もくじ
第1回手みやげのコミュニケーション。 2017-03-28-Tue
第2回「書きたい欲」が溜まっていた。 2017-03-28-Tue
第3回書くときは、自由でありたい。 2017-03-28-Tue
第4回「ブルーハーツ」と「釣り」。 2017-03-28-Tue
第5回身体から教わること。 2017-03-28-Tue

1987年生まれ。出版社で働いています。最近、ブラックコーヒーを美味しいと感じられるようになりました。

田中泰延 × 糸井重里</br>ふたりの書き手。

田中泰延 × 糸井重里
ふたりの書き手。

第5回 身体から教わること。

糸井
泰延さんにとっての身体性はたとえば、「バンドを組むこと」なのかもしれないし。
田中
バンドを、組む(笑)。今朝、燃え殻さんが「バンドやろうぜ」って言ってたんですよ。
糸井
浅生鴨さんはベースを買ったんです。
田中
ベースを、弾き始めたって(笑)。やばい(笑)。

糸井
きっとベースが足りなくなるだろうって、初めから思ったって。
田中
わははははは、やりたがる人いないから。
まぁね、僕も「俺が俺が」だから、高校時代に僕がボーカルをやってたバンドの名前は、「ヒロノブ&ジ・アザーズ」です。
一同
(笑)
田中
ひどいでしょう? 「&ジ・アザーズ」ですよ。それでよしとするメンバーも素晴らしいですよね、パンクですよね。
糸井
それは説得力あるね。メンバーもOKしたってことでしょう?
田中
うん。「これは誰が聞いてもひどいバンド名だと思うから、そこで不機嫌に弾いたら、たぶんお前たちは『最高』って言われるよ」って(笑)。
糸井
「これからどうなる?」なんてこと、ここじゃ、まったく聞かないですけど。
田中
ええ。
さっきのね、「ご近所」の話もそうですし、釣りの話もそうですけど、身体性の話に繋がると思ってなかったから、このお話を聞いて、僕のなかで何か変わってくると思います。
糸井
身体性の話の中で、ちょっと編集的に都合悪いかもしれないですけど。・・・・おしっこ我慢してるんですよね。
田中
今?

糸井
今。
田中
それはね(笑)、止める人いないです。惨事を招きますから。
乗組員N
惨事を(笑)。
糸井
すいません。ちょっと行ってきます。これね、すごい珍しい。
(言いながら、部屋を出ていく)

乗組員N
泰延さんは大丈夫ですか?
田中
僕は大丈夫です(笑)。水の話からつながる身体性について、糸井さんがまさに今、実証されていますね(笑)。

 
(——数分後、糸井さんが戻ってきました)
 

糸井
すごい身体性ですよ。
田中
はい、身体性が(笑)。
糸井
今まで人としゃべってて、おしっこが我慢できなくて中座したっていうのは、たぶん僕2回目で、
田中
そんなに長い中でまだ2回目なんですか(笑)?
糸井
そうです。講演の途中で行ったことが1回あります。
もう1回は、誰もトイレに立てないような、たとえ行きたくても言えないようなケースだったんですよ。何かっていうと、高倉健さんなんです。
田中
それは無理ですね(笑)。
糸井
弱ったなぁと思ったけど、「すいません・・・・!」って言ってトイレに行ったんですよ。あとで聞くには、健さんの前でトイレに中座したのは僕が初めてだったって。
田中
(笑)高倉健さんって言えば、小学生の時にテレビで、健さん主演の映画の記者会見を見ました。
主人公の気持ちについて質問された健さんが、「気持ちですか‥‥」って考え始めたら、それまでパシャパシャ光っていたフラッシュがピタッて止まるじゃないですか。で、放送事故かと思うほどシーンって1分くらい経ってから、「わかりません」。
一同
(笑)
田中
高倉健さんっていうのはどれだけ偉い人なんだ、さすがだなと。
糸井
そのあたりは「自分がどう見られているか」っていう健さんの自己管理は考え抜かれてたんじゃないでしょうかね。自分が1つのブランドでもあるわけですから。
田中
なるほど(笑)。同じ意味では、矢沢永吉さんもそうですよね。
糸井
永ちゃんはね、もっと上手。
田中
そうなんですか。
糸井
たとえば、自分でレストランに関係者のための予約をして、あとでちゃんと顔も出しにくるような人なんですよ。
田中
矢沢さんがご自分で予約を?
糸井
うん。あと、引っ越し先が見つからない人に物件見つけてきたり。でも「どこかに決まったの?」って聞いたら、「いや、決まらなかったんですけどね」って。
一同
(笑)
糸井
「決まらなかった」にできることも含めて、永ちゃんのほうが「ご近所の人気者」ですね。あとは、バーベキューの準備を自分でやったり、初めて釣りをした時には糸やルアーを自分で付けたいって言ったり。
田中
いやぁ、すごいなぁ。
吉本隆明さんも、みんなで集まる時にはよく、自ら準備をしてくださったとか。
糸井
そう。でも、料理の準備とか間違ってるときに教えると、だいたい「あぁ、そうかそうか」って謝っちゃうんです。
田中
あはは、すぐ謝る(笑)。
糸井
僕は、そういう“見本”を見てたせいか「人として間違わないこと」は何かを、すごく教えてもらった気がしますね。
田中
そうですね、これは大阪弁ですけど「偉そうくならない」って、本当にすごい大事だなって思います。
糸井
そうですねぇ。たとえば鶴瓶さんも、それをものすごく考えてらっしゃいますね。
一緒に大阪の街歩いたことがあって、人に気づかれそうな時こそ攻めていくもん(笑)。自分から「こんばんはぁ」って(笑)。
田中
いやぁ、本当に素晴らしい。僕が前に仕事でご一緒したときは、遅刻したらどうするかを教えてくれたんです。「会議室入って『すいません』はあかん。『何や遅れて』って、みんな怒るから」と。「ドアを勢いよくパーンと開けて、『あうあううぅ、うぅーー』ってヨダレをたらせば大丈夫だ」って。

一同
(笑)
田中
取り乱した自分をつくれば、「『大丈夫ですか鶴瓶さん、心配ないですよ』って必ず言ってもらえる」っておっしゃってました(笑)。
糸井
それも身体性だね。
田中
はい(笑)。
あの、ところで・・・・。ずっと思っていたんですけど、そのバッジは何なんですか(笑)?

糸井
これですか?
田中
そう。
糸井
服着たら付いてた。
田中
ははははは!
乗組員N
それは「ひろのぶバッジ」です。

田中
僕、途中から「あれ?」と思ってたんだけどさ(笑)。シャツが白でジャケットが黒だから、そういう模様かなと思ってたら(笑)。
乗組員N
いやいや、模様じゃないんです。
・・・・ちなみに1時間の予定ですが、いま2時間ですよ。
田中
わぁ、いつもいつも(笑)。
糸井
だから収まらないよね、やっぱり。
一同
(笑)
糸井
今日はどうもありがとうございました。
田中
ありがとうございました。

 
(おわります)