人生のおもしろさは、どこにある?清水ミチコ×糸井重里
担当・菊池百合子
第4回 みんなちょっとずつ、責任を背負っている
- 清水
-
あのね、私が今日一番聞きたいと思ったのは、
糸井さん、死にたくないだろうな、ってことなの。
- 糸井
-
ああ、死にたくないよ、そりゃ。
死んだらしょうがない、とも思うし。
- 清水
-
でも、私の中のイメージでは、
貧乏生活もしてきた少年が孤独も知りながら、
70人を超える大会社の社長になっていたわけじゃん?
- 糸井
-
大会社じゃない(笑)。
- 清水
-
でも、すごいサクセスストーリーでもあるじゃん?
- 糸井
-
ああ、ああ。
- 清水
-
そういう人が一番怖いのって
やっぱり健康じゃなくなることとか、
死ぬことかなって思ったの。
- 糸井
-
いや、それは別に怖いとかじゃなくて、
つまり責任があるんだよ。
それだけのことだよ。だから、忙しいんだよ。
- 清水
-
ずっと忙しいってこと?
- 糸井
-
ある時間ここに拘束されていれば、
他の時間は自由です、みたいにはならないから。
いつも気が休まらないよね。
- 清水
-
「もうやめたい!」ってならない?
- 糸井
-
やめたい、って言っちゃいけないじゃん。
- 清水
-
ああ、そうだねえ。
- 糸井
-
でしょう(笑)。
そんなことを思っているだけでも、
ちょっとストレスだよね、きっと。
- 清水
-
そうね。
- 糸井
-
一方で、あなたのおかげで生きている家族もいるよね。
清水ミチコ事業という体系があるわけよ。
- 清水
-
ああー、そうなのかな。
- 糸井
-
だから、「私は倒れちゃいけない」
っていうぐらいのことは思っているでしょう?
- 清水
-
本番で倒れちゃいけない、とは思うけどね(笑)。
でも、私は糸井さんとはスタンスが違うんじゃないかな。
- 糸井
-
そうか、うん。
でも、その色、形、大きさは違うけども、
大人にはみんな責任があるわけで。
- 清水
-
そうだね。
- 糸井
-
例えば、清水さんの最初の武道館公演って、
大勢が集まったじゃないですか。
「みなさん、お元気ですか」って言ったら、
「元気でーす!」って返ってくるみたいな。
- 清水
-
うんうん。
- 糸井
-
そこの「元気でーす!」って返してくれる声も、
もう自分の一部じゃないですか。
- 清水
-
そうです。
- 糸井
-
実際、歓声がすごかったでしょう?(笑)
- 清水
-
うん。快感でしたね。
- 糸井
-
「ここを私がちゃんとしないといけない」みたいなものは、
みんなちょっとずつ持っているんですよね。
さっき「責任」って言ったのはそういうようなことで、
ちっちゃいやつを僕も持っている。
だから、やれるうちはやろうっていうのを
考えているんじゃないかな。
- 清水
-
ああ、そうですね。
- 糸井
-
清水さんは、この先どうするか、みたいなことを考えるの?
- 清水
-
考えないけど、占いに行ったことはある(笑)。
- 糸井
-
じゃあ、自分では考えたくない気持ちもあるんだね。
- 清水
-
うん、そうですね。
でも私、不幸になる気がしない。
- 糸井
-
ああ。それがすべてだと思うね。
その「運悪くないし」みたいなね。
- 清水
-
うん、そうね。
- 糸井
-
ぼくにさ、孫ができたじゃん。
見てるとね、うらやましいの。
- 清水
-
あ、楽観性?
- 糸井
-
そう。ひとりでは生きていけないのに、
自分ではそのことを一切心配しないで
「フャーッ」とか言ってる(笑)。
責任なんてないフリをして生きているんですよね。
- 清水
-
そうね(笑)。
それで、さも「自分で大きくなりました」
って顔するからね、みんな。
- 糸井
-
うん。そういう楽観性がないと、
やっぱり生き物ってダメでさ。
- 清水
-
そうね。
- 糸井
-
ぼくなんか、ちょっと余計に考え過ぎるほうでさ
- 清水
-
へえー。
- 糸井
-
2人いるんですよ、ぼくの中にね。
ものすごく考えるぼくと、何も考えないぼくが。
リレーをやってるんです、いつも。
ものすごく考えるぼくが
「本当大変なんですよ」って言いながら
「さあ、本番だ」っていうと、
なぜか考えないぼくのところにバトンが行くんです(笑)。
- 清水
-
そうなんだ。
- 糸井
-
おかげで、なんとかなっている気がするね。
- 清水
-
うん。うまくいく人は楽観的な人が多いからね。
- 糸井
-
やっぱりそのほうが生きられるよね。