- 糸井
- 根拠はなくても水があるんです。
- 田中
- 根拠はなくても水がある。
- 糸井
-
水があれば、水たまりでも魚はいるんですね。
だから、僕の「リンダリンダ」は、
水と魚です(笑)。
- 田中
- なるほど。
- 糸井
-
広告を辞めるときの
「ここから逃げ出したいな」という気持ちと、
「水さえあれば、魚がいる」という期待の気持ちを、
肉体が「釣り」でつなげたんでしょうね。
- 田中
- なるほど。
- 糸井
- うわぁ、素敵なお話ですね。
- 田中
-
いや、本当に(笑)。
はぁ。
- 糸井
-
でも大勢の人たちに
わかってもらえるかどうかは
むずかしいねぇ。
- 田中
-
糸井重里さんにお会いして、
「身体性」の話に行くと思ってなかったから、
僕のこれからやっぱり変わってくると思います。
やっぱり肉体の重要性、
すごい大事だなと思って。
- 糸井
-
身体性の話の中で、
ちょっと編集的に都合悪いかもしれないですけど、
おしっこ我慢してるんですよね。
- 田中
- 今?
- 糸井
- 今。
- 田中
- それはね、止める人いないです。
- 糸井
- ちょっと行ってきます。
- 田中
- 惨事を招きますから。
- 糸井
- すいません。
(糸井退室)
- ――
- 惨事を(笑)。
- 田中
-
今ね、身体性について、
糸井さんが実証されています。

(糸井入室)
- 糸井
-
今までで人としゃべってて、
おしっこが我慢できなくて
中座したのは、
たぶん、僕2回目で…。
- 田中
- そんなに長い中で2回目なんですか(笑)?
- 糸井
-
そうです。
講演の途中でトイレに行ったことが1回あります。
もう1回は、
誰もトイレに立てないような、
出たくても言えないようなケースだったんですよ。
何かと言うと、高倉健さんなんです。
- 田中
- それは、それは無理ですね(笑)。
- 糸井
-
有名な話なんですけど、
健さん、電気点かないまま暗くなっても
しゃべってる人なんで。
僕は弱ったなぁと思って、
「すいません!」と言って。
- 田中
-
(笑)
僕が高倉健さんがすごいと認識したのは、
小学校の時に映画の記者会見をテレビで見て、
主演の高倉健さんが、
パシャパシャパシャッフラッシュが光る中、
「高倉さんは主人公と同じような立場になったら、
どういう気持ちになられますか?」と聞かれて。
「気持ちですか…」と考えて、
フラッシュがピタッて止まるじゃないですか。
何言うかと思って。
1分くらい、
放送事故かと思うくらい生放送が止まって、
シーンって。
記者が集まって…
1分くらい経ってから
「わかりません」て。
- 一同
- (笑)
- 田中
- さすがだなと。
- 糸井
-
高倉健さんて、
1人の人物が1つの企業でも
あるわけじゃないですか。
そのドライブは、
やっぱりすごかったんじゃないでしょうかね。
- 田中
-
ブランドそのものが、
歩いてるってことですもんね。
- 糸井
-
そういうことですよねぇ。
「さっき、信号待ってたね」って
電話を貰ったことがあって。
- 田中
-
(笑)
高倉健さんから?
- 糸井
-
そういうのって、自慢になるんですよね(笑)。
で、知ってますよね、そのことをね。
やっぱり実業家だと思いますよ。
俳優として素晴らしくよくできた
「高倉健」を抱えた社長だと思いますよね。

