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- 大学では、絵は描いていたんだっけ。
- カオル
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月1回イベントで描いたものを販売し始めて。
そしたら「好き」って言ってくれる人がでてきて。
ホームページを作ったり、販売するものを増やしたり、
学園祭でTシャツに絵を描いて売ったり。
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- 卒業後も絵は描いてた?
- カオル
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ずっと続けてた。
月1でイベントに出て、週に4日働く日以外は、
プリントゴッコ(小型印刷機)でTシャツを1枚1枚作ったり、
注文を受けてスニーカーに絵を描いたりしてたこともあった。
それで生活できたのは、姉妹4人で一緒に暮らしてたから。
妹3人に随分助けられたよ。
そういえば、これが私が描いた一番大きな絵。

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大きいね(縦が1メートルくらいかな)!
描き込まれているねぇ。いつごろ描いたの?
- カオル
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描き始めたのはイベントで会った子に誘われて
二人で展示会をした時だから、25歳か26歳くらい。
その時は線画の一部を描いただけだったんだけど、
28歳の時に絵を見た人に
「週末にフリースペースで描いてみない?」って言われて、
そのスぺ―スにこの絵を持ち込んで描くようになった。
- ───
- フリースペースには、どのくらいのペースで?
- カオル
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毎週行ってたよ。
この絵は1年くらいで仕上げた。
- ───
- 森みたいだね。イメージとかあるの?
- カオル
-
こういうのを描こうと思って描くことができないから
手が進むままに。独学だからデッサンとか自信無いな(笑)。
もう10年たっているから、今見ると新鮮な感じ。
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- 毎週同じスペースで描いてたの?
- カオル
-
そこには絵を書く人とか毛筆で字を書く人とか
いろんな人たちがいて。書いたり、おしゃべりしたり。
- ───
- どうだった?
- カオル
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面白かった。
絵を描き込んだスニーカーを置いてたんだけど、
スケボーに乗ってそうな今どきの兄ちゃんが来て
「コレ超やばいっすね。いくらっすか」って言われて
「すみません。コレは非売品なんです」って答えたり、
外国の人に「僕はいつか絵本を娘のために描きたいけど、
こういう絵がついたらいいと思う」って言ってもらえたり。
うれしかったなぁ。

- ───
- 絵がカオルをいろんな人につなげたのかな。
- カオル
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それはあると思うなぁ。
週末に外のスペースでライブをやってて、
夕暮れ時にバイオリン弾きの人が、
その時間にぴったりの優しいゆったりした曲を弾いてね。
みんな何も言わずに共有して。すごく贅沢な時間だったなぁ。
- ───
- 人前で描こうって思えたのがすごいね。
- カオル
-
描かないかって言われた時、人が多いところは得意じゃないし
周りの人とうまくやれるかわからないから怖いって話したら、
こういう時は行かないとだめだよって妹に言われた。
それで背中を押されたな。
- ───
- 今は描いてない?
- カオル
-
一番は時間かなぁ。
子どもがいるからゆっくり絵に向き合う時間が無いし、
時間ができたらご飯を作ったりアイロンをかけたりするし。
何も考えずに絵に向き合えるのは贅沢で幸せなことだった。
やれるときにやるのは大事だね。
- ───
- 絵を描くのって幸せなの?
- カオル
-
うん。
描いてる時は何も考えてないけど、気持ちいい。
すごく気持ちいい曲とか音楽を聴いて、
うゎぁ気持ちいいなぁっていう感じに似ている。
- ───
- そうかぁ。高校の時からそうだったの?
- カオル
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そうねぇ。絵を描くのはずっと好きだねぇ。
高校の時は漫画の絵だったんだけど、
20歳を過ぎて、ちょこちょことした落書きみたいなものを
くっつけて描くようになって。
自分でも完成してるか、何を描いているかも分からないときに、
友だちに凄い好きって言われてうれしかったなぁ。
生きてて良かったって感じられた。
- ───
- カオルが穏やかになったのと絵は関係ある?
- カオル
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絵をいろんな人に肯定してもらったのは、結構関係があるかも。
意図して作り込んではいないものを、
好きって言ってもらえたら、すごくすごくうれしかった。
(続きます)
