もくじ
第1回男の人が苦手だった 2019-03-19-Tue
第2回学生時代はきつかった 2019-03-19-Tue
第3回絵で人とつながれた 2019-03-19-Tue
第4回出会い系で結婚 2019-03-19-Tue
第5回力を抜いて過ごせる日々が待っている 2019-03-19-Tue
第6回一つの出会いで世界が変わる 2019-03-19-Tue

沖縄で編集・ライターをしています。
おいしいものと心地いい陽気が好きです。

あのころ苦しかった私たちへ

あのころ苦しかった私たちへ

担当・カワノリナコ

第3回 絵で人とつながれた

───
大学では、絵は描いていたんだっけ。
カオル
月1回イベントで描いたものを販売し始めて。
そしたら「好き」って言ってくれる人がでてきて。
ホームページを作ったり、販売するものを増やしたり、
学園祭でTシャツに絵を描いて売ったり。
───
卒業後も絵は描いてた?
カオル
ずっと続けてた。
月1でイベントに出て、週に4日働く日以外は、
プリントゴッコ(小型印刷機)でTシャツを1枚1枚作ったり、
注文を受けてスニーカーに絵を描いたりしてたこともあった。 
それで生活できたのは、姉妹4人で一緒に暮らしてたから。
妹3人に随分助けられたよ。
そういえば、これが私が描いた一番大きな絵。

    
   

───
大きいね(縦が1メートルくらいかな)!
描き込まれているねぇ。いつごろ描いたの?
カオル
描き始めたのはイベントで会った子に誘われて
二人で展示会をした時だから、25歳か26歳くらい。
その時は線画の一部を描いただけだったんだけど、
28歳の時に絵を見た人に
「週末にフリースペースで描いてみない?」って言われて、
そのスぺ―スにこの絵を持ち込んで描くようになった。   
───
フリースペースには、どのくらいのペースで?
カオル
毎週行ってたよ。
この絵は1年くらいで仕上げた。
───
森みたいだね。イメージとかあるの?
カオル
こういうのを描こうと思って描くことができないから
手が進むままに。独学だからデッサンとか自信無いな(笑)。
もう10年たっているから、今見ると新鮮な感じ。
───
毎週同じスペースで描いてたの?
カオル
そこには絵を書く人とか毛筆で字を書く人とか
いろんな人たちがいて。書いたり、おしゃべりしたり。
───
どうだった?
カオル
面白かった。
絵を描き込んだスニーカーを置いてたんだけど、
スケボーに乗ってそうな今どきの兄ちゃんが来て
「コレ超やばいっすね。いくらっすか」って言われて
「すみません。コレは非売品なんです」って答えたり、
外国の人に「僕はいつか絵本を娘のために描きたいけど、
こういう絵がついたらいいと思う」って言ってもらえたり。
うれしかったなぁ。

───
絵がカオルをいろんな人につなげたのかな。
カオル
それはあると思うなぁ。
週末に外のスペースでライブをやってて、
夕暮れ時にバイオリン弾きの人が、
その時間にぴったりの優しいゆったりした曲を弾いてね。
みんな何も言わずに共有して。すごく贅沢な時間だったなぁ。
───
人前で描こうって思えたのがすごいね。
カオル
描かないかって言われた時、人が多いところは得意じゃないし
周りの人とうまくやれるかわからないから怖いって話したら、
こういう時は行かないとだめだよって妹に言われた。
それで背中を押されたな。
───
今は描いてない?
カオル
一番は時間かなぁ。
子どもがいるからゆっくり絵に向き合う時間が無いし、
時間ができたらご飯を作ったりアイロンをかけたりするし。
何も考えずに絵に向き合えるのは贅沢で幸せなことだった。
やれるときにやるのは大事だね。
───
絵を描くのって幸せなの?
カオル
うん。
描いてる時は何も考えてないけど、気持ちいい。
すごく気持ちいい曲とか音楽を聴いて、
うゎぁ気持ちいいなぁっていう感じに似ている。
───
そうかぁ。高校の時からそうだったの?
カオル
そうねぇ。絵を描くのはずっと好きだねぇ。
高校の時は漫画の絵だったんだけど、
20歳を過ぎて、ちょこちょことした落書きみたいなものを
くっつけて描くようになって。
自分でも完成してるか、何を描いているかも分からないときに、
友だちに凄い好きって言われてうれしかったなぁ。
生きてて良かったって感じられた。
───
カオルが穏やかになったのと絵は関係ある?
カオル
絵をいろんな人に肯定してもらったのは、結構関係があるかも。
意図して作り込んではいないものを、
好きって言ってもらえたら、すごくすごくうれしかった。

              (続きます)

第4回 出会い系で結婚