もくじ
第1回家族の思い出。 2017-11-07-Tue
第2回母がつくる優しい手料理。 2017-11-07-Tue
第3回父がつくるプロの手料理。 2017-11-07-Tue
第4回息子が言えない感謝の気持ち。そしていま、約束します。 2017-11-07-Tue

大学3年生です。スポーツ新聞を作ったりしています。

僕の好きなもの</br>父と母の手料理

僕の好きなもの
父と母の手料理

担当・くりむらともひろ

第4回 息子が言えない感謝の気持ち。そしていま、約束します。

ここまで書けば、僕の好きなものが
父と母がつくる料理だということが、
多少なりとも伝わったのではないかと思う。

しかし、僕はここまで書いてきたような
「父と母の手料理が好きだ」というその思いを、
父と母に直接言葉にして伝えたことが一度たりともない。

ということに、この文章を書きながら気づかされた。

息子がこんなにも「父と母の手料理が好きだ」と
思っているなんて、ふたりは知るよしもないだろう。
僕にとって帰省の一番の楽しみが
家で食べる晩ご飯だということも、全く知らないはずである。

無論、ふたりに向かって「おいしい」と言った経験は
何度もある。
でも、今思い返すと、それは「おいしい?」とふたりに
聞かれた場合に限ってのことのような気がする。
自分から「これおいしいね!」ときちんと伝えたことは、
やっぱりないと思う。

僕は、父と母の手料理が楽しみで実家に帰る。

母は、僕が帰省するからといって張り切りすぎることなく、
昔と同じように少しだけつくりすぎる。
父も相変わらず僕の顔を見ながら、
「うまいか?」と問いかけてくる。
そしてそれらに対する僕の反応もまた、
昔と変わらないままである。
必要最低限の感想を述べるにとどまり、
食べ終わったらさっさと食器を片付け、
スタスタと自分の部屋に戻る。

なぜだろう。

ものすごく楽しみに、帰ってきているはずなのに、
どうして素直に心の底から
「いやあ、親父とお袋の飯が食いたかったんだよねえ」
と言えないのだろうか。

わからない、理由は全然わからない。
恥ずかしいからか?
それもあるだろう。

あるいは、少しの間しか実家に帰れないことで、
僕が心を必要以上に閉ざしてしまっているのかもしれない。

いずれにせよ、このままではダメだ。

ちゃんと、伝えよう。

「家のご飯を楽しみにしてたんだよ」
「これ本当においしいね」
「いつもありがとう」

それだけでもいいじゃないか。

感謝の思いは、いつも心の中にある。
そしてそれは、言葉や行動に変えなければ
伝わらない。

思いをかたちにするとき、
勇気は必要だし、恥じらいもある。

でも、言わなければ、伝えなければ、
この先ずっと、後悔し続けるに違いない。

だったら次に帰省したときは、
思いを言葉にして届けよう。

次の帰省はおそらく、年末年始になるだろう。
僕がここでこんなコンテンツを
つくっていることなど、つゆほども知らない父と母に、
素直な気持ちでこう言いたい。

いつも本当にありがとう。

(終わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました)