もくじ
第1回根っこがあって 2019-03-19-Tue
第2回counterpart 2019-03-19-Tue
第3回なりたいようにできる 2019-03-19-Tue
第4回手放そうという勇気 2019-03-19-Tue
第5回人生の大工事じゃなくても 2019-03-19-Tue
第6回あのとき犬が 2019-03-19-Tue

ほぼ日の塾5期生のみきみきです。本名です。
古着とアクセサリーが好きで、いささか派手めです。
普段はコーチングをするコーチという仕事をしています。

取り入れて、手放して。そして進め!

取り入れて、手放して。そして進め!

担当・三木未希(みきみき)

第6回 あのとき犬が

潤子
愛犬に対してどう向き合うかを考えるのは、早い方が良くて。
のんびりはしていられない。
小型犬だと人の5倍くらい、大型犬だと7倍くらいの速さで
年を取るの。人間にとっての1日が1週間ね。
それだったら早く気づいてあげた方がいい。
犬の時間はキュッと詰まってるから。
みき
食べ物ひと口とっても、キュッと凝縮されているし。
潤子
かける言葉もね。
だったらいい言葉をかけて、
いい環境で、一緒に暮らした方がいい。
みき
犬にとって暮らしやすい環境と
人にとって暮らしやすい環境を
潤子さんが提案してるじゃない?
プロがちゃんと研究して、成果を提供してるってことよね。
潤子
そう。
みき
自分で試行錯誤をして見つけるのもいいかもしれないけど、
プロの意見を聞いて、より早くっていうのがポイントね。
潤子
犬の時計に合わせて考えたら、スピードは大切。
やっぱり時計は戻せないので。気づくタイミングが早くて
早く実行に移せたら、犬も人もどっちも幸せ。
みき
それはわたしの仕事も一緒だね。きっと。
早くたのしくなるに越したことはない。
潤子
愛犬にとって安全安心な環境というのは、
結局、自分にとっても安全で安心なんだよね。
愛犬の足腰が弱くなったり、病が出てきたりした時、
あるいは予防のために住環境を整えていくと、
究極はね、私たちが年を取った時に安全な住まいになるの。
みき
ああ、そうなんだ。
犬を飼ったら滑らない床にするってよく聞くけど
確かに人間も同じだね。
犬と人間は共有しやすいかもしれないけど
たとえばこれが、ライオンとかだったら
きっと難しいじゃない?
だから犬と人って一緒にいるのかな。一緒にいやすいのかな。
潤子
そう! たぶんお互いが不得手なところを補完しあってね。
古ければ7万年前、通説としては4万年前から
一緒に暮らしてるって言われてる。
みき
その間に、一緒にいられる環境を作ってきたのかな。
潤子
そうなの。今は科学的には証明されてないんだけど、
いずれされると信じていることがあって。
たぶんね、人間と犬って、お互いを必要とする欲求が
DNAに入っているんじゃないかって(笑)。

みき
おおー!(笑)
たしかに、わたしは犬を飼っていないけど
ドコノコで写真を見るの、やめられないから。
その説、なくはないよ。
潤子
やったー(笑)。それが猫でも同じだけどね。
人間は、人間だけでは、きっと生きてはこられなかったな
と、わたしは信じていて。
だから、自分が普通に犬と共生しているのも、
ある意味、動物への恩返しでもあるかな。
みき
なるほどね。
潤子
動物に愛情を持つことは、イコール過保護じゃないの。
もともと家族だったんだから。
みき
そこ。そこって、誤解されやすくない? 逆の意味でも。
潤子
たとえば田舎でね、おばあちゃんがいて、犬が外にいてね。
いつも番犬をしています。
そこに愛情がないか、というとそんなことはないと思う。
みき
うん。うん。
潤子
スタイルが違うだけで、きっと愛情は固いと思う。
だからスタイルだけ見てると、
本当の関わりが見えなくなったりする。
人と犬、動物同士、敬意を持って
愛情に基づいた関わり方は、千差万別だから。
みき
そういえば、この前たまたま見た雑誌でね
ニューヨークの犬の特集があって。
やっぱりニューヨークで暮らす犬は、
ニューヨークに合ったしつけをするんだ、と書いてあった。
人混みにびっくりしない、とか、電車に乗れるように、とか。
それを読んで、なるほどなって思った。
ニューヨークに住む犬と
オーストラリアの牧場で暮らす犬は、きっと違う。
潤子
そうなの。
理想とするスタイルをひとつに決めてしまうと、
無理が生じるの。
今の自分のライフスタイルの中で
変えられることをちょっと変える、あるいは
マインドを変えて接し方が変わってくると、
伝わる愛情は変わるから。
 
