もくじ
第1回朝と夜 2019-02-26-Tue
第2回かなしいとうれしい 2019-02-26-Tue
第3回晴れと雨 2019-02-26-Tue
第4回子どもと大人 2019-02-26-Tue

「The U(ザ・ユー)」ウェブマガジン編集長。イラストレーター。デザイナー。3月8日から3月15日まで原宿のカフェ「bio ojiyan cafe」で個展を開催。

ぼくの好きなもの混在。

ぼくの好きなもの混在。

担当・マスダ ヒロシ

第3回 晴れと雨

エチオピアでヒッチハイクをしたとき、
ヒッチハイクした車が横からバスに突っこまれた。
だれもケガはしなかったんだけど、
車がへこんでしまったので、警察署へ行くことに。

警察署といっても立派な建物ではありません。
外の牢屋に10人以上の囚人たちが詰め込められていて、
手を出しながら「おーい、おーい」と
話しかけてくるような場所だ。

運転手同士が警察と話しあってるとき、
バスの乗客のひとり、Amareという名前の青年に出合った。
彼にAmareの意味を聞いてみると、
照れくさそうに小さな声で「ハンサムなんだ」と教えてくれた。

「えっ、ハンサム?たしかに、ハンサムだもんね」なんて言ってると、
「実はもう1つ、いい天気っていう意味があるんだ。
晴れ、雨、晴れ、雨と、晴れと雨が繰り返される天気のことも
Amareといういうんだよ」と教えてくれた。

晴れと雨、どっちもあることが、「ハンサム(美男子)」、
つまり、晴れと雨、どっちもあることが、うつくしい。
この話を聞いて、ぼくはうれしくなった。
そして、晴れと雨どっちもある天気が好きになった。

日本では「雨のおかげで、、、」という会話より、
「雨のせいで、、、」という会話のほうが多いと思う。
雨は天気のなかで、ちょっとした嫌われ者だ。

そのあとに会いにいったエチオピアのハマル族は、
雨がふった翌日、雨がふったよろこびを表現するため、
手拍子をしながらみんなで輪になって踊っていた。

彼らにとっては、食物を育て、飲み水にもなる
雨はよろこびそのものなのだ。

「暮らしのなかで、どんなことが一番うれしいですか?」
ハマル族の長老にぼくは聞いた。
「雨がふることが、一番うれしいね」と長老は言った。

日本の雨がエチオピアに行ったら、照れちゃうね。

第4回 子どもと大人