- 糸井
-
「清水さんって、どうだったの?」みたいなこと、
あんまり話してないんだよ。
アッコちゃん、矢野顕子とは案外ね、
しゃべってることあるんだよ。
人生の深淵について語ったりしてるんだ、たまには。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
そうなの。
例えば一緒に気仙沼から帰ってくるときとか。
おれが寝ちゃうの知ってるから、
うちのマネージャーは縦に席取ってくれるの。
アッコちゃんは寝ない人らしくて、
隣の空いてる席に「ちょっといい?」って言ってきて、
ふつうにちゃんとした話をするんだ。

- 清水
- へぇえええー。
- 糸井
- 音楽の技術に絡むようなこととかね。
- 清水
- そんなことも話すの?
- 糸井
- 話す。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
たとえば清水さんだったらすぐわかると思うけど、
上原ひろみと共演したあとに
アッコちゃんが足を痛めた話って知ってる?
- 清水
- 知らないです。なんで足なの?
- 糸井
-
ペダルを、ものすごいガンガン、
ふだん使わないぐらいに踏むから。
- 清水
- えぇええー?
- 糸井
- そうすると、足の筋肉おかしくなっちゃったみたいな。
- 清水
-
カッコいい(笑)。
やっぱり、ちがうね。
- 糸井
- すごいだろ?(笑)
- 清水
- すごい。
- 糸井
-
そんなことから、いろいろ話を聞いていったりとかさ。
あるいは、戦略じゃないんだけど、
同じことやってるとつまんないから、
こういうこと考えてるだとか、
急に「あの本読んだ」みたいなことだとか。
- 清水
- 脈絡なく。
- 糸井
-
うん。ひとつのこう、何ていうんだろうな、
事業家として発想してること、
アッコちゃんにはやっぱりあるよね。
- 清水
- え、意外。そうですかね、へぇー。
- 糸井
-
お金儲けとかじゃなくてね。
たとえばサッカーやってる人がサッカー界をどうしていくか
考えるじゃないですか。
あるいはこのチームをどう立て直すかとか。
そういうことを、アッコちゃんはずいぶん考えてるよね。
- 清水
- ああ……。
- 糸井
-
みんなが思ってる以上に、矢野顕子って人は、
ものすごく考えてるんだってことがよくわかるよ。
それはきっとね、清水さんが見ても同じなんだと思うけど。
- 清水
-
とにかく汚れない人ですよね、矢野さんって。
たとえば石川さゆりさんと何回か一緒に仕事してるけど、
『天城越え』みたいな演歌は絶対、やらないもんね。
自分の世界じゃないものはね、上手に身を離すというか。
- 糸井
-
そうだね。
それはやっぱりね、中学生から、何ていうんだろう、
ひとりで生きてきたところを持ってる人だから、いわば。
- 清水
- あ、中学でしたっけ、上京してプロになったの。
- 糸井
-
いや、高校からです。
高校からだけど、その前から絶対、
もうすでにそういう部分があったと思う。
- 清水
-
ああ。なんかの本に、書いてあったな。
中学のときに、家帰って宿題をしてから、
詩の世界に没頭していたって。
- 糸井
-
その頃から、ある意味ひとりで生きてきたんだと思うよ。
ミチコさんはどんな子どもだったの?
大学まで勉強したんだっけ?

- 清水
-
うん。家政科に通ってた。
うちの田舎って短大とか大学行く以上は、
教師免許状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- へっちゃらなんだ、そういうの。
- 清水
-
へっちゃらってことはないですけど、
でも、料理は好きだし、面白かった。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
- なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
- 清水
-
もう本当、とにかくうちの両親は、
森山良子さんの「ざわわ」のモノマネをやめろって(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
-
「まあまあ、もう今年でやめますから」
って言って30年もやって(笑)。
- 糸井
-
ご両親も、森山良子さんを見てるとき、
清水ミチコを思い浮かべるように……(笑)
- 清水
- なっちゃうじゃないかって(笑)。
- 糸井
- なってしまう(笑)。

