もくじ
第1回一本の電話から。 2017-05-16-Tue
第2回神社ってなんですか、先生? 2017-05-16-Tue
第3回持って生まれたフィーリング 2017-05-16-Tue
第4回秘めている感情 2017-05-16-Tue
第5回言葉にするって。 2017-05-16-Tue

ここ3年ほど、毎日飽きずにバタートーストに魅了されています。日本に住んで3年、どうやらそのことに関係があるらしい。ロサンゼルスから来ました。よろしくお願いします。

言葉にできるまで。

言葉にできるまで。

担当・ユウキ

第5回 言葉にするって。

由理子先生のコンプレックスとは?
あのね、自分がやらないからコンプレックスになるの。
気がついた、今。
ユウキちゃんと話していて(笑)。
私はね、英語。
 
人を動かす人たちというのは、
頭の中で「やりたいねー、やりたいねー」じゃなくて、
本当にやってるんだよね。
すごく努力して必死になって。
それだけの思いが結局ないねと言われたら
「そうだね」と言うしかない(笑)。
でもどうして私の中に先生が
こんなに残っているのですかね。
ありがとうね〜、ユウキちゃん!
本当です。
でもやっぱり、
ユウキちゃんのお母さんの心構えは違ったよ。
一生懸命日本語を身につけさせようというのは伝わった。
そうなんですか?
うん。
すごく伝わってきた。
当時、ある程度日本語ができたらいいんです、
というお母様もいらっしゃったし、
日本に帰るから「お願いします!
すぐに日本の学校に入れるようにしてください」
という方もいた。
 
でもユウキちゃんのお母さんは、
日本に帰るとか帰らないとかじゃなくて、
やっぱりユウキちゃんの人生において
日本語が必要だと思われてるんだな、
という感じがした。
ふううん。
繋げたいと。
日本語で。
そうですね…。

だから、外そうね。
そのコンプレックス(笑)。
なーーんにもコンプレックスに思うことないのにっ!
はい…
ああ、面白いね〜。(キャハハハッと笑う)
先生、 ありがとうございます。
努力。
自分の努力だよ。
褒めてあげなさい、自分を。
う、うん。
でも日本人でよかったでしょ?
はい、よかったと思っています。
日本に住んで、この国の深さを知れば知るほど…
やっぱり、二つの国に行ってしまったわけじゃない?
マイナスに考えれば、
いつも心が落ち着かないと思うんだけども、
なんでもマイナスとプラスの考え方があると思うの。
「あぁ、幸せだなぁ、
いろいろなところを見せてもらって」という…。
そうですね。
いろいろあったから今のユウキちゃんがいるのよね。
はい。
親にもたくさん苦労をかけました。
親はそれで成長するんだよ。
私も息子に感謝している。
暴れてくれて(笑)。
その時は「なにー!」って思うよ、本当にね。
でも今は、あぁ、感謝だなって。
今日、私の中で何かが大きく動いた気がします。
ありがとうね、ユウキちゃん。
すごく嬉しいよ。
先生。
本当に、本当にありがとうございました。

***

由理子先生と会う前、
私はどのような展開が待つかわからなくて
ドキドキしていました。

32年の月日は、シャイな小学生とその先生を
どのように変えているのだろうか、と。

「ハチ公前で会おうね」と言ってくれた先生は、
埼玉から電車に揺られてきてくださいました。
気が利かなくてごめんなさい、先生。

今は旦那さまとのゆったりとした時間の中で、
初めてのパリ旅行にワクワクしたり、
おふたりで全米を車で横断して(!)
お子様に会いに行ったり、
美味しい珈琲と共に70代を満喫されていると
話してくださいました。

「いろいろあったな〜」と笑う先生の姿に、
想像もできないドラマを感じました。

たまたまロスアンゼルスという街に
1981年に降り立った由理子先生、そして私の家族。
あの丘の上の、小さな日本語学校のおかげで、
こうして言葉に苦労することがなく、
東京で暮らすことができています。

そして「日本語」以上のものを学んでいたことにも、
ようやく気づきました。
32年かかったけれど。

言葉にするって。
表現するって。
大事なことなんですね。

由理子先生、本当にありがとうございました。

そして、最後まで読んでくださったみなさん。
ありがとうございました。

(おわります)