ところで、「おもしろい」って一体なんなんだろう?
漫画を描くとき、わけがわからなくなるくらい考える。
わけがわからなくなっては、
自分をおもしろがらせてくれた作品たちを
思い返して我に帰ったりする。
2年前、最高の「おもしろい」を体感させてくれた作品があった。
それも回りに回って、やっぱりゼルダだったのだ。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」が
発売されたのは2017年。
僕にとっての最初で最高のゼルダ作品である
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をプレイしてから約20年経っていた。
時が経ち、あの荒かったグラフィックはどうなったのかというと…
なめらかで、優しい水彩のようなタッチのグラフィックに生まれ変わった。
キャラクターも公式イメージイラストと
大差なく魅力的に再現されている。
何より今回の作品は、
サブタイトルに「ブレス オブ ザ ワイルド(“大地の息吹”を意味する)」と
あるように、自然の描写が本当に本当に素晴らしい。
草の一本一本の揺れ、空や景色の美しさ、
大地に生きる野生動物(狩って食べることもできる)のしぐさ、風や雨、
生活感を感じさせるほどの村人たちの描写…言い出したらキリがない。
まるでそれぞれが本当に生きてる?と思わせるほどだった。
なんなのこれ…?もうゲームの域なんか超えちゃってる没入感。
そんな徹底的な世界観の作り込みをしてくる
制作チームの姿勢が、昔と変わらず僕は大好きなのだ。
そしてこの光景は…子供のころ、粗いグラフィックを前にして、
自分が脳内で、想像で思い描いていた光景そのものだった。
それを実際にこの目で見られたことが嬉しくて嬉しくて、
言葉にできないくらい感動した。
本当にハイラルの大地に冒険に出たとしか
思えないような、素晴らしい体験だった。
プレイした後の感想はもちろん、
「このゲームを超えるゲームって、
もう出てこないんじゃないの?」だった。
約20年間どんなゲームも塗り替えられなかった
あの感動を超えてきたのは、またしてもゼルダだった。
それが驚きでもあったし、喜びでもあった。
制作チームの彼らは、やっぱりただ者ではない。
こうして最高傑作を更新してくるのだから。
今回は300人ほどの体制で、全員で1週間徹底的にプレイしながら
微調整を重ねる…なんてことを何回もやったそうだ。
気が遠くなってしまう…!
僕がゼルダをプレイするとき、
ふたりの自分が顔を出す。
ひとりは、少年時代のままのワクワクに忠実な自分。
もうひとりは、クリエイター目線で
このゲームのおもしろさを解き明かしたい自分。
僕が思う今作のおもしろさを
最後にもうひとつ補足しておく。
ゲームというものの大半には、決められたルートがあるものだけど、
「ブレス オブ ザ ワイルド」は、
どんな順番で進めてもいい構造になっている。
序盤でいきなりラスボスに挑むことだってできてしまうのだ。
どこにでもいける。
なにをしてもいい。
どんな順番で進んでもかまわない。
これがどんなゲームだと捉えるか自体、
プレイヤーに委ねられている。
僕らが生きている現実の世界だって、きっとそうなのだ。
どう生きたっていいし、本当はなんだってできる。
いつの間にか何かに縛られたり、
限界を感じてしまったりするだけで。
僕はこのゲームのおもしろさの本質って、
そんな自由を感じさせてくれるところ
なんじゃないか?と思っている。
大人になっても大切なことを教えてくれる
ゼルダの伝説が、僕は相変わらず大好きなのだ。
(おわりです。お付き合いいただきありがとうございました!)