もくじ
第1回はじめてリンさんに会った日 2019-03-19-Tue
第2回それぞれにいいところがある 2019-03-19-Tue
第3回「私なりのデザイン」を見せ続ける 2019-03-19-Tue
第4回日台で、おもしろいものを 2019-03-19-Tue
第5回次のステップは 2019-03-19-Tue

山梨県出身。東京に来て10年目。大学時代はデザインを勉強していました。

現在はかっこよく年を重ねたい人におくるWEBマガジン「キネヅカ」を運営中。

日本の“こだわり文化”と</br> 台湾の“実験精神”

日本の“こだわり文化”と
台湾の“実験精神”

担当・深澤アヤネ

第3回 「私なりのデザイン」を見せ続ける

ーー
藝大でみっちりデザインと向き合われた
リンさんですが、デザインに対する感覚は
日本人に近いのでしょうか。
リンさん
そうかもしれません。
私にとってデザインは「考えること」です。
ただ美しいものをつくるということではなく。
瀧澤さん(BXG広報)
僕から見ても、リンのデザインは日本人の感覚に近いです。
この前台湾で手掛けたチケットなんかは特に。
リンさん
ああ、台湾デザインミュージアムのチケットだね。
施設のメイン客層が、普段デザインに興味があるような
クリエイターではなく、一般の人や観光客だったんです。
なので、そういった方にも楽しんでもらえるような
チケットにしたくて。

ーー
おぉ〜。おもしろい。
シールを貼ってチケットをデザインできるのですね。
リンさん
シールの色形が7つの展示室それぞれで違うんです。
お客さんにもデザインに参加してみてもらう、
そんな感覚でつくりました。
ーー
日本で学んだデザインの考え方を
台湾でアウトプットなさっていると。
リンさん
私は台湾のデザインの幅を広げたいんです。
いまの台湾のデザインは、どちらかというと
「考える」よりも、これまでになかったものを
「表現する」ことに重きが置かれていて。
瀧澤さん
台湾は、インパクトのある刺激的なデザインが多いですね。
それらは台湾の市場で強い力を発揮している
ように思いますが、
一方で消費されるスピードも速いように感じます。
ーー
なるほど。その時々によって流行があるのですね。
リンさん
デザインは、誰のために、何のために
コミュニケーションするのか。
私はそこから考えたいんですね。
思考的なデザインは、
ものだけでなく街の風景や教育などにも作用して、
社会のためになると思います。
もちろん全てのデザインがそうである必要はなく、
「表現」も大切なデザインです。でも、
両方のデザインがあるほうが多様で豊かな国になる。
そのなかで私が台湾のためにできることは、
台湾のみんなに「私なりのデザイン」を
見せ続けることだと思っています。

ーー
これは一番お聞きしたかったことなのですが、
リンさんのそういった熱は、どこからくるのでしょう?
問題意識とか、愛国心からなのでしょうか?
リンさん
うーん、そうですね……これはもう正直、
性格でしかないと思っていて。
両親の教育がすごく厳しかったんです。
「社会のためにならなきゃいけない」
というのが小さい頃から自然になってしまっていて。
ーー
でもだからこそ、デザインが表現寄りにならず、
人のことを考えられるのでは。
リンさん
たしかに。やっぱり、困った人がいたら助けたいんです。
このまえ印象に残った出来事があって。
ーー
聞かせてください。
リンさん
去年末、仕事の打ち合わせで台湾に行ったとき、
目の見えない人と電車で乗り合わせました。
その人を席まで案内したのがきっかけで、
お話を聞くことができて。
私は、その人がどんな生活をしていているのか
知りたかったんです。
そしたら、彼はすごかった。
次の電車は何時何分発で、その電車の
ハンドルの形はどんなふうになっているのか、
事こまかにすべて把握していました。
ーー
すごい……。
リンさん
その一方で、街中の交差点では困ったことがあるという
エピソードを聞かせてくれて。

リンさん
全部、その人に聞かないと知り得ないことです。
彼らのために交差点に機械を新設したとしても、
その人たちの助けになっていなければ。
デザインにそういうことがあればあるほど、
台湾人にとってデザインの重要度は
低くなってしまうかもしれない。
ーー
それは悲しい……。
リンさん
そう。でも、困っている人の声を聞くのが大切です。
それはその人の手伝いから始まるのかもしれない。
デザインって、相手のことがわからないとできないから。

(つづきます)

第4回 日台で、おもしろいものを