もくじ
第1回料理ができないから姑と同居。 2017-05-16-Tue
第2回子育てには一生懸命じゃなかった、のかも。 2017-05-16-Tue
第3回努力はしません。 2017-05-16-Tue
第4回夫婦って、似てくるものじゃないのね。 2017-05-16-Tue
第5回レコーダーがなくても。 2017-05-16-Tue

フリーランスのライターをしています。
旅先で、おいしいお酒とごはんを楽しんでいる時が心底幸せです。
Twitter:@yabu_tw

おかあさんって、どんな人?

担当・やぶ

第5回 レコーダーがなくても。

母へのインタビューはこのあとも続きましたが、
結論めいたところへたどり着くことはありませんでした。
実は、父親との思い出や、子どもへの想いなど、
「ちょっといい話」が聞けるのでは‥
という期待もあったのですが、
びっくりするくらい、出てきませんでした。

ただ、インタビューの数日後に、母が突然、
「あなたが一人暮らしを始めたとき‥」
と話し始めました。
 
両親ときょうだい3人、引っ越し荷物を積んだ車で
5時間ほどかけて東京まで行ったときのことです。
私と私の荷物がなくなって、
広くなった車で4人で帰ったときに、
「ひとり置いて来ちゃったなー」と思ったそうです。

ああ、そんな話が聞けて、よかった。

「あなたたちがかわいくて仕方なかった」より、
「あなたたちの人生はあなたたちのもので、
私とは関係ない」と言ってくれて、よかった。

用事がないかぎり連絡をとらないので、
半年声を聞かないことも珍しくない‥。
わが家はきょうだい3人ともそんなふうですが、
家族の話をすると、
なぜだか「仲が良いね」と言われます。
 
ずっとそれがふしぎだったのですが、
母の話を聞いて、すこしわかった気がしました。
愛しているとか大切だとか、
絵になる言葉はぜんぜんないけれど、
人としてちゃんと向き合ってくれている、
という安心感があるからかもしれません。

インタビューをしてみた今でも、
「おかあさんって、どんな人?」
と尋ねられたら、やっぱり言葉に詰まります。
それでも、へんにポジティブで、ドライで‥と、
説明するキーワードが少し増えました。

私と母も「1と1」なので、
ぜんぶわかり合うことなんて、
一生かかってもできないでしょう。
でも、わかろうとすることはできる。
これからはレコーダーを回さなくても、
きっといろいろ話すことができると思います。

(おしまいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!)