人生のおもしろさは、どこにある?清水ミチコ×糸井重里
担当・菊池百合子
第2回 思っている分量が、人よりも多い
- 糸井
-
「明日清水さんに会うんだな」と思って、
何か一つぐらい、自分で
「これを思ったんだよね」って
考えたことを言いたくて。
清水ミチコは、
「『私はこう感じてます』
っていうことをしてるんだね」
って発見したの。
- 清水
-
あ、本当? 当たっています(笑)。
- 糸井
-
ねえ。で、なぜそういうことを
お風呂に入りながら考えたかというと、
清水さんは批評してないんだよね、全然。
- 清水
-
あ、うれしい。
- 糸井
-
つまり、いいだの悪いだの何も言ってなくて
「私にはこう感じられちゃってますよ」っていう(笑)。
- 清水
-
そうかも、でも、うん。
- 糸井
-
ねえ。それって芸になるっていうか(笑)。
- 清水
-
どうなんだろうね(笑)。
- 糸井
-
通信販売をする瀬戸内寂聴さんのネタ、あるじゃないですか。
- 清水
-
はい(笑)。
- 糸井
-
実際には寂聴さんは清水さんのようにしてないんだけど、
私にはそう見えてますよ、っていう表現でしょう?
- 清水
-
そうですね、うん。
- 糸井
-
いいとか悪いとか一つも言ってないんですよ(笑)。
- 清水
-
うん(笑)。
正しいとか間違っているとか、
あんまり関係ないかも。
- 糸井
-
ねえ。たとえばある芸能人がいて、
概ね強気なことを言ってるっていうのは
みんなが感じていたとする。
それを「あなたはすごく強気なことを言っていて
おもしろい人だなあ、と
私に思われちゃっていますよ」っていう(笑)。
- 清水
-
背中を押すというかね(笑)。
- 糸井
-
で、本人は悪気があるとかないとかのことを
全然言うつもりはないんですけど、
こう見えてるんですよね(笑)。
- 清水
-
確かに、うん。
自分なりにこう感じましたってことを提出しているから、
違っていてもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
-
そうするとお客さんが
「そう見える、そう見える」って(笑)。
- 清水
-
「あるある」って(笑)。
お客さまは共感の方が多いでしょうね、きっと。
- 糸井
-
共感ですよね。
ツッコみ過ぎないじゃないですか。
- 清水
-
あ、そうですね(笑)。
- 糸井
-
立ち直れないようなことも、しないじゃないですか(笑)。
- 清水
-
そうかも(笑)。
- 糸井
-
文章もおもしろいんですよ。
ぼく、清水さんの文章を
「みんな、このくらい書けるようになりなさい」
って言った覚えありますよ。
- 清水
-
本当?
- 糸井
-
うん。
言っては悪いですけど、
文章の修業をしたつもりがないじゃないですか。
- 清水
-
うんうん。
- 糸井
-
「修業したつもりのない人が
こんな文章を書けるっていうことに、
もっとおののいてください」
って社内で言ったことありますよ。
- 清水
-
わあ、うれしい。頑張ろう。
- 糸井
-
清水さんが『ほぼ日刊イトイ新聞』で
子どものこととかを書いていたじゃないですか。
(『清水ミチコの試供品無料進呈』)
- 清水
-
ありましたねえ。
- 糸井
-
あのときに、いつもいいなあと思ってて。
- 清水
-
へぇー。
- 糸井
-
ご本人は、文章を何だと思ってんの?
- 清水
-
ブログなんかはやっぱり、寝る前に、
一日こういうふうだった
ってことを書くとスッキリして寝られるので、
トイレみたいな感じですかね。
文章は、排泄(笑)。
- 糸井
-
でも、何も思わないで生きていたら
書く段階になっても書けないじゃないですか。
- 清水
-
うんうん。
- 糸井
-
だから、例えばアシスタントの子が
気が利くなあって思ったから、
そのこと書けるわけじゃない?
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
その、思っている分量は、人よりも多いよね。
- 清水
-
うん、きっと多いと思う。
高校のときに自分の
「おもしろノート」があって。
それに真面目なエッセイ欄があって、
「今回も書きましたけど、どう? 読む?」
みたいに回して。
その人が笑ってると、もうすごい幸せだった。
- 糸井
-
ああ。ちょっと話を聞いてると、
似ているんですよね。さくらももこさんに。
- 清水
-
ああ、そう。
- 糸井
-
思っていることを人に話すわけじゃないけど、
「あの人がこうしたな、こうしたな、こうした」
「あ、おかしいことしてるなあ」
って見てて(笑)。
- 清水
-
あとで、ちょこちょこ描いていって(笑)。
で、本人が幸せっていうね。
- 糸井
-
「ネタが尽きるっていうことが、
私にはないんじゃないか」って言ってたよ。
- 清水
-
へぇー。
- 糸井
-
だから、今の清水さんの話も
周りの人をおもしろがることが原点。
- 清水
-
あ、そうですね、うん。
- 糸井
-
俺は、それはなかったなあ。
- 清水
-
あ、ないの?
- 糸井
-
漫画描いたりして回覧板的に回すみたいなことでしょう?
- 清水
-
そうそうそう。
- 糸井
-
それは少しはしてるんです。
してるんだけど‥‥お客さんをつかめなかった(笑)。
- 清水
-
芸人だったらアウトな言葉だね(笑)。