鬱屈した日々を経てようやく入った大学で、
最初は燃え尽き症候群と劣等感を引きずり
気後れして過ごしていましたが、
2年目くらいには環境にも慣れてきて
課題とバイトを繰り返しながらも、
なんとか楽しく過ごせるようになっていきました。
私はデザイン科に進学したので
授業で無理をして絵を描くことはほぼありませんでした。
次第に自然と絵を描くことへの関心が薄れていき、
代わりにデザインを通じて学ぶ写真や文字のことなど、
これまでにない世界が広がっていきました。
「ことば」に対する興味も湧き始め、
コピーに関心を持ったり、小説を読んだりしながら
様々な表現方法があることが
少しずつですが、わかるようになっていきました。
そんなある日、
当時私はケーキ屋でアルバイトをしていたのですが、
私を美大生だと知っている店長が
店頭用パンフレットに載せる
焼き菓子の絵を描いてほしいと言ってくれました。
今なら両手を上げて勢いよく
「やります」と言うのですが、その時の私は
「美大生だからって絵が描けるわけじゃないです。」
とか歯切れの悪いことを言って断りました。
2浪もして美大に行かせてもらって、
絵を描くチャンスを与えてもらって、
本当に何を言っているのかと呆れるばかりです。
本当は聞いた瞬間、
描きたいと思っていたんです。
だけどその気持ち以上に、
描くことが怖い気持ちが溜まっていました。
描きたいけど、絵がイマイチでせっかく頼んでくれた
店長をがっかりさせたらどうしよう。
もう絵を描くことで傷を負いたくない。
それなら描かないほうがいい。
そう瞬時に判断して言い訳にもならない
わけのわからない言葉で気持ちを濁し、
結果後悔だけを残しました。
そしてその話はそのまま
別の美大に通っていた子のところへゆき、
出来上がったパンフレットには鉛筆で描かれた
とても素敵な焼き菓子のイラストが載っていました。
それを見た時、あまりにも情けない気持ちになって、
私はもう絵は描けないのかもしれないと感じました。
絵を描くことだけが大事なわけじゃないし、
私が描かなくても描く人は沢山いる。
きっと自分にはもっと合う何かがあるはずだから
それを探していけばいい。
そう自分に言い聞かせながら
大学生活を過ごしていきました。