- 田中
- なるほど。
- 糸井
-
あの二人三脚はすごい。
でも「近所の人気者」になるのは
むずかしくなっちゃいましたよね。
- 田中
-
あぁ、なるほど。
生身の人が、
巨大化したブランドである自己を抱えて歩くのは、
矢沢永吉さんはもちろんそうですよね。
- 糸井
-
永ちゃんはすごいですよ。
たとえば、道をちょっと入った所に
イタリアンがあって、
僕がよく行ってた所なんだけど、
「この間、矢沢さんがお見えになって、
『何時ごろ何人とか入れますか?』って
予約して帰って、その後、
社内の人を連れて来てくれました」と。
みんなの分を予約して
顔出していくような人なんですよ。
- 田中
- 矢沢さんが?
- 糸井
-
うん。本当に「ご近所の人気者」なんですよ。
そんなことだらけですよ。
ロスの永ちゃんの家で
「バーベキューしよう」となって、
火の世話から何から全部永ちゃんがやって。
- 田中
- ご本人が(笑)。
- 糸井
-
みんな腹いっぱいになったかなと思ったら、
今度は居間にDVDをセットしてあって、
みんなで永ちゃんのステージを見る。
- 田中
- 見るんだ(笑)。
- 糸井
-
で、永ちゃん自身が、
さっき言った「受け手として」というのと
近いかもしれない。
「いいね、矢沢」って言うんだよ(笑)。
俺と一緒に行った若いやつが肩をこうやられて、
「矢沢、最高だね」って言う(笑)。
それはね、
「受け手の永ちゃん」なんだよ。
- 田中
- なるほど。
- 糸井
-
永ちゃんと初めて釣りに行った時に、
糸を通してあげて、ルアー付けて、
「これで」ってやったら、
「あ、糸井、糸井、ちょっと俺にやらせて」
って言うんだよ。
で、同じ向きにこう構えて、
「ここから、え?ここ通して?」というのを
全部真似してやって、
ルアー付けるのもじっと見てた。
- 田中
- 見よう見まねで。
- 糸井
-
そう。
「やっぱり自分でできた方がいいから」
って言うんだよ。
- 田中
- はぁ。
- 糸井
- それがあの人なんだと思う。
- 田中
-
ちゃんと糸を通すところから。
いやぁ、すごいなぁ。へぇ。

- 糸井
-
これは可能なんだっていう、
すごくいいモデルですね。
- 田中
- なるほど。
- 糸井
- 健さん、永ちゃん、泰延さんってね。
- 田中
-
とんでもないです。
前、吉本さんのお話でしたっけね、
お花見の時の。
- 糸井
- うんうん。
- 田中
- 最初に来て…。
- 糸井
- 午前中から。
- 田中
-
午前中から吉本隆明さんがいろいろ
セッティングをしていると。
- 糸井
-
そう。
自転車でブルーシートを背中に背負って、
1冊読む本を持って、
自転車止めてシートに石を置いて、
夜、人が集まるまで本読んでるんです。
- 田中
- はぁ。
- 糸井
- 鍋のセットとか持って行ったんじゃないかな。
- 田中
- すごいですね(笑)。
- 糸井
-
欠点は、鍋が上手じゃなくて、
「さぁやろう」という時に火が点いて、
グツグツ言い出すと、
鍋の具材を一遍に入れちゃう。
- 一同
- (笑)
- 糸井
-
「ちょっと、吉本さん、
それはどうかと思いますよ」と言うと。
- 田中
- (笑)
- 糸井
-
「あぁ、そうか、そうか」って
すぐ謝っちゃうんです。
- 田中
- すぐ謝る(笑)。
- 糸井
-
僕は「間違わない場所」みたいなのは、
吉本さんという見本がいたのが
でかいような気がしますね。
- 田中
-
本当にすごく大事なことで、
大阪弁ですけど、
「偉そうくならない」って。
- 糸井
-
そうですね。
鶴瓶さんとかものすごく上手ですね。
- 田中
- まったく偉そうくならないですね。
- 糸井
-
あれはもう鍛え抜かれた
偉そうくならなさですね。
一緒に大阪の街歩いたことがあって、
「お好み焼き食いに行こう」と言って。
鶴瓶さんだって気付きそうな人がいたら、
攻めていくもんね(笑)。
- 一同
- (笑)
- 田中
-
はぁ。
鶴瓶さんに、僕はそんなに面識がある
ということでもないんですけど、
一度、遅刻した時にどうするか
というのを鶴瓶さんが教えてくれたんです。
30分とか遅刻した時に、
「『すいません』はあかん。
『何や遅れて』ってみんな怒る」と。
「違う」と。「30分遅れたらどうするか。
ドアを勢いよくパーンと開けて、
『アウアウ、アウ、アウウウ、ウーッ』って
よだれをたらせば大丈夫だ」って。

- 一同
- (笑)
- 田中
-
「『大丈夫ですか!鶴瓶さん、心配ないですよ』と
必ず言ってもらえる」っておっしゃってました。
- 一同
- (笑)。
- 糸井
- あぁ、してそうだ(笑)。
- 田中
-
これはすごくね、僕、勉強になって。
絶対に「すんまへん」って
入ったらだめなんですって。
バーン!
「ウウ、ウンウン」
もう取り乱してしまって、
わけがわからない自分っていうのを作れば大丈夫。
- 糸井
- 身体性だね。
- 田中
- 身体性(笑)。
- 糸井
- 今日は、ここで終わりにして。
- 乗組員N
-
そうですね。
1時間予定ですが、2時間に。
- 田中
- いつもいつも(笑)。
- 糸井
- 収まらないよ、やっぱり。
- 田中
- いやぁ。
- 糸井
-
お疲れ様でした。
どうもありがとうございます。
- 田中
- ありがとうございました。
