- 糸井
- しかし、よく頑張ってるよね。
- 燃え殻
- あ、久しぶりに褒められた(笑)。
- 糸井
-
よく頑張ってるよ。
いろんな、いいこともストレスだし、
悪いこともストレスなんだから。
豪華マンションに引っ越したとしても、
それはストレスだからね。
- 燃え殻
- ああ、最初は。
- 糸井
-
最初はっていうか、環境が変わったら、
人体が変わったのと同じだから、いわば。
だから、あらゆる変化は、ストレスなんですよね。
- 燃え殻
-
それで言えば、ここ最近は、
今までの人生にないくらい、「変化」しかしてないですね。
でも、それに少しだけ慣れましたね。
- 糸井
- いや、たいしたものだ。
- 燃え殻
-
フェイスブックに、
「1年前はこれしてましたよ」って
知らせてくる機能あるじゃないですか。
- 糸井
- ああ、あるね。
- 燃え殻
-
それで最近、ちょうど一年前に
糸井さんと一緒に撮った写真が出てきたんですよ。
- 糸井
-
ああ。
去年銀座ロフトのイベントでお話したときですね。
- 燃え殻
-
ぼくあのとき、人前で話すっていうことが
人生初だったんです。
- 糸井
- そうでしたか。
- 燃え殻
-
いや、緊張しましたよー。
それで、さっきのフェイスブックで、
1年前の写真を見たときに、
「あ、この頃と比べたら少し慣れたかもしれない」
と思ったんですよ。
- 糸井
-
人前っていう意味はつまり、
知らない人が自分の話を聞いてるってことか。
そういう機会はなかったんですか。
- 燃え殻
-
ない、ないですよ!
糸井さん気軽に誘いましたけどね、ロフトへ(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 燃え殻
-
すごい人って気軽に誘うんだなーと思いました。
会田誠さんもそうだったんです。
会田誠さんから飲みに行かないかって言われたから、
「行きたいです」って言ったんです。
そしたら人前でした(笑)。
- 糸井
-
でもぼくは、会田さんみたいな芸術家じゃないんで、
「よかったら来ていただけませんか」
という誘い方だったと思います。
断る権利を与えてたはずですよ、たぶん。
- 燃え殻
- ありました、ありました。
- 糸井
-
ぼくはいつもどこかで、
「断られるんじゃないか」って思ってるんです。
- 燃え殻
- あ、そうですか?
- 糸井
-
思ってるんです。
そこをけっこう本気で思ってるんです。
- 燃え殻
- それは自分がガッカリしたくないからってことですか。
- 糸井
-
じゃなくて、自分も断る権利を持っていたいと思う方だから。
誘われても、「誰が何と言おうがそれは行きたくない」とか、
「ちょっと今は勘弁してください」とか、
いろいろあるでしょう。
だから、断れるような形で誘ってほしいなって思ってます。
- 燃え殻
- ああ、それはいいですねえ。
- 糸井
-
「すぐ来いよ」みたいなことを言える関係って、
今までにないかもな、俺。
娘にでもそうだな。
- 燃え殻
- ちゃんと選択肢を。
- 糸井
-
うんうん。
ノーと言える空き地を作る。
「もし空いてたら」とか。
- 燃え殻
- ぼくも絶対そうするんですよね。
- 糸井
-
それのおかげで、俺はだいぶ長生きできると思うよ。
その方がものすごく健康でいられる気がする。
- 燃え殻
-
ああ……、わかります。
実はぼく自身が、直前で嫌になっちゃうクセがあるんです。
たとえば、小学校からの友だちに焼肉に誘われたことがあって。
何度も行った焼肉屋だから、味もわかってて。
嫌なことが起きる可能性はほとんどないんです。
- 糸井
- 起きないですね、うんうん。
- 燃え殻
-
なのに、直前になって「行きたくない」
ってことがあったんです。
そのときに、「ごめん、俺、今日行きたくない」って
彼に正直に言えたんですよね。
- 糸井
- そう言えたんだ(笑)。
- 燃え殻
-
言えたんです。
そしたら、「まあ、そういうこともあるわな」って
そいつが言ったんですよ。
本当に友だちだなって思いました。
- 糸井
- それは友だちですね。
- 燃え殻
-
うん。
でも、その状況だったら、
ほとんどの場合、我慢して焼肉に行くじゃないですか。
- 糸井
- ドタキャンってやつですよね、いわゆる。
- 燃え殻
-
ドタキャンはしちゃいけないって、
社会ではよく言われるじゃないですか。
だから、ストレスが溜まってくるんです。
- 糸井
-
ぼくは、ドタキャンをしないために最初から断る
っていうのが、どんどんできるようになった。
それも健康でいる秘訣ですね。
- 燃え殻
-
どうやって断るんですか。
だってたとえば、具体的に
「何月何日にいきましょう」って言われたら、
「その日は用事があって……」って断れますけど、
もっと漠然と「じゃ、今度ご飯食べましょう」
って言われたとき、それを断ったら
「もう、一生おまえとは会いたくない」って話になるでしょう。
それはやっぱり感じ悪いから、
とりあえずは「あ、そうですね」って
言わなきゃいけないじゃないですか。
- 糸井
-
うん、そこは言う。
いや、言わないときもあるかな。
「ごはん行きましょう」って言われたら、
とりあえず「あー」って返す(笑)。
- 燃え殻
- 「あー」って(笑)。
- 糸井
-
「んー」「あー」とか。
そうやって、なんか音だけ出してるっていう。
断らないけどもそこに置きっぱなしにする感じ。
で、本当は行く気はあるんだけど、
今ものすごくドタバタしてるからご飯はちょっと、
みたいなときは、
「うーん」でも「あー」でもなくて、
「あ、いいね」って言って(笑)。
- 燃え殻
-
バリエーションがあるんですね。
ぼくは入り口が1つだから苦しいのかな。
- 糸井
- そうかもしれないね。
- 燃え殻
-
とりあえず「ああ、いいねえ」って
絶対言っちゃうんですよ、ぼく。
それで最終的にドタキャンしちゃうんですよ。
- 糸井
-
「男を狂わせるガール」みたいだね(笑)。
みんなに「私はあなたを受け入れる」
って言っちゃうんですよね。
その場をなんとかキープしたいっていうか。
- 燃え殻
-
そのクセがあるんです。
それで、どんどん自分を追い込んで行っちゃうんですよ。