- 清水
-
でも、うちの家系は、私のひいおじいちゃんが
エイザブロウって名前なんだけど、
「嘘つきエイザ」って呼ばれてて。
- 糸井
- うん(笑)。
- 清水
-
ふつうは自分の名誉とかお金のために
嘘をついたりするけど、
そうじゃなくて、
本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
- 糸井
- 性欲のように嘘つきな欲(笑)。
- 清水
-
そうそうそう。息をするように嘘を(笑)。
お坊さんのところに会いに行って、
むかしはお坊さんってすごい位置の高い人なんだけど、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」
とか言うの。
真顔で言うと、お坊さんも慌てて飛んで行くでしょう?
それを見て、1人ですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」つって(笑)。
- 糸井
- 単純な嘘だね(笑)。
- 清水
-
そう。
それを何回も何回も繰り返して、
ひとりで笑ってたって人が、私の祖先なの(笑)。
- 糸井
-
おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、
清水さんはちゃんといい子だったんですか。
- 清水
-
うん。私は、いい子でもなく悪い子でもなく、
パッとしないような子だったけど、
やっぱり糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とか
そういうものを高校のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』聞いたりとかして、
だんだんそういうお笑いの世界みたいなのを……
ほかの人はみんな恋愛してるなかで、
自分だけが「ビックリハウス」に載ったとか、
ラジオで投稿が読まれたとか、
そういうのがうれしくて。
幸せを感じるポイントがちょっと違ってた。
- 糸井
-
だけど、ラジオで選ばれたり、
「ビックリハウス」載ったりするのって、
実はけっこう難しいことで。
- 清水
- そうかな。
- 糸井
-
うん。
いま、やれと言われて載る自信、ないよ。
- 清水
- 本当ですか。
- 糸井
-
うん。
それができちゃったわけでしょう?
- 清水
-
あ、でも、そんなことばっかり考えてたからね。
青春時代ずっと(笑)。
- 糸井
- え、いつも考えればできるの?
- 清水
-
今はもう、でも、無理かもしれないですね。
そういう試されるときがないから。
もう思いついたらネタにしてるっていうかね、
ライブのための。そういうふうになっちゃったから。
謎かけが自然とできちゃう人もいるし、
あるんでしょうね、きっと個性が。
- 糸井
- できないんだよ、おれ(笑)。
- 清水
- 普通できないんじゃない? やっぱり(笑)。
- 糸井
-
「写真でひと言、面白いことを」って言われたら、
どうですか?
そういうテレビ番組にゲストで呼ばれたら。
- 清水
-
いや、全然無理、全然無理です、
やっぱりああいうことって。
できない。全然できない。私はやっぱり耳で聞いて‥‥
- 糸井
-
じゃ、清水さんのあの、見ている人を面白がらせるのは、
なにあれ。
- 清水
-
私は、やっぱり耳で聞いたことを自分なりに、
「こういうふうに感じました」っていうことを出すと、
ちがっててもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
-
昨日、そうだ、明日清水さんに会うんだなと思って、
なにかひとつ「これを思ったんだよね」ってことを
言いたいなと思って発見したのが、
「『私はこう感じてます』っていうことをしてるんだね」
ってことだったの。

- 清水
-
あ、本当?
当たってます(笑)。
- 糸井
-
ねえ。で、それはなぜなのか。
お風呂に入りながら考えたんだけど。
清水さんは、批評してないんだよ、全然。
- 清水
- あ、うれしい。
- 糸井
-
つまり、いいだの悪いだのなにも言ってなくて、
その真似してる対象の人が
「私にはこう感じられちゃってますよ」っていう(笑)。
- 清水
-
あはは。そうかも。
でも、うん、さすが。
- 糸井
- ねえ。それって芸になるっていうか(笑)。
- 清水
- (笑)。どうなんだろうね、うん。
- 糸井
-
通信販売をする瀬戸内寂聴さんのモノマネとか
あるじゃないですか。
- 清水
- はい(笑)。
- 糸井
-
本物はあのとおりにはしてないんだけど、
「私にはそう見えてますよ」っていうだけでしょう?
- 清水
- そうですね、うん。
- 糸井
-
で、いいとか悪いとか、
ひとつも言ってないんですよ。
- 清水
-
うん。
あんまり、いい悪いは関係ないかもね。
- 糸井
-
ねえ。たとえばある芸能人がいて、
まあ、おおむね強気なことを言ってるっていうのは
みんなが感じてることだけど、それをモノマネで
「私にはあなたのこと、すごく強気なことを言ってる
面白い人として見えちゃってますよ」っていう(笑)。
- 清水
-
(笑)。
いまの見えてるその人の、
背中を押すというかね。
- 糸井
-
本人は悪気があるとかないとかのことを
全然言うつもりはないんですけど、
こう見えてるんですよね(笑)。
- 清水
- たしかに、うん。
- 糸井
-
そうするとお客さんが、
「そう見えてる、そう見えてる」って(笑)。
- 清水
-
「あるある。そうそう」って、
共感の人が多いでしょうね、きっとね。
- 糸井
-
共感ですよね。
モノマネする相手にツッコミ過ぎないし、
立ち直れないようなことしないじゃないですか(笑)。
- 清水
- そうかも(笑)。
- 糸井
-
モノマネだから、そういうふうに表現できるわけで、
文章で書いてもつまんないよね。
- 清水
- うん、そうだと思います。
- 糸井
-
それ当たり前か。
でも、文章は文章で面白いんですよ。
ぼく、清水さんの文章を
「みんな、このくらい書けるようになりなさい」って
社内で乗組員に言ったことありますよ。
言っては悪いですけど、
文章の修業をしたつもりは全然ないわけだから。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
-
「修業したつもりのない人が
こんな文章を書けるっていうことに、
もっと、おののいてください」って。
- 清水
- わあ、うれしい。頑張ろう。
- 糸井
- ご本人は、文章はなんだと思ってんの?
- 清水
-
ブログなんかはやっぱり、
1日、寝る前に、こういうふうだったってことを書くと
スッキリして寝られるので、トイレみたいな感じですかね。
排泄(笑)。
- 糸井
-
ほう。
でも、なにも思わないで生きてたら、
書く段階になって書けないじゃないですか。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
-
だから、たとえば、
アシスタントの子が気が利くなあって思ったから、
そのこと書けるわけじゃない?
- 清水
- うん。
- 糸井
- 思ってる分量は多いよね。
- 清水
-
うん、きっと多いと思う。
高校のときに、もう自分の面白ノートというのがあって、
それにエッセイを書いて、
「書きましたけど、どう? 読む?」みたいな感じで
クラスとかでノートを回して、
読んでくれた人が笑ってると、もうすごい幸せみたいな。
- 糸井
- 周りの人が面白がるみたいなのが原点。
- 清水
- あ、そうですね。

(つづきます)