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-
半年くらい前に、家族で旅行したでしょう?
あのとき、20時くらいに家に着いて、
お惣菜を買ってこようか、って言っていたのに、
何品か料理を出してくれたよね。
疲れているのに、こんな日まで料理をするなんて、
本当にすごいなって思ったんだ。
- 母
-
そうだったっけ?
全部できあいのものだと悪いかな、
ってなんとなく思うんだよね。
- ——
- おとうさんに?
- 母
-
うん、そうだね。
やっぱりどこかで、
専業主婦っていう「仕事」だと思っているから。
稼いできてもらっているし、
こっちもちゃんとしなきゃ、って。
そうそう、今日味玉をつくったんだけどね、
この前おとうさんに
「最近、味玉が出てこないね」って言われたの。
「だって、前につくったときに
『おいしくない』って言ったじゃない。
だからもうつくるのやめたけど」
って答えたら、なんて言ったと思う?
「ふつうはそう言われたら、
もっと努力するものじゃないの?」って。
- ——
- ああー‥。
- 母
- だから、「努力はしません」って。
- ——
- (笑)。
- 母
-
おとうさんは、気に入らないときははっきり言うでしょ?
私、携帯電話もパソコンも使わないから、
レシピはノートに書いているのね。
反応が良くなかったレシピには
バツを付けたり、「不評」って書いたりしてるの。

- ——
- それで、もう二度とつくらない、と‥。
- 母
- そう。
- ——
- でも、味玉はまたつくったんだね。
- 母
-
うん、仕方なく(笑)。
前とは違うレシピでね。

***
料理をつくって「おいしくない」と言われたら、
私は意地になってその料理ばかりつくりそうですが‥。
いちいちそんな反応をしていては、
専業主婦は続かないのでしょうか。
味玉のように、父が知らないうちに
食卓から姿を消してしまった料理はたくさんあるそうです。
そういえば、わが家では「シチュー」といったら
ビーフシチューが出てきます。
祖父も父も、
クリームシチューが好きではなかったからです。
白いシチューは憧れでした。
(続きます)