ゼルダシリーズの新作(据え置きゲーム機での)は
だいたい5年おきに出るので、
僕はそれをオリンピックよりもずっと楽しみに生活してきた。
5年という周期で、人生のステージもだいたい変わっていく。
学生だったのが会社員デザイナーになり、
そこから独立して漫画家・イラストレーターになり…
といった具合に。
物心ついた頃から絵を描いてきた僕は、
寄り道することなくクリエイターの道を選んだわけだが、
その中でゼルダへの視点も変化していった。
ただただ少年の冒険心で楽しんでいただけだったところに、
自然とゲームの向こう側にいる作り手たちへの興味も加わっていった。
「ゼルダ制作チームの人たちって、
もしかして凄いことやってるんじゃないか?」
小学生の頃の自分でさえ、その凄さには薄々気づいていた。
・ゼルダの伝説 時のオカリナ(1998年)
・〃 ムジュラの仮面(2000年)
・〃 風のタクト(2002年)
・〃 トワイライトプリンセス(2006年)
・〃 スカイウォードソード(2011年)
・〃 ブレス オブ ザ ワイルド(2017年)
…とシリーズを重ねていくたびに
それは確信に変わっていく。
簡単に説明すると、
ゼルダの伝説シリーズを構成している要素はだいたい以下の通り。
▶︎舞台
・ハイラル王国…シリーズを通してだいたいここが舞台。雄大な
大地の中に、陸・海・空さまざまな種族が生息している。▶︎キャラクター
・リンク…主人公。ハイラルの勇者。緑の服と帽子が目印。
・ゼルダ姫…ヒロイン。ハイラル王国の王女。
・ガノン…リンクの宿敵。世界を我が物にしようとする魔王。
作品の時系列やキャラ設定はシリーズごとに異なっていて、
それぞれが独立した作品になっている。
毎回だいたい同じキャラと同じ舞台…というと
マンネリにならんの?と心配になるところだが、
新作のたびに新鮮な要素を取り入れて来てくれるので、
そんな心配はもっての外だ。
ある時は仮面の魔力でいろいろな種族に変身して戦えたり、
またある時は、コントローラーを振ると
リンクがプレイヤーと同じ動きで剣を振ってくれたり…と、
その時々でゲーム機の特性を活かした面白い遊びを仕掛けてきてくれる。
毎回、新作の告知映像が出るたびに
今度はどういう世界観なんだろう?何を企んでいるんだろう?と
予想するのが楽しみでしょうがなかったし、
デザインや世界観のひとつひとつにある
意図を読み解きながら、噛みしめるようにプレイした。
子供のころ何かに夢中になっても、
だいたいは成長とともに興味が薄れて行ってしまうもの。
だけど僕はこの作品を20年も追いかけている。
定期的に追いかける楽しみがあるだけで、
生きるのがどれだけ楽しくなることか…
身をもって教わってきた。
ゼルダがきっかけで自分でも
オリジナルの物語を描くようになった僕は、
漫画家とイラストレーターになった。
人を惹きつけ続けることがどれだけ大変なことか、
うっすらわかるようになったけれど、それでも
自分も誰かに楽しみを与えられる人になりたい、と願ってやまない。
ほとんどそのために作品を描いている。
人は「たかがエンターテイメントだ」と言うかもしれない。
だけどひとつのゲームが、こうしてひとりの人間の
人生を変えることが本当にある。
生きる楽しみを与えてくれただけでなく、
想像力を育ててくれたし、やがてそれは夢に進化して、
生きる道を切り拓いてくれた。
ゼルダは僕の人生に「スペシャル」をいくつもくれた、
大切な存在だ。
だからその向こう側にいる作り手の方たちには、
「このゲームを世に送り出してくれてありがとう!」と
お礼を言いたいくらいなのだ。
(つづきます)