犬のためになることなのか、自分に無理がないのか、と
バランス良く考えられたら
わたしは今の日本では、充分な進歩なんじゃないかなって。
みき
そこの見極めというか、飼い主に無理がなく
でも、飼い主ができることを少しずつ増やしながら、
犬にとっての幸せを探るために、
潤子さんが研究しているんだよね。
潤子
そうそう。
みき
わたしは、可能性がたくさんある方が
豊かな社会だと思うので、
たとえば、
お留守番させる時間がとても長い家族が犬と暮らしたい場合、
そのひとつの条件だけで、
無理ですね、じゃあだめですってなるよりは
どうしたらいいのか、何ならできるかって
専門家と一緒に考えられるような方向に
なればいいなって思う。
潤子
そうなの。
社会全体で見るとね、うまくバランスが取れるはずなの。
たとえば、そういう方が犬と一緒に生きたいと思った場合、
地域社会の中の動物として触れ合う機会ができるとか。
足りない力は誰かに協力をあおぐことができるような、
そんなオープンな社会になったらいいよね。
みき
そうか。たとえばマンション犬がいてもいいのか。
潤子
そう。そこにちゃんと、
その犬が幸せに過ごすことができるような環境や、
人への教育なんかがあるように。
愛情を搾取して終わり、ということじゃなくて。
動物同士の倫理観を持ってね。
やってもらったら、ちゃんと恩返しをするっていうのは
当然だから。
みき
そういう取り組みって、一般的?
潤子
そうでもないね、たぶん。
みき
いい取り組みだと思うけどなあ。
潤子
社会全体に認めてもらうには、なかなか大変。
そのためのひとつの手段として
あえて過去にさかのぼって、
わたしたち人間が文明を築いていられるのは、
あのとき犬が助けてくれたからだ、っていうところを
解き明かしたいの。
人が犬に出会って始まったことを。
みき
それがオオカミを知ることにつながっている?

写真提供:潤子

 

潤子
うん、オオカミが犬になった瞬間のことを知りたい。
みき
そこなんだ。
潤子
そうなの。
『人イヌに会う』という本がわたしのバイブルで。
コンラート・ローレンツの。鳥の刷り込み理論を発見した人。
みき
おおー。知ってる。
潤子
わたしは動物園に通ってるんだけど、
最初から認めてなんてくれなくて。
みき
あえて聞きますが、オオカミに、ですね?
潤子
そう。
1日中立ってる日が何日も続いて、
とにかく名前を呼んで、その子達をよく見ているうちに
わたしが行くと、目が合うようになったの。
その時ね、震えが止まらなかった。
あ、通じたっていうか。
ホモ・サピエンスの初期の人たちは、
この瞬間を味わったのかなあって。
怖さよりも感動が大きかったんじゃないかなって思ったの。

写真提供:潤子
みき
聞いてて、わたしもちょっとふるえた。
潤子
オオカミから犬になった瞬間っていうのは、
ここかもしれないと思って。
で、人と一緒にいたのは、きっとどっちも弱かったから。
みき
補い合う形でね。
潤子
一緒に狩りをする中で、言葉がなくても通じたの。
その方法が、目線。
私たちは白眼があるから
目が動くと黒目がどこを見ているかわかるでしょ。
イヌ科の生き物も同じことができるの。
でもね、これ、ほかの霊長類はできないの。
みき
え? そうなの?
潤子
すごいでしょ?
飼い主があっちを向いたら、愛犬も向くんだけど
当たり前のようにみなさんやってるんだけど
これ、犬しかできないの。
みき
へえええ。
その話を、動物園のオオカミの前で聞きたい。
潤子
やりましょう。お友達を誘って、桜の頃に。
オオカミと桜ってすごくきれいよ。

(おわります。)