もくじ
第1回自分が幸せを感じる点を見つけた 2019-02-05-Tue
第2回思っている分量が、人よりも多い 2019-02-05-Tue
第3回世界をとらえる解像度と、表現と 2019-02-05-Tue
第4回みんなちょっとずつ、責任を背負っている 2019-02-05-Tue
第5回「こう見えているよ」をにぎりしめて 2019-02-05-Tue

フリーランスのライター・編集者。ひとの人生に触れるインタビューが好き。琵琶湖の近くと生まれ育った首都圏、二つの拠点を行ったり来たりしています。

人生のおもしろさは、どこにある?</br>清水ミチコ×糸井重里

人生のおもしろさは、どこにある?
清水ミチコ×糸井重里

担当・菊池百合子

第5回 「こう見えているよ」をにぎりしめて

糸井
3年か4年前、清水さんが武道館で公演をやったときに、
「ああ、清水さんもボスになったんだ」と思ったよ。
清水
ええ、本当?
糸井
うん。立候補しないのにボスになっている人って、
一番いいなと思った。
仲間がさ、利害なんて関係なく集まってるじゃん。
清水
ああ、そうそう。
よくわかりますね(笑)。
糸井
清水プロダクションに入ったわけでもないのに集まって、
「こうやったほうがいいかな」って言ったら
「そうじゃない?」って言う人がいる、
みたいになってるでしょ。
清水
うん、ありがたいもので(笑)。
糸井
その場所に立つのって、なかなか大変なことでさ。
清水
目指したらね、きっと大変だったと思う。
運もよかった。
糸井
で、人の世話をしてきた覚えもないじゃないですか。
清水
うん(笑)。って、あんまりだな(笑)。

糸井
では改めてお聞きしますが(笑)、
「私は人の世話をしてきたんですよ」って思っていますか。
清水
いや、してないね。
 
でもね、若い頃は思っていたの。
私も新人のライブを見に行って、
「こうしたほうがいいよ」とか
背中を押してあげるおばさんに
なれたらいいなと思ったけど。
 
やっぱり私には、自分の今日で手一杯なのよね。
だから、誰かに教えてあげられる人は
大したものなんだな、って。この年になってようやく思った。
糸井
つまり、清水さんは人の世話をしてない。
清水
してなーい。これからもしなーい(笑)。
糸井
でも、「こんなでもいいよね」は見せてる。
清水
うん、そうだね。
こんなでも大丈夫ですよって(笑)。
糸井
それから、あんまり意地を張ってないよね(笑)。
お笑いが本職の人だと気にするんだけど、
清水ミチコがゲストなのに二言しかしゃべらなくても、
全然気に‥‥(笑)。
清水
しょうがないじゃん、ってね(笑)。
糸井
出番が来なかったら、そのときにはまあ
ピアノも弾くしいいか、って(笑)。
清水
何かあれば弾きますね(笑)。
糸井
全部アリですよ、っていうのは、いいですよね。
なんでも受け止めるというか。
 
あまり嫌じゃなければ、来る仕事は全部引き受けますよ、
ってことしてるんですね。
清水
そうですね、うん。

糸井
そうやって、いい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思っているからですか?
清水
いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
糸井
役割としてさ、多少偉ぶってくれないと困るんですよね、
って場面に呼ばれることはない?
新人が集まっている場所とか。
清水
ああ、そうですね、あるある。
糸井
そのときは役目として。
清水
やっぱりちょっと偉そうなほうが、
その場合おさまりがいいはずなんですよね。
糸井
で、そういう場を経験していくとどんどん
本当に偉そうな人になっていっちゃうじゃないですか。
清水
そうね、そうだ。
糸井
で、それは自分はいい気になっ‥‥
多分、なってないと思うんです。
それは、ならないようにしようとしているからだと
思ったんですよ。清水さんもなってない。
 
ならない理由の一つはやっぱり、
偉ぶることで失われるものが大きすぎるからだよね。
本当に偉そうになっちゃったら、
これできない、あれできないが、あるよね。
清水
うん。ものまねなんて、なおさら(笑)。
糸井
何回も偉ぶるような機会があっただろうに、
逃げてきた人はちゃんと逃げている。清水さんも。
清水
でも、気づかずになっていたかもしれないね。
糸井
ああ、なってたんだ。
こういうところなんだよ、この人のおもしろさは。
清水
しまったー、自白した(笑)。
糸井
したね(笑)。
 
でも、偉ぶることで奪われるもののほうが多いよ、
ってことにはなんか気づくよね。大損だなって。
清水
あとはやっぱり、私たちは
自分を客観的に見てナンボの商売だから。
糸井
ああ、そうか。「こう見えているよ」が仕事だからだ。
清水
そうそう。それもあると思う。
糸井
「こう見えているよ」っていうのが、
実はプロデュースの原点だね。
清水
あ、そうか。
糸井
モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、終わった。
清水
やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。

糸井
ああ、うらやましいなあ。清水ミチコになってみたいよ。
清水
本当? 初めて言われた(笑)。
糸井
うんうん。いいと思うなあ。
清水
穴場だよ。
糸井
穴場っていうか(笑)、いいね。