もくじ
第1回想像力を与えてくれたゼルダ 2019-02-26-Tue
第2回「スペシャル」が一つあるだけで 2019-02-26-Tue
第3回20年越しのブーメラン 2019-02-26-Tue

漫画家・イラストレーター・たまにデザイナー。
「アユム」と読まれがちな「アユミ」です。女子バスケの漫画を描いています。

僕の好きなもの ゼルダの伝説

僕の好きなもの ゼルダの伝説

担当・歩

第3回 20年越しのブーメラン

ところで、「おもしろい」って一体なんなんだろう?
漫画を描くとき、わけがわからなくなるくらい考える。

わけがわからなくなっては、
自分をおもしろがらせてくれた作品たちを
思い返して我に帰ったりする。

2年前、最高の「おもしろい」を体感させてくれた作品があった。
それも回りに回って、やっぱりゼルダだったのだ。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」が
発売されたのは2017年。
僕にとっての最初で最高のゼルダ作品である
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をプレイしてから約20年経っていた。

時が経ち、あの荒かったグラフィックはどうなったのかというと…
なめらかで、優しい水彩のようなタッチのグラフィックに生まれ変わった。
キャラクターも公式イメージイラストと
大差なく魅力的に再現されている。

何より今回の作品は、
サブタイトルに「ブレス オブ ザ ワイルド(“大地の息吹”を意味する)」と
あるように、自然の描写が本当に本当に素晴らしい。

草の一本一本の揺れ、空や景色の美しさ、
大地に生きる野生動物(狩って食べることもできる)のしぐさ、風や雨、
生活感を感じさせるほどの村人たちの描写…言い出したらキリがない。
まるでそれぞれが本当に生きてる?と思わせるほどだった。

なんなのこれ…?もうゲームの域なんか超えちゃってる没入感。
そんな徹底的な世界観の作り込みをしてくる
制作チームの姿勢が、昔と変わらず僕は大好きなのだ。

そしてこの光景は…子供のころ、粗いグラフィックを前にして、
自分が脳内で、想像で思い描いていた光景そのものだった。

それを実際にこの目で見られたことが嬉しくて嬉しくて、
言葉にできないくらい感動した。
本当にハイラルの大地に冒険に出たとしか
思えないような、素晴らしい体験だった。

プレイした後の感想はもちろん、
「このゲームを超えるゲームって、
もう出てこないんじゃないの?」
だった。

約20年間どんなゲームも塗り替えられなかった
あの感動を超えてきたのは、またしてもゼルダだった。

それが驚きでもあったし、喜びでもあった。
制作チームの彼らは、やっぱりただ者ではない。
こうして最高傑作を更新してくるのだから。

今回は300人ほどの体制で、全員で1週間徹底的にプレイしながら
微調整を重ねる…なんてことを何回もやったそうだ。
気が遠くなってしまう…!

僕がゼルダをプレイするとき、
ふたりの自分が顔を出す。

ひとりは、少年時代のままのワクワクに忠実な自分。
もうひとりは、クリエイター目線で
このゲームのおもしろさを解き明かしたい自分。

僕が思う今作のおもしろさを
最後にもうひとつ補足しておく。
ゲームというものの大半には、決められたルートがあるものだけど、
「ブレス オブ ザ ワイルド」は、
どんな順番で進めてもいい構造になっている。
序盤でいきなりラスボスに挑むことだってできてしまうのだ。

どこにでもいける。

なにをしてもいい。

どんな順番で進んでもかまわない。

これがどんなゲームだと捉えるか自体、
プレイヤーに委ねられている。

僕らが生きている現実の世界だって、きっとそうなのだ。
どう生きたっていいし、本当はなんだってできる。
いつの間にか何かに縛られたり、
限界を感じてしまったりするだけで。

僕はこのゲームのおもしろさの本質って、
そんな自由を感じさせてくれるところ
なんじゃないか?と思っている。

大人になっても大切なことを教えてくれる
ゼルダの伝説が、僕は相変わらず大好きなのだ。

(おわりです。お付き合いいただきありがとうございました!)