- 糸井
- じゃあ、質問を受けるというのをやっちゃおうか。
- 燃え殻
- あ、いいですよ。
- 糸井
-
怖いな。えーと、質問を受けるっていうのをやります。
‥‥いないですか。
ちょっと今、逃げ腰だったね(笑)。
- 燃え殻
- いや、これ手挙げるの大変ですよねえ。
- 糸井
- じゃ、気さくに。誰も見てませんから。
- 燃え殻
- 給食費的な(笑)。
- 糸井
-
手を挙げてみてください。
あ、ダメだ。ちょっと追い詰めちゃったね。
今、テレビカメラ回ってます。
- 燃え殻
- とどめですね(笑)。
- 糸井
-
いないですね。
じゃ、もうベストセラー作家に振るしかないね。
さっき会場にいるのを見つけて。
『嫌われる勇気』の著者、古賀さんです。
- 会場
- (拍手)
- 古賀
-
ええと、
燃え殻さんのその20ひとつの手帳というのは、
それは捨てようと思ったりとか、
そういう機会はなかったんですか?

- 燃え殻
-
ぼく、物を捨てることとか、
人と縁が切れることがものすごい下手なんです。
集めたチラシとかファイルとか、
自分ですらガラクタだとは思うんですけど、
荷物が多少あったほうがぼくは一歩前に進めるというか。
- 糸井
- うん。
- 燃え殻
-
誰かに何かを言われることとか、任されることとか、
そういうものを持ってないと、
多分、ぼくは前に進めないから
絶対、一生捨てないと思います。
- 糸井
- それは個性なんですかね。
- 燃え殻
- そうかもしれない‥‥。
- 糸井
-
ぼくなんかは、捨てるというゲームの
痛みが好きなんですよね。
「捨てたくない」と思っている自分が、
捨てざるを得なくなったときに、
「ああ、捨てちゃったけど、とくに大丈夫だったなぁ」
みたいなことを涙と共に味わうのが好きですね。
- 燃え殻
- あー。
- 糸井
- それはぼくの個性ですね。
- 燃え殻
- じゃ、けっこう捨てるんですね。
- 糸井
-
捨てますよ。捨てますし、
捨てざるを得ないから捨てるのと、
それから、やけになって、部屋ごと捨てるとか。
- 燃え殻
- え?
- 糸井
- 本とか、本棚3つか4つ全部捨てたりします。
- 燃え殻
-
えぇー?
全部捨てて、で、また買ったり?
- 糸井
-
何回もやってます。
また買って、同じことになる。
- 燃え殻
- へぇー。
- 糸井
-
なんの差し支えもない。
あるとしたら、寂しさです。
- 燃え殻
- あぁ。
- 糸井
- でも、燃え殻さんと、根は同じです。
- 燃え殻
- 寂しさを感じちゃう?
- 糸井
-
その寂しさが、好きなんだと思うんだよね。
そのキュンとしてるときの自分のこう、実在感?
- 燃え殻
- 「生きてるー」みたいな。
- 糸井
-
俺、若いときに、ものすごく姿勢が悪かったの。
ロックだから、ね。
で、それを女の子に指摘されて
「だって、それが俺じゃん」って自慢そうに言ったら、
「へぇ、それが自分なんだ」って(笑)。
- 燃え殻
- (笑)

- 糸井
-
ものすごく腹が立ったんだけど、
まったくその通りだと思った(笑)。
- 燃え殻
- あぁ、でもわかるなぁ。
- 糸井
-
そんなことの積み重ねで、
獲得していった自分と、捨てていった自分の
両方があるよね。
- 燃え殻
- あー。
- 糸井
-
だから、それは、
前々からの自分が全て自分だと思っていると
バランスを欠くから、
そういう玉をカゴに入れてあげないと。
- 燃え殻
- うん。
- 糸井
-
それは、すごいインパクトがあって、
俺、今、姿勢いいです。
- 燃え殻
- ものすごい影響を受けたんですね(笑)。
(つづきます)
