燃え殻×糸井重里対談キラキラの100円玉でありたい。
担当・上條

第3回 100円分のコミュニケーション
- 燃え殻
-
会田誠さんと対談したときも、
「そんなに緊張することないよ」って言われました。
「でも、メモ取ってる人がいるんですよ」って言ったら、
「メモのこと忘れるぐらい適当な話しよう」って(笑)。
- 糸井
-
アーティストだね、やっぱりね。
- 燃え殻
-
ああって思いました。脱力しました。
- 糸井
-
でもあの人は、すごく礼儀正しいでしょう?
仮面かぶって、大人やれるタイプでもあるよね。
- 燃え殻
-
そう。スーツ似合うんです。
- 糸井
-
いや、そういうポジションを
行ったり来たりできる人がいるんですよ。
たぶん、ぼくもそのジャンルに入るんだと思う。
- 燃え殻
-
あ、そうですよ、きっと。
- 糸井
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下ネタの次のタイミングで
すごく真面目なこと言う、みたいな(笑)。
- 燃え殻
-
でも、そこの行き来がうまくできない人って
けっこういるじゃないですか。
- 糸井
-
下ネタでも、下に行ったっきりの人とかね(笑)。
- 燃え殻
-
そう。あと、女の人でもクスッと笑える下ネタと、
潮干狩りができるぐらい引かれちゃう下ネタってありますよね。
- 糸井
-
うん(笑)。
- 燃え殻
-
あれ何なんだろうな。
- 糸井
-
描写としては下手な下ネタの方がいいんじゃないですか。
上手過ぎたらダメ。
「あの人の下ネタはいやらしい」って言われたら、
ダメだと思う。
- 燃え殻
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そう、ダメなんですよね。
- 糸井
-
何だろう、「いいお天気ですね」っていうのもさ、
心から言ったらいやらしくない? それだけで。

- 燃え殻
-
情感たっぷりな「いいお天気ですね」って嫌ですねえ(笑)。
- 糸井
-
嫌でしょう?(笑)
知り合いで、お天気の話をするだけなのに、
悲しそうに、暗そうに言う人がいるんだよ。
いつでも文句言うの、何かに。
暑ければ、嫌そうに「暑いわ~」って。
だから、俺「いや、暑くないです」
とかけっこう言っちゃう(笑)。
- 燃え殻
-
汗びっしょりかいてるのに(笑)。
- 糸井
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うん。
- 燃え殻
-
心が通わない方がいいことっていうのもあるんですね。
- 糸井
-
通うにしても、重すぎるのは嫌だよね。
10円分渡して10円分返す、みたいな。小銭のやりとり。
- 燃え殻
-
それくらいがちょうどいい距離感なのかな。
- 糸井
-
たとえばぼくが今、燃え殻さんに100円あげたとするじゃない。
「まあ、これで温かいものでも食べて」って。
そしたら、そのまま受け取っても、
お互いにギャグになるじゃないですか。
でもこれが6800円ぐらいになったら、
「何、どうしたんですか?」ってなりますよね。
- 燃え殻
-
それは確かに、ちょっと‥‥

- 糸井
-
「この人は自分をどう見てるんだろう」とかさ、
「この人、なんか変なことするな」とか考えちゃってさ、
気持ち悪いですよね。
だから基本は、やっぱり100円玉の流通ですよ。
- 燃え殻
-
日常のコミュニケーションとしては。
- 糸井
-
うん。
そのときに、偶然その100円が、
「何この100円!」っていうくらいに
ピカピカしているときがあるとうれしい。
鏡みたいに光ってますみたいな。
そういうのうれしいですよね。
- 燃え殻
-
「これ、取っとこう!」ってなりますよね。
- 糸井
-
うん、あると思う。10円でもそれはあるよね。
そういうことが楽しいの。
それ以上は相手の心に立ち入っちゃうんだよ。
- 燃え殻
-
考えさせちゃう。
- 糸井
-
そうですね。
だからたぶん、
燃え殻さんがTwitterで小さいエッセイみたいな
言葉をつぶやくときとか、
あれ100円とか10円の話なんだけど、
その100円が「なんで磨いたの、そんなに!」
っていうくらいにピカピカしてるときがあると、
人はうれしいんですよね。