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Mとは2歳の頃から、28年くらいの付き合いですが…
改めて聞くと、生まれだけ東京じゃないんだっけ?
- M
- 出生地は京都。生まれてすぐ東京に来てから、ずっと東京。
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- わたしと一緒だ、秋田で生まれてすぐに東京に来た。
- M
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え、なに?秋田にいたの?
すっごい。長い付き合いで初めてちゃんと知ったね(笑)。
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- 今日は似た境遇の二人で、東京について考えていきたいです。
- M
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東京について初めて考えたのは、仙台の大学に進学したとき。
初めて生まれ育った土地が違う人とたくさん出会って、
わたしを東京の人たらしめることってなんだろう、と。
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- そもそも、どうして仙台に進学したんだっけ?
- M
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東京で育って、ものごころついたときから、
就職する先は東京がいいと思ってたんだ。
すると一生東京から出ることなくてつまらないから、
縁もゆかりもない東京以北に行こうと思ったの。
- ー
- すごいね。なじみあるところに行きたくなりそうだけど。
- M
-
高3のときに夢を描いたんだよね。北海道大学にいる私とか…。
そんな夢を描いていたときに、
大好きな小田和正さんが東北大出身だと知ったの。
しかも、当時学びたかった建築を学んでいたと聞いて、
「運命だ!」って志望するようになった(笑)。
- ー
- まさか小田さんがきっかけだなんて知らなかったよ。
- M
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そんなきっかけだけど、仙台に行ってよかったよ。
違う土地に行くことで、ぜんぜん違う体験をできたからね。
同時に、東京のありがたみを痛感する6年間でもあった。
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- 東京のありがたみってなんだろう?
- M
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東京の人の多さなんて好きじゃないけど、
人が少ないのは寂しいんだなって思ったかな。
最初に住んだ仙台のマンションが川のそばにあってね、
すごく静かで、川とか森とか雨のいいにおいがする場所。
- ー
- いいにおいがする場所って、すごくステキだね。
- M
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慣れたらよかったけど、最初はすごく寂しかった。
次に住んだ家は大通り沿いで、常に人の気配がして安心した。
- ー
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東京は人が多いから、人の気配がすることに慣れてるのかな。
ほかに、仙台に行って印象的だったことってある?
- M
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自己紹介のとき、東京出身っていうとびびられることがあった。
つんつんしているって思われちゃう。
感じが悪くなるのが嫌で、逆につんつんキャラでいった。
- ー
- おぉー。勇気あるほうにふりきったね!
- M
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中途半端なほうが嫌味な感じがするかなって思って。
マリーアントワネットみたいに、面白いくらいにふりきった。
「アナウンサーみたいな話し方するね」って言われたら、
わたしが話す言葉が標準語だ!みたいな(笑)。
- ー
- なるほど。そこまで行くと冗談っぽくなるのね(笑)。
- M
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ほかに仙台に行って感じたことは、
東京ってアイデンティティがわからないってことかな。
- ー
- それは、今もわからない?それとも、出たらわかった?
- M
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今もわからないね。
山梨出身の子の話で印象に残っていることがあって、
仙台は周囲を山に囲まれていないから不安なんだって。
山梨にいたときは、方角を山の形で判断していたからって。
- ー
- そういう土地に基づくもの、ないかもしれないね。
- M
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うん、染み付いているものが特にない。
すごくプレーンでスタンダード。
東京を首都と定めたから人も文化も集まっているけど、
街自体には、わたしに残る爪あとがない気もするよね。
- ー
- 東京って千差万別すぎてね。
- M
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そうなの。
いろんな人がいることが、わたしの性格に与えた影響って?
知らない人が声かけてきても、立ち止まらず無視できるとか(笑)?
- ー
- スルーするの上手だよね(笑)。冷たいのかな。
- M
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仙台で建築を学んでいたとき、
学問柄、街づくりに興味がある人も多くて、
地元の街に貢献したいっていう志高い子が多かった。
すごいなと思うと同時に、
わたしにはそのあつさがないなと感じていたかもね。
- ー
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あつくなれないと思う理由のひとつとして、
東京って母数が多いから、常に上にすごい数の人がいる。
- M
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わかる。トップクラスはあっても、トップにはなれない。
自分の位置を幼い頃から把握している感じかな。冷めてる。
- ー
- それがわたしたちのアイデンティティなのか(笑)?
- M
- ぜんぜん違うところで生まれたら違う性格になっていたのか。
- ー
-
性格とは少し違うんだけど、これまで取材をするなかで、
ひとつの土地から出たことないコンプレックスが
あることに気づいてしまったかもしれない。
だから、Mが18歳の大学進学のときに出たいと思ったのは、
「なるほど、そのタイミングか!」って思ったよ。
- M
-
当時「どこか行きたい」って鬱屈としていたのはあるね。
人生のなかでやけくそになるタイミングがあって(笑)。
- ー
- やけくそ(笑)。
- M
-
仙台に行くって決めたのも、ある種やけくそだった
やけくそのタイミングがあって、人生を動かしている。
- ー
- いいね。やけくそが人生を動かしている、って。
- M
-
うん。やけくそによって苦しんだり、救われたり。
仙台に行ったのは、本当によかった。
「あのときのわたし、グッジョブ!」と思っているよ。
- ー
- 仙台を経験して、東京に戻ってきて感じることってある?
- M
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いろんな種類の街があるね、東京は。
仙台は、仙台が断トツで大きくて便利な街だったから。
- ー
- 一駅進むだけで、街の色がぜんぜん違うよね。
- M
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東京はひとりで遊ぶのにもぴったりだね。
毎週遊んでいるのに、ぜんぜん飽きない。
- ー
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最後に、これはみんなに聞いてるんだけど、
東京は何ですかって聞かれたらなんていう?
- M
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うーん、他の人は言ってないことを言いたいなぁ(笑)。
…「あたりまえ」だわ。
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- あたりまえ。
- M
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うん、アイデンティティとかどうとか、
憧れとかじゃなくて、そこにある。
物質に例えると、水とか空気とか…それが東京(笑)。
- ー
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マリーアントワネット的表現ですね(笑)。
ありがとうございました。
(次が最終回です。4人に取材してみて気づいたことを、ちょっぴり話します。)
