燃え殻

昔、学級新聞を書いてたときに、
「なんで学級新聞を書いてるの？」っていうふうに
自分で本当に問いたくなったんです。
読んでる人いなかったから（笑）。

糸井

（笑）

燃え殻

別に担任に言われて書いたんじゃなくて、
勝手に発行してたんで。
よく政治団体とかやるじゃないですか。

糸井

不認可の（笑）。

燃え殻

そう、不認可（笑）。
だから不良にキレて破られたりしたんですけど、
それって何の意味もないのに書いてるんですよね。
でも、どこかで承認されたいとか思ってるんでしょうね。
気持ち悪いなあと思いながら。

糸井

気持ち悪いって自分で言ってますけど、
言われるうちにそうなのかもねって思うようになったんですか。
言われてるんですか。

燃え殻

言われましたね。

糸井

女に？

燃え殻

女って、なんで女なんですか（笑）。
いや、なんかね、でもね‥‥なんかすごい、
これ、ツイッターとかでリツイートとか
「ふぁぼ」みたいのがつくと、
それがいっぱいつくとうれしいって。
別にお金儲かんないじゃないですか。

糸井

儲かんない。

燃え殻

お金儲かんないのに、なんか嬉しいみたいな気持ち。
そういう時期というのがあったんですけど、
みんな、リツイートしちゃう年頃ってあるじゃないですか。
若い子とか。
で、なんか「ふぁぼ」しちゃう年頃みたいな、
別にもう、意味なんかないです。
でも、それを受けてるほうは、
ものすごい人気があるんじゃないかって思い始めちゃって。
「これヤバい。ヤバいというか気持ち悪いな」と。
今、その時期です。ボクは。

糸井

今、そのウケちゃって気持ち悪いなって。

燃え殻

そういうのは勘違いしてはいけないと思って。
何だろう、例えばツイッターとかでフォロワーが多い人が
「何かイベントをやります」っていうときの
危うさってありませんか（笑）。

糸井

だから、自分を支持してくれる人を集めるっていうのを
繰り返すと、仕事になるんですね。
で、そこで止まるんですよね。

燃え殻

止まる。止まるじゃないですか。

糸井

うん、止まるのがイヤだから、したくない。

燃え殻

ボクもそれがすっごいイヤなんです。すっごいイヤで。
同じ人から何度もお金を取るみたいな。
同じ人から何度も気持ちを取るみたいなことを‥‥

糸井

「気持ちを取る」ね、うんうん。

燃え殻

やりがちなんですよ。
ボクは「ツイート集みたいなのを出しませんか」って
言われたら絶対イヤだなって思ったのは、
そんなツイート集を買ってくれる人が
何千とかいたらいいなぐらいの話で。
そんないないかもしれない。
その人たちから金をもう１回取るみたいな、
そういう、何ていうんだろう。なんかすごい小さい‥‥

糸井

狭い感じね。

燃え殻

狭い感じで。
本当に思うんです、ボク。

糸井

それは、そう思ってる人はなんないです。
絶対なんないですよ。
で、それは、気づいちゃってる人はしないんですよ。
大丈夫です。燃え殻さんはなんない。

燃え殻

大丈夫ですかね。

糸井

燃え殻さんが自分では気付いてなくて、
「あなたはすごいですよ」っていう、
はっきりしたものがあって。
それは文春オンラインでやってる、
あのとんでもない角度からいろいろ質問受けてる人生相談。
あの答えてる燃え殻さんは、すっごく同じ場所に立ってて、
一生懸命考えてて、エッセイでも何でもないんだけど、
ものすごい発見もあって、全部面白い。

燃え殻

えー、ありがたい。

糸井

あれは、あれがもし職業名であるならば、
人生相談士っていうのに‥‥

燃え殻

また怪しい（笑）。

糸井

なってもいいくらい、あれはいい。
谷川俊太郎さんの人生相談の本をうちで出してるんだけど、
『谷川俊太郎質問箱』っていうので‥‥

燃え殻

はい、ボク、持ってます。

糸井

いいでしょう？

燃え殻

はい。

糸井

あれぐらい面白い。

燃え殻

え？

糸井

本当にそう思う。

燃え殻

ああ、ありがとうございます。

糸井

本当にあれ一生懸命やってますよね。

燃え殻

もう一生懸命やるしかないし‥‥

糸井

そうですよね。

燃え殻

ボクが雑誌だったりとか本だったりとかテレビで見てた
糸井さんとか堀江さんとか会田さんとかは、
「わっ、すごいな、全然かなわねえ」って思って。
当たり前なんですけど。
かなわないって思ったんだけど、会ったら「人間じゃん」って。
失礼なんですけど「あ、人間じゃん」って思ったんですよ。

糸井

はいはい。

燃え殻

で、何十パーセントかは多分、みんな一緒やんって思って。
だから人生相談みたいのを文春オンラインでやっていて。
相談が来たときに、どこかボクの人生の中のどこかで、
この小説とかも一緒かもしれないですけど、
そういう気持ちに俺もなったことあるよ
っていうことばかりなんですよ。
性別が違かったとしても、年代が違かったとしても、
生きてた場所だったり職業が違かったとしても、
ああ、その気持ちに近い気持ちに。
俺は全然違うけど、
小学校のときにその気持ちになったみたいな、って思うんです。

糸井

「経験してないけど、わかるよ」と近い感じで。

燃え殻

で、その話をまずしよう。
その人と握手したいというか。
「俺は、直接そうじゃないかもしれないけど、
こういうことであなたと同じような気持ちになった。
で、この話なんだけど、もしかしてこうなんじゃないかな。
もし、ボクがあなたの立場だったらこう思う。
違ったらごめんなさい」ぐらいまで
入れるっていう感じですよね。

