- 燃え殻
-
この夏、いろんなひとに、取材や対談でお会いして。
本当に勉強になったし、みんな、いい人だったんですけど、
自分がいかに何でもないかがわかったんです。
- 糸井
-
ぼくが、燃え殻さんについて、
あなたはすごいですって、はっきり言えるものは、
とんでもない角度からいろいろ質問受けてる人生相談。
- 燃え殻
-
あああ。
「文春オンライン」でやっている。
- 糸井
-
あの答えてる燃え殻さんは、
すっごく同じ場所に立ってて、
一生懸命考えてて、
エッセイでも何でもないんだけど、
ものすごい発見もあって、
全部面白い。
- 燃え殻
- えー、ありがたい。
- 糸井
-
あれがもし職業名であるならば、
人生相談士っていうのになってもいいくらい、いい。
- 燃え殻
- また怪しい(笑)。
- 糸井
-
『谷川俊太郎質問箱』っていう
谷川俊太郎さんの人生相談の本を「ほぼ日」で
出してるんだけど、あれぐらい面白い。
- 燃え殻
- ええ!?
- 糸井
- 本当にそう思う。
- 燃え殻
- ああ、ありがとうございます。

- 糸井
- 本当に、一生懸命やってますよね。
- 燃え殻
- もう一生懸命やるしかないし‥‥
- 糸井
- そうですよね。
- 燃え殻
-
ぼくが雑誌とか本とかテレビで観てた
糸井さんみたいな方々には
かなわないって思っていたけど、
会ったら、失礼なんですけど、
「あ、人間じゃん!」って思ったんですよ。
- 糸井
- いやいや、うん。
- 燃え殻
-
それで、人生相談にくる相談も、
ぼくの人生のどこかで、まったく同じことはないけど、
そういう気持ちに俺もなったことあるよ、っていうこと
ばかりなんですよ。
- 糸井
- うん、うん。
- 燃え殻
-
性別が違かったとしても、
年代が違かったとしても、
生きてた場所だったり、職業が違かったとしても、
ああ、その気持ちに近い気持ちに
俺は、小学校のときにその気持ちになった
って思うんです。
- 糸井
- ああ、うん。
- 燃え殻
-
で、まずその話をしよう、と。
その人と握手したいというか、
俺は、直接そうじゃないかもしれないけど、
あなたと同じような気持ちになった。
それで、この話なんだけど、
もしかしてこうなんじゃないかな。
もし、ぼくがあなたの立場だったらこう思う。
違ったらごめんなさい。
ぐらいまで入れるっていう感じですよね。

- 糸井
-
何よりも、ぼくがいいと思うのは、
燃え殻さんのいい意味での気の弱さがあるおかげで、
その相談してきた人に
嫌な思いをしてほしくないっていうことですよね。
- 燃え殻
- ああ、それ思います。
- 糸井
-
本当に一番効率的に回答するなら、
今は悲しいかもしれないけど、絶対このほうがいいからって
その人を1回傷つけてでも答えるということは、
ありますよね。
- 燃え殻
-
そうですね。
でも、自分の悩みをネットにメールするくらい、
傷ついたり、悩んだりしているので。
- 糸井
- うんうん。
- 燃え殻
-
もうそこまで悩んだら、半分いいよって。
それを投げ出さなかった時点で、すごいなあ、みたいな。
- 糸井
-
だから、あれは人生相談に答えてるというよりは、
その人と隣り合わせで慰めてるんですよね。
- 燃え殻
-
ああ、そうです。
そう思ってました、ぼくは。
傷がかさぶたになって、それが取れて、
きれいになりましたっていう、ことばかりじゃないから。
- 糸井
- そうそうそう。
- 燃え殻
-
血を止血しながらでも
生きていかなきゃいけないじゃないですか。
- 糸井
- そう。
- 燃え殻
-
悩みで言えば、「一旦保留にしようぜ」っていう。
そういう人生相談が、なんでなかったんだろうって思って。
- 糸井
- それですよね。

- 燃え殻
-
昔の手帳を見ると解決してないことばっかなんですよ。
今の自分はすごい成長してるっていう優越感のもとに
手帳なんか見てるわけじゃなくて。
俺、昔のほうがちゃんと考えてる、とか。
- 糸井
- あるある。
- 燃え殻
-
保留にしたことによって、
それぐらい自分でも忘れられる。
- 糸井
- うん。
- 燃え殻
-
それによって、将来の自分が解決してくれたり、
もう一回置いとこうかって思ったりしながら
生きていくと思うんですよね。
- 糸井
-
泣いてる最中に説明されても、困るんだよね。
「それはギリシャ時代からずっと言われてるんだ」
なんて。
- 燃え殻
- 答え要らないときって多いと思うんですよ。
- 糸井
- ご飯食べるとかさ。
- 燃え殻
-
そう。
お腹いっぱいになると、けっこう解決したりしません?
- 糸井
- あと、歩く。
- 燃え殻
- ああ、歩くもあるかもしれない。
- 糸井
-
歩くは強いねぇ。
俺は歩くで大体ごまかしてるね。
- 燃え殻
-
書くのもそうなんですよ。
思ったことを、
いいことも悪いことも、書いちゃう。

- 糸井
- うん。
- 燃え殻
-
書いたときは直接的なことしか考えてないし、
あとで見て、「何書いてんだ」って思いますけど、
第三者的に見たときに、たまたま使えたりとか。
- 糸井
- そのときは、何に使うかわかんないけどね。
- 燃え殻
-
今、自分が必要だからやる努力じゃなくて、
何かわからないけどっていうものが
どのくらいあるかっていうことで、
人と対したときに
何か言葉が出てきたりすると思うんですね。
- 糸井
-
それね、今、「ほぼ日」で読者会をやってる
『うらおもて人生緑』という色川武大さんの本の中に、
「言い訳に使えるなと思った種は
どんどん仕込んでいきなさい」って書いてあって。
- 燃え殻
- はいはい。
- 糸井
-
それでしのげるだけで、
一番大事な粘膜のところに傷がつかないんだよね。
そういうのは技術なんだけど、
子どもに教えてあげたい感じはします。
- 燃え殻
- わかりますね。
- 糸井
-
いや、もう飽きたからやめますけど、
いくらでも続けてもいいんですけど。
- 燃え殻
- はい。
- 糸井
- どうもありがとうございました。
- 燃え殻
- ありがとうございました。
(おわります)
