沖縄で編集・ライターをしています。
おいしいものと心地いい陽気が好きです。

あのころ苦しかった私たちへ

あのころ苦しかった私たちへ

担当・カワノリナコ

苦しかった思春期のころの一番の友だちがカオル(仮名)です。
中学生の時の塾が同じで、出会って20年以上。
「大人になって生きるのが楽になったね。あのころの私に教えたいね」と
しみじみ言い合う私たちは38歳になりました。

学生のころの私は、周りを気にして人の話に「うんうん」とうなずくことしかできなくて、
それなのに周りには溶け込めずに、苦しかった。

カオルは学生のころから頭が良くて話が面白くて、私はしょっちゅう笑わせられた。
でも人と喋るときは緊張していて、どこかピリピリしているように感じた。
特に男の人に顕著で、
中学時代の塾の先生が「俺は嫌われてたな」と私に話したことがあった。
カオルに聞いたら「違う違う、男の人が苦手なの」と言った。
高校生のころにカオルが「子どもを産むなんて想像できない」と言うのを聞いて、
結婚して子どもを産むのは当たり前だと思っていた私はびっくりした。

高校で私もカオルも勉強についていけず、クラスにもなじめず、いろいろなことを話した。
話すだけでは足りなくて、手紙のやり取りもした。
時には便せんに何枚も、私って何だろうとか、生きることについても書いたりした。

カオルがくれる手紙には、時々絵が描いてあった。
それは人だったり、森だったり、妖精みたいなものだったりした。
私はその絵が、とても好きだった。(今回載せている絵は、全部カオルの絵です)

手紙は私が高校卒業を卒業して県外に行ってからも続いた。
彼女が「一番、底だった」という大学時代には、
「死にたいなぁと思ったけど死ねなかったよ」と辛そうな言葉が書いてあった。

今、彼女にはママが大好きな4歳の息子と優しいだんなさんがいる。
カオルはいつもニコニコしていて穏やかで、柔らかい。
あのころはずっと苦しそうだったけれど、今はいつも幸せそうだ。

課題で、どうしても書きたいと思ったのがカオルのことだった。
何が彼女を変えたんだろうって、聞いたことはなかった。
改めてじっくり話を聞いてみたら、
思春期を過ぎたから、という理由だけではない、いろいろなことがあった。

苦しかった私たちへ、今、苦しい若い人へ。
届いたらいいなぁと思って書きました。

もくじ