糸井

そうですね。
何よりもぼくがいいと思ったのは、
燃え殻さんのいい意味での気の弱さがあるおかげなんだけど、
その相談してきた人に
「イヤな思いをしてほしくないな」っていう感じが
伝わってくるところなんですよ。

燃え殻

ああ、それ思います。

糸井

本当に回答するっていうのを一番効率的だったり、
一番真実に近いところで回答するんだったら、
その人を１回傷つけてでも、
これは掘り下げたほうがいいんじゃないか
ってことはあるわけで。
で、今までの人生相談なんかでも、
いい答えはいっぱいあるんですよね。
ぼくもそれはよくやるんです。
それも、今は悲しいかもしれないけど
絶対このほうがいいからっていうのは、
ぼくは言うことはあるんです。
だけど燃え殻さんは、その人がイヤな目をしませんように
っていうのを前提にしながら、
こういうおじさんがいたんだけどとか（笑）。

燃え殻

いや、もうそうです。
悩み相談で、あれガチしてもらってるんですよ。
だからもう「拙くてもそのまま載せてください」に
してるんですよね。
そうじゃないとつまらないんで。
ボクもやる気起きないんで。
で、そうすると、なんかレスキューじゃないですか。
自分の悩みがあって、さらにそれをネットにメールするって、
熱量の落ちなさが半端ないというか、相当悩んでる。
もしくは、まあ、自分としても答えが欲しいというか、
それくらい真剣なんで。
ということはそれぐらいもう傷ついたり、
それぐらい悩んだんで、
もういいじゃないかってボクは半分思ってて。
もうそこまで悩んだら、半分いいよ。
「それを投げ出さなかったという時点ですごいなあ」みたいな。

糸井

だから、あれは人生相談に答えてるというよりは、
その人と隣り合わせで慰めてるんですよね。

燃え殻

ああ、そうです。そう思ってました、ボクは。

糸井

だから、いっぱいいろんなことを
難しいこと言った時代があったけど、
例えば女の子がタレントさんのどこが好きってときに、
「顔」とか言うときあるじゃないですか。
あれ、あそこまでぐるっと回るまでには
ものすごい歴史ありましたよね。
でも、「顔」って言えるとこまで来たわけで、
そこから何考えるかってところに、
慰めの重要さもわかってもらう時代が来るような気がする。

燃え殻

傷がかさぶたになって、
それが取れてきれいになりましたって
すごく素晴らしいですけど、
そんなことばっかじゃないから。

糸井

そうそうそう。

燃え殻

そのかさぶたでもいいし、
血を止血しながらでも
生きていかなきゃいけないじゃないですか。

糸井

そうそうそう。

燃え殻

そういうことを、まあ悩みで言えば、
「一旦保留にしようぜ」っていう
人生相談ってなんで無かったんだろうって。

糸井

いやー、燃え殻さんがやってますよね。

燃え殻

ボク、一旦保留にしたんですよ。
で、一旦保留にして生きてこれたというのがたくさんあって。
その手帳もそうかもしれないですけど、
手帳を見ると解決してないことばっかなんですよ。
「成長してなかった自分よりも
今の自分はこれだけすごい成長してる」っていう
優越感のもとに手帳なんか見てるわけじゃなくて
「うわー、俺、これ、昔のほうがちゃんと考えてる」とか。

糸井

あるあるある。

燃え殻

でも、それを見る事ができるのもすごくよくて、
それぐらい保留にしたりとか、自分でも忘れられる。
保留にしたことによって。
それで一端置いといて、将来の自分が解決してくれたり、
将来の自分をもう一回置いとこうかって
思ったりしながら生きていくとボクは思うんですよね。
そういうほうが、何ていうんだろう、リアルなような気がして。
全部がきれいに片付いてくるほうが、そのほうがいいけども…。

糸井

グシャグシャしたことでも、語ってるうちに泣いちゃって
大声出したりするじゃない？
テーマを忘れて、泣き止むかどうかになりますよね（笑）。

燃え殻

わかります、わかります。

糸井

子どもとかでも、取りっこしてたとか引っ掻いたとかって話で、
ウワーッて泣いて、止まると終わるじゃないですか。
あの、なんか泣いてるだけって状態に対して、
燃え殻さんが手を差し伸べるのがなんか、
「あんた、もう一生の仕事にしなさい、それを」って
思いますよね。
本当、だから、あなたモテるんですよ。
わかるでしょう、だってこの人モテるの。

燃え殻

モテない、モテない（笑）。

糸井

女の人はものすごく頷く。
それで、田中泰延とか怒るんです。
あの人は全部解説できますから。
慰めてる最中も、
「それはギリシャ時代からずっと言われてるんだ」って。

燃え殻

（笑）。
しっかりしてるんです。

糸井

しっかりした知識を持てと。

燃え殻

そうそう。
でも、それは男同士で「あいつ、すごいな」って
言えばいいんだけど、
今泣いて「痛い」って言ってるときに、
それ説明されても困るんだよね。

燃え殻

答え要らないときって多いと思うんですよ、ボク。人生で。

糸井

ご飯食べるとかさ。

燃え殻

そう。お腹いっぱいになると、けっこう解決したりしません？

糸井

あと、歩く。

燃え殻

ああ、歩くもあるかもしれない。

糸井

歩くは強いでー。
俺は自分は歩くで大体ごまかしてるね。

燃え殻

歩くとアイディア出ますしね。

糸井

アイディアも出るし、あと「これじゃないな」っていうところに行きそうになってる問題が忘れられますね。
歩くは本当にいいんだ。

燃え殻

いいですね。

（つづきます）