燃え殻さん×糸井さん銀座ロフトでの対談
第３回 小説のバックには音楽が流れている
- 燃え殻
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暑いですね、ちょっと脱ぎます。
（ジャケット脱ぐ）
- 糸井
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書くってことの続きですが
いいなと思ってスケッチするみたいに覚えているっていうのを
すぐ書くんですか？それとも覚えているんですか？
- 燃え殻
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両方ありますが、最近はすぐ書くようにしています。
選ばないようにしています。
ちょうどそこに展示させていただいてるんですが
中学生や高校生時代はぼくの小説にも出てきた
横尾忠則の展覧会のチラシを
取っておいたんですよね。
あとは神保町の古雑誌屋によく行って、
いろんな人のコピーを切ってファイルしてたんですよ。
- 糸井
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うんうん。
- 燃え殻
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資料集めって自分で名前つけて、毎週集めてたんです。
- 糸井
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イチローがバッティングセンターに通ってた、
みたいなもんだね。
- 燃え殻
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そうかな？そうかもしれない。
いつ役に立つかわからないけれど、とにかく集めていたんです。
もしかしたら今日の展示や小説のために集めていたのかな。
- 糸井
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ただ集めていたんだ。
- 燃え殻
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そうなんです。
自分として持っておきたい、
いつか何かになるんじゃないかという
淡い淡い宝くじのようなことを思いながらやっていた。
こうなりたいなという努力じゃない努力をすごくしていた。
- 糸井
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みんなもそういうのするのかな。
俺はそういうのちょっとしていたかもしれない。
そして、他人がやっていることやよその人が表現したことも
もうすでに自分の物語なんですよね。
- 燃え殻
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そうだと思います。
だからコラージュのようにいろんなものを集めてて
もうこれは俺しか知らないんじゃないか、
友だちに教えなきゃ！みたいな。
- 糸井
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「いいぞ、あれ」みたいな。
- 燃え殻
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そうです。そういうことのためにも集めていたのかなあ。
- 糸井
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友達にもいた？そういう人。
そういう話を聞く側になったことある？
- 燃え殻
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あんまりないかな。
いや、むしろ自分が伝える側でしたね。
- 糸井
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それはもう表現者としての運命ですかね。
- 燃え殻
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周りも聞いてくれて、いい人でしたから。
- 糸井
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人が思ったことを刻んでおきたい気持ちって
とても貴重だよね。
そして、そこに自然に流れているのが音楽でしょ。
流れてますよね。
- 燃え殻
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そうですね、流れてます。
だから小説の中にも音楽を所々に挟んでいったんです。
この場面でこの音楽が流れていたら嬉しいなっていうのと
まぬけだなっていうのその両方で音楽が必要でしたね。
- 糸井
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うんうん。
- 燃え殻
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音楽があると読んでくれている人がさらに共鳴というか
共有や共感してくれるんじゃないかなって思ったんです。
- 糸井
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音楽って聞きたくなくても耳に入ってきちゃうじゃない。
でもその音楽まで含めて思い出だ、みたいなのは
あとで考えると嬉しいよね。
- 燃え殻
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そうですね。
景色や空気に音楽を重ねることで
共感が深まる気がします。
この小説でいうと、最後同僚と別れるシーンがあるんですけど
悲しい音楽が流れて欲しいじゃないですか。
でもそこでAKB48の新曲が流れるっていうのを
ぼくは入れたかったんですよね。
- 糸井
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いいミスマッチですよね。
- 燃え殻
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お互いもう会わない、でもそれは言わないで
お前生きてろよって言ってるときに
AKB48の曲がのんきに流れてるって
「あるよな」って思ったんです。
- 糸井
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あるある、大いにある。
自分が主役じゃないのが世の中だっていうのを表すのに
外れた音楽を流すっていうのがすごくいい。
自分のためじゃない世の中にいさせてもらっている感じ。
- 燃え殻
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あー、なるほど！今思いました！
どうしてAKB入れたんだろうって（笑）
- 糸井
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燃え殻さんの小説の中にいっぱい出てくるのってそれですよね。
俺のためにあるんじゃない街に紛れ込んでみたり
俺のためじゃないパーティーに参加してみたり。
- 燃え殻
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ぼく自身がそこに所在無し、みたいなところで
生きているので。
この前、中華街で手相を見てもらったら
未来がないって言われたんですよ。
ひどくないですか！？お金払っているのに。
- 一同
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笑
- 燃え殻
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でもまあぼく自身所在がない感がずっとあって。
どこにも居場所がないっていう感じで生きてて
だから居場所がないっていう共通言語の人と
- 糸井
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会いたい？
- 燃え殻
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会いたい。いますかね。
- 糸井
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いや、みんなどっかで同じように
感じているんじゃないですかね。
- 燃え殻
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えー、感じてますかね。
- 糸井
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うん。
「90年代の空気を書きたかった」じゃないけど
とりあえずこの言葉で納得していこうっていうところに
自分を置いて、今は考えないようにしようって
なんとなくそうしてるんじゃないかな。
- 燃え殻
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ああ。
- 糸井
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自分の居場所よりも、とりあえずこの商品どう売ろう、とか。
やらないと怒られるってことをまず先にしますからね、人って。
- 燃え殻
-
なるほど。
