もくじ
第1回朝と夜 2019-02-26-Tue
第2回かなしいとうれしい 2019-02-26-Tue
第3回晴れと雨 2019-02-26-Tue
第4回子どもと大人 2019-02-26-Tue

「The U(ザ・ユー)」ウェブマガジン編集長。イラストレーター。デザイナー。3月8日から3月15日まで原宿のカフェ「bio ojiyan cafe」で個展を開催。

ぼくの好きなもの混在。

ぼくの好きなもの混在。

担当・マスダ ヒロシ

第2回 かなしいとうれしい

2018年12月24日で31歳になりました。
31歳にもなると、友だちや親戚の結婚式に10回以上参加しています。
結婚式では、たのしみにしていることがあります。
それは、花嫁のお父さんのことばや表情に触れることです。
ぼくは、挙式や披露宴での「花嫁のお父さん」が好きなんです。

涙をこらえながら花嫁をエスコートする姿、
泣きながら謝辞をのべる姿を見て、
なぜだか小学生の頃から泣いていました。

なんでこんなにも感動してしまうのだろう。
それは、花嫁のお父さんのなかで、もっとも相反する感情
「かなしい」と「うれしい」がからみ合っているからじゃないかなあ。

「娘が巣立っていくかなしみ」と
「娘の幸せをよろこぶ」気持ちがごちゃ混ぜになっているんです。

大学時代の部活のマネージャーの結婚式に参加したとき、
花嫁のお父さんの最後の挨拶は、
相反する感情がぶつかって、お父さんがボロ泣き。

「あ、あ、あ、あ、あ」と、30秒以上かけて
「ありがとうございました」を口にする。

ことばとことばの間にある沈黙と呼吸は、
ことば以上に娘への想いを伝え、
部活の同期全員がもらい泣きをした。

ボランティアで知り合った女性の結婚式に参加したとき、
花嫁を抱きしめるお父さんの表情が、
これまたすてきだったんです。

娘をぎゅっと抱きしめている間は、
娘が自分の表情を見ることはないため、
この世のおわりのような表情を浮かべていた。

でも、抱きしめた手をそっとはなし、
娘の肩に手をやり、娘と目を合わせた瞬間の表情は、
かなしみの成分なんて1ミリリットルもない、満面の笑みでした。
お見事です。

ああ、自分の娘が結婚したら、ぼくはどんな風になってしまうんだろう。
娘も、お嫁さんも、ましてや彼女もいないのに、
今からソワソワしています。

第3回 晴れと雨