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藝大でみっちりデザインと向き合われた
リンさんですが、デザインに対する感覚は
日本人に近いのでしょうか。
- リンさん
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そうかもしれません。
私にとってデザインは「考えること」です。
ただ美しいものをつくるということではなく。
- 瀧澤さん(BXG広報)
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僕から見ても、リンのデザインは日本人の感覚に近いです。
この前台湾で手掛けたチケットなんかは特に。
- リンさん
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ああ、台湾デザインミュージアムのチケットだね。
施設のメイン客層が、普段デザインに興味があるような
クリエイターではなく、一般の人や観光客だったんです。
なので、そういった方にも楽しんでもらえるような
チケットにしたくて。

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おぉ〜。おもしろい。
シールを貼ってチケットをデザインできるのですね。
- リンさん
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シールの色形が7つの展示室それぞれで違うんです。
お客さんにもデザインに参加してみてもらう、
そんな感覚でつくりました。
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日本で学んだデザインの考え方を
台湾でアウトプットなさっていると。
- リンさん
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私は台湾のデザインの幅を広げたいんです。
いまの台湾のデザインは、どちらかというと
「考える」よりも、これまでになかったものを
「表現する」ことに重きが置かれていて。
- 瀧澤さん
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台湾は、インパクトのある刺激的なデザインが多いですね。
それらは台湾の市場で強い力を発揮している
ように思いますが、
一方で消費されるスピードも速いように感じます。
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- なるほど。その時々によって流行があるのですね。
- リンさん
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デザインは、誰のために、何のために
コミュニケーションするのか。
私はそこから考えたいんですね。
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思考的なデザインは、
ものだけでなく街の風景や教育などにも作用して、
社会のためになると思います。
もちろん全てのデザインがそうである必要はなく、
「表現」も大切なデザインです。でも、
両方のデザインがあるほうが多様で豊かな国になる。
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そのなかで私が台湾のためにできることは、
台湾のみんなに「私なりのデザイン」を
見せ続けることだと思っています。

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これは一番お聞きしたかったことなのですが、
リンさんのそういった熱は、どこからくるのでしょう?
問題意識とか、愛国心からなのでしょうか?
- リンさん
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うーん、そうですね……これはもう正直、
性格でしかないと思っていて。
両親の教育がすごく厳しかったんです。
「社会のためにならなきゃいけない」
というのが小さい頃から自然になってしまっていて。
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でもだからこそ、デザインが表現寄りにならず、
人のことを考えられるのでは。
- リンさん
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たしかに。やっぱり、困った人がいたら助けたいんです。
このまえ印象に残った出来事があって。
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- 聞かせてください。
- リンさん
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去年末、仕事の打ち合わせで台湾に行ったとき、
目の見えない人と電車で乗り合わせました。
その人を席まで案内したのがきっかけで、
お話を聞くことができて。
私は、その人がどんな生活をしていているのか
知りたかったんです。
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そしたら、彼はすごかった。
次の電車は何時何分発で、その電車の
ハンドルの形はどんなふうになっているのか、
事こまかにすべて把握していました。
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- すごい……。
- リンさん
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その一方で、街中の交差点では困ったことがあるという
エピソードを聞かせてくれて。

- リンさん
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全部、その人に聞かないと知り得ないことです。
彼らのために交差点に機械を新設したとしても、
その人たちの助けになっていなければ。
デザインにそういうことがあればあるほど、
台湾人にとってデザインの重要度は
低くなってしまうかもしれない。
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- それは悲しい……。
- リンさん
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そう。でも、困っている人の声を聞くのが大切です。
それはその人の手伝いから始まるのかもしれない。
デザインって、相手のことがわからないとできないから。
(つづきます)