- ——
-
何年か前、私に
「結婚はしてもしなくても、
どっちでもいいんじゃない」
って言ったの、覚えてる?
子どもには結婚してもらいたいものなのかなって
思っていたから、びっくりしたよ。
- 母
-
うん、本当にどっちでもいいかなって思ってるんだよ。
仕事をしながら家事もして、って大変だろうし。
結婚する人が、
いっしょに家事をしてくれるならいいと思うけど。
- ——
- おとうさんは、まあやってくれるほうかな?
- 母
-
そうだね。
お風呂掃除なんかも、
やると決めたら半日がかりで徹底的にやるしね。
- ——
- ああ、趣味みたいなところもあるよね。
- 母
-
私は適当だから、掃除の仕方とかは
納得してないんじゃないかな(笑)。
その辺りはうまく補ってもらっていると思う。
- ——
- おとうさんとは、お別れの危機なんかはなかったの?
- 母
-
ああ、それはなかったね。
この間、ちょうど聞いてみたの、おとうさんに。
- ——
-
えっ!?
そんなこと聞いたの?
- 母
-
うん。
「離婚したいって思ったことあった?」って。
「べつになかった」ってさ。
私もべつになかった。
- ——
- じゃあ、結婚してよかった?
- 母
-
うん、悪いことはなかったよ。
でもねー、
テレビも音楽も好きなものがちがうんだよね。
同じテレビ番組を見ているのに、
ぜんぜんちがうところを見てるの。
「今のどういう意味?」って聞いても、
「え、そんなこと言ってた?」なんてかみ合わなくて。
ああ、同じものを目にしていても、
見ているポイントがちがうんだ、って、
この前初めてわかったの。
- ——
-
長年いっしょに過ごすと似てくるっていうけど、
そういうものでもないんだね。
- 母
-
基本的に、あまり同じところにいないもの。
おとうさんが庭仕事をしていたら、私はリビング。
私がキッチンにいたら、おとうさんは買い物、とかね。
あんまり別々のことをしているから、
ご近所さんからどんな夫婦に見えているのかなって
思うこともあるよ。
‥ああ、でも、みんなちがうしね。
お向かいさんも、お隣さんも、
みんなそれぞれちがうもんね。
- ——
-
そうだね。
私には、おとうさんとおかあさん、仲良く見えるし。
- 母
-
まあ、ちがう人同士、
1と1なんだから、ぶつかることもあるよね。
- ——
- ああ‥。
***
「1と1」という言葉に、はっとしました。
夫婦というものは、「1+1=2」である、
というイメージがあったのだと思います。
でも、30年以上連れ添っている両親でも、
「1と1」なんだ、と目からウロコでした。
いっしょに住んでいる家族って、
全員合わせて「ひとつ」だと思いがちですが、
そんなことはないんですね。
むりやりひとつにしなくても、
1と1でうまくやればいいんだ。

(続きます)