- ——
-
子どもってかわ‥、
ええと、見ていて面白いものなの?
- 母
- ‥どうかな(笑)。
- ——
- (笑)。
- 母
-
自分の子どもは、面白いとか考えたことなかったな。
そんな余裕、なかった。
- ——
- 大変すぎて?
- 母
-
うーん、おばあちゃんがかなり助けてくれたし、
そんなに苦労はしていないと思うんだけど。
でも、目は離せないから、疲れるよね。
この前、テレビを見ていたら
「子育てって楽しい!」って言ってる人がいて。
「私、楽しかったのかな?」って考えていたんだけど、
真っ最中はあんまりそういうことは思わなかったかなぁ。
幼稚園に行くようになったりすると、手が離れてきて、
自分の時間も持てるようになって、そうなるとちょっとは
楽しいって感じていたのかもしれないけど。
‥ようするに、今思えば大変だったってことかな?
- ——
-
(笑)。
うちって子どもが3人いるじゃない?
下の2人は1歳違いだし、それは、大変でしょ。
- 母
-
でもね、同世代のきょうだいっていいなぁと思ったよ。
あなたがいて、2つ下に弟、3つ下に妹でしょ。
3人で一緒に遊んでるのを見て、うらやましかったな。
私は弟と4つ離れていて、
あんまり一緒に遊んだ記憶がないのね。
だから、
きょうだいは年が近いほうがいいなって思っていたから。
‥うん、たしかに大変だった気がするけど、
もう忘れちゃったなぁ。
- ——
-
3人目の妹が就職したら、
一応子育てが終わったってことだよね。
「やったー!」とか、達成感はあった?
- 母
-
うーん、そんなこともなかったかな‥。
いつか手を離れるってずっと思っていたから。
- ——
-
なんか‥けっこうドライなんだね。
あ、いい意味でね。
- 母
-
ふつうは達成感を感じたりするのかなぁ。
子どもが巣立っちゃうとすごく寂しくなる人もいるけど、
そうでもなかったし。
- ——
-
子どもが1人いなくなり、2人いなくなり、
ついに3人いなくなっても?
- 母
-
前からそういうものだって思っていたのかもしれないね。
最後はおとうさんと2人に戻るって。
あなたたちの人生はあなたたちのもので、
私とは関係ないから。
***
「関係ないから」というのを文字にすると、
うんと冷たく見えるかもしれません。
でも、そんなふうには聞こえませんでした。
ふと、高校受験のことを思い出しました。
へんに頑固だった私は、
「絶対に本命に受かるから、
すべり止め受験なんてしない!」と言い張り、
ほんとうに1校しか受験しませんでした。
(今思うと恐ろしいです)
さすがに「もうひとつくらい受けておいたら?」
とは言われましたが、
それ以上、無理にすすめることはせず、
基本的に私のやりたいようにさせてくれました。
大学進学で家を出ると決めたときも、
「一度うちを出たら、もう戻ってこないんでしょ?」
と笑いながら言われました。
進学も就職も、何かを押し付けられた覚えがありません。
「子どもの好きにさせてあげよう」ではなく、
「もとから別々の人間なんだから」と、
人として尊重してくれていたのだと思います。
***
- 母
-
‥なんか私、へんなのかな。
それほど子育てに手を尽くしていなかったってこと?
一生懸命じゃなかったのかなぁ(笑)。

(続きます)