)。
- 糸井
-
あ、別にいい話で終わらせるっていうテーマではないんだけど
清水さんが、いい気にならないモードを保っていられるのは
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。
- 清水
-
いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
- 糸井
-
ああ。役割としてさ、多少偉ぶってくれないと
困るんですよねって場面に呼ばれることはないですか。
- 清水
-
あ、審査員とかね?
うんうん。
- 糸井
-
それとか、新人が集まってる場所とか。
- 清水
-
ああ、そうですね、うん、あるある。
- 糸井
-
そのときは、役目として何かありますよね、当然ね。
- 清水
-
うん、そうですね。
やっぱりちょっと偉そうなほうが
その場合、収まりがいいんですよね、。
- 糸井
-
それを経験していくと、そういう人に
どんどんなっていっちゃうじゃないですか。
けっこう大勢の方々が(笑)。
- 清水
-
キャリアがあると
こんな面倒くさいことあるのねっていう思いに
なりますよね。糸井さんもそう、やっぱり?
- 糸井
-
うん。だって俺、大体どこ行っても
今、年上になってるしさ。
- 清水
-
ああ、そうかそうか。
- 糸井
-
まあ、おだてれば機嫌がいいだろうって
思われている場所に行くことはあるよね。
- 清水
-
あれ、ショックですよね。
- 糸井
-
あるよね。
で、それは自分は、そのいい気になっ……
多分なってないと思うんです。
なってないのは、なんないようにしようとしてるから
だと思ってるんです。
清水さんもなってないのはなんでかなっていうのは、
理由の一つとして
やっぱり、失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
-
ああ、そうかもね、うん。
- 糸井
-
そうなっちゃったらこれできない、
あれできないがあるよね。
- 清水
-
うん。しかも、モノマネしてる人間に(笑)、
「ちょっとつかみがね」とか言われたら
本当腹立つと思う。
- 糸井
-
大変な思いをしてきた人ほど、なりがちなイメージ。
- 清水
-
あ、そうかな。
- 糸井
-
うん。やっぱりそうしないと、守るものの大きさも
あるからやんなきゃいけないのかもしれないけど。
誰でもいい気にはなれるじゃない? 28、9だって。
- 清水
-
うんうんうん。
- 糸井
-
それを何回も機会があったろうに
逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
- 清水
-
ああ、そうね。
でも、気がつかずになってたかもしれないけどね。
- 糸井
-
ああ、なるほど。こういうとこなんだよ。
清水さんの面白さは。
でも、奪われるもののほうが多いよっていうのは
気づくね。
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
大損ですよね。
- 清水
-
そうね、うん。あとやっぱりほら、
私たちは自分を客観的に見てナンボの商売だから。
- 糸井
-
ああ、そうかそうか。
「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
- 清水
-
そうそう。それもあると思う。
- 糸井
-
そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうのは
実はプロデュースの原点だね。
- 清水
-
あ、そうかね、うん。
- 糸井
-
モノマネがプロデュースの原点です。ほら、終わった。
- 清水
-
やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
-
いや、面白かった。
- 清水
-
面白かった。あっという間。
- 糸井
-
こういう会話は、
